シャープ「企業敗戦」の深層

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  • イースト・プレス
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781614144

感想・レビュー・書評

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  • 【集中と選択】との時流に潰されたような印象を受けた。今思えば、シャープはブランドも弱かったし、所詮部品屋さんだったのかも。

  • 今後どうなるか

  •  シャープで液晶事業本部技師長をつとめられ,立命館アジア太平洋大学の教授として御活躍の中田先生のシャープの苦境に関する著作の二作目です。今回はシャープがホンハイに買収されるに到った経緯と,なぜそこまでシャープが苦境になったのかという中田先生の分析が述べられています。
     とくに私が興味を持ったのは,シャープがホンハイに買収されるまでの経緯が述べられた前半の話です。新聞や雑誌などでは,断片的な情報になりがちなのですが,一連のまとまった経緯とした叙述を読むことで,流れとして経緯を把握できたと思っています。
     また,シャープが敗戦を喫した経緯とその理由の分析も興味深く読みました。前作と同様に,外的な環境の「変化に適応できなければ淘汰される」ということがシャープに当てはまってしまったわけですが,これを他山の石として捉えるのか,その対策をどうしていくのか考えることはとても大切だと思います。
     ホンハイに買収された後のシャープやその他のメーカがこれからどういうことになっていくのか,未来に起こる出来事をどのような文脈で捉えていくかという観点からも,いくつものことを示唆している著作だと思います。

  • 2016年6月19日読了『シャープ 企業敗戦の深層 大転換する日本のものづくり』中田行彦著 評価A

    シャープの液晶研究所の技師長まで務めた中田氏が、シャープなぜ失敗したかの冷静な分析を1冊の本にしている。シャープのみならず、日本の製造業についても述べている点で参考になる視点が多い。

    ホンハイと産業革新機構の買収合戦のポイントは、みずほ銀行、三菱UFJ銀行の債権放棄と同義のDES(債権の資本振替)実行による株主集団訴訟リスクと官僚主導による再建が成り立つのかという点であったという指摘は正しいと思う。結果、民間に委ねる判断がされたのは、非常に筋の通ったグローバルな結論であったし、各国の批判を避ける意味でも正しかったという中田氏の分析は納得できる。

    また、社内では、執行役員制度、社外監査役制度、社外取締役などを2008年から2009年にかけて採用導入していたが、東芝と同様に魂が入らない形だけのものであり、企業統治システムが機能不全であったことは明らかである。また、加えて歴代社長の経営陣への介入や事業部間の抗争も激しかったことが語られる。

    日本の電機メーカーでは、創業家の『家族経営』と役員の『仲良し経営』が、戦前から戦後にかけての苦難の時代、高度成長時代には一般的であったため、一気に経営がグローバル化するには困難が伴ったことが記される。確かに、松下、三洋、シャープ、ソニー、キヤノンも創業家が一定の力を持って経営に関与してきたことも事実。

    創業者の早川氏は、他社が真似をしてくれる商品を作れ!と言っていたという。

    経営信条は、誠意と創意。また、いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって広く世界の文化と福祉の向上に貢献する。

    しかし、結局、液晶の大成功に酔った経営陣は、2つの亀山工場。そして、ダメ押しの堺工場を作り、9450億円という身の丈に合わない投資が裏目に出る。

    実は、液晶、半導体の投資の失敗は、シャープだけではない。
    DRAMでは、70-80年代は、米国、80年代半ばでは日本、90年代は韓国とその時代の生産を支配する国が次々と変わっていった。

    日本の失敗の原因は、
    1.経営判断の誤り 
    2.産業構造の変化 大型メインフレームからPCへの変化
    3. 日米半導体協定による制約
    4.円高による価格競争力の低下
    が挙げられる。

    そしてさらに、いいものを作れば売れるという技術信仰の罠とメインフレームからPCへ大転換するイノベーションのジレンマにはまり、高級で壊れない高いDRAMから安くて大量に作るDRAMへの生産変化に対応出来なかったことが衰退を招いた。

    また、液晶でも、2-3年に一世代進む、技術革新に、日本の電機メーカーは第5世代までは追従できた。しかし、第6世代以降は、景気の低迷もあり、ビジョンなきサラリーマン的判断で大規模投資を見送った。このため、韓国、台湾のファーストムーバー(先行者)投資とファーストフォロアー(速い追従者)投資についていけず、一気に生産力、技術力を落としてしまった。

    また、日本が得意だった装置メーカーと組み立てメーカーのすり合わせプロセスも、亀山工場までは機能したものの、シャープでは多額の投資が仇となった。唯一とも言える果敢な投資を実行した日本メーカーは、負けたということ。

    それは、サムソンが仕掛けた23インチ液晶=5万円という2009年2月のイオンでの売り出しTVから負け戦は始まった。その後、サムソンはスマホの利益を元手に液晶の赤字を埋めて、2010年には世界一だった液晶生産台数の地位を盤石のものとした。そのために、日本の電機メーカーの液晶TVを追い落とす作戦を実行。それには為替のウオン安も効果的だった。結果的にサムソンは、残存者利益を得た形とはなった。

    サムソンだけがシャープ投資失敗の原因ではもちろんない。
    3原色に黄色を加えた4原色のAQUOSクアトロンの失敗。さらに、巨大な堺工場の生産力をてこにSONYと提携したものの、自社製品を優先したため、結局、SONYの信用を失い、巨大工場を自社販売力で稼働させなければならなくなった経営、運営の大きな失敗もあった。

    現在の製造業のパラダイムは以下の3点で捉えられる。
    ローカルなすり合わせ ⇔ モジュール化・リファレンス型
    垂直統合 ⇔ 国際水平分業 ファブレスEMS
    ガラパゴス化の国内市場 ⇔ グローバル市場

    イノベーションジレンマの3パターン
    1. 持続的技術 VS 破壊的技術
    2. 技術革新ペースが市場の需要ペースを上回ってしまう。(EX. 4K、8Kテレビ)
    3. 成功している企業の顧客・財務構造が、投資に重要な影響を及ぼす。(韓国サムソン・中国BOE京東方科技集団など)

    今後、中国電機メーカーは2018年目指して爆投資を行っているため、再び構造が大きく変化する可能性が高い。また、韓国メーカーは有機ELへ投資を注力している。再び、周回遅れの日本電機メーカーは苦戦を強いられる。

    今後、インターネットを通じたグローバル化(インダストリー4.0、IOT、サイバーフィジカルシステム等)が製造業で進み、工業のデジタル化は製造コスト削減に繋がる。さらに、SNSを通じて資金、人材、情報、知識のすり合わせは容易となり、クラウドファンディングやクラウドソーシングが一層進む。

    結局、生き残れるのは、変化に対応できたものだけなのだ!!

  • ■書名

    書名:シャープ「企業敗戦」の深層
    著者:中田行彦

    ■概要

    シャープ在籍33年の著者が明かす、巨艦シャープ落日の実相。
    (amazon.co.jpより引用)

    ■気になった点

    なし

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