この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。

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  • イースト・プレス
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781616087

作品紹介・あらすじ

普通に働いて、普通に生きたかった。その「普通」が、いかに手に入れるのが困難なものかを知った。ブラック企業で働き、心を病んで自殺未遂。失職、精神障害、親との軋轢、貧困、希死念慮。女一人、絶望と希望の記録。

感想・レビュー・書評

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  •  ご自身の体験記で貧困や精神障害が、血で書かれたようなすごい迫力で圧倒される。生活保護を受けていても気高さを失わないところが素晴らしかった。この本と、スピリッツで読んでいる柏木ハルコさんの『健康で文化的な最低限度の生活』と今読んでる途中の鶴見済さんの『0円で生きる: 小さくても豊かな経済の作り方』を合わせて読むと、全部うまく回りそうだ。

     特に精神病のクリニックで、薬の業者が来た途端診断がうつ病から統合失調症にされてしまうのがひどかった。経済に食い物にされてしまう恐ろしさがあった。

  • 主人公は、うつ病から、精神障碍者として認定を受け、生活保護へ。

    当事者にならないとわからない、マイノリティーとしての心境が、ヒリヒリしながら、同時に淡々とつづられている。
    読んでいる側はぐいぐい惹きこまれる。

    また、精神障害のケア団体の拝金主義的な活動や、生活保護への暴力的なネットでの中傷など。
    弱者へ対する攻撃的な世間への恐ろしさが感じられた。

    仕事をするとは、社会と関係を持つこと。
    関係をもてなくなり、どんどん社会から離れていく。
    認めてもらうために歪な状況に迷い込んでいく筆者。
    最終的な自殺未遂の数々。

    途中ではたと、筆者自身で気づく。
    自殺未遂をしていたのは、誰かにかまってもらいたかったから。
    ではないか。

    自分を客観的に見れることができたことが、筆者の人生に対してとても重要な効果を及ぼしていると思う。
    この本の記載も一人称、自分目線で書いていながら、どこか自分自身を客観的にみれているような俯瞰の視点を感じられた。

    人間は一人では生きていけない、誰かに認めてもらい生きていける。本当の孤独の中、人は生きる意味を見失うのだと感じた。

    筆者が言っているように生活保護は重要な制度だが、運用がもっと良くできる余地があるんだろうなと思う。

    福祉、介護関係には膨大な時間がかかりコストパフォーマンスのモノサシで測ってしまうと、本当の価値が測れない面が多々ある。その中で資本主義社会でどのように成り立たせていくのか、今後の課題だ。

  • 2年前に出た本だが、Kindleで無料で読める著者の自伝マンガ(本書にも収録)「女編集者残酷物語」を読んだら面白かった(※)ので、手を伸ばしてみた。

    ※私は著者同様、月給12万の編プロで働いていたことがあるので、大いに身につまされた。

    マンガになっているのは「女編集者残酷物語」のみ。あとはすべて文章である。

    自殺未遂をして編集者を辞め、精神科に通いながら生活保護を受けることになった著者が、やがて働き始めて生保から抜け出すまでが綴られている。

    「貧困女子もの」「メンヘラもの」は、いまやルポやコミックエッセイの分野で1ジャンルにまでなっている。
    本書もその一つであるわけだが、類書がこれでもかとばかりにドギツイ話を満載しているのに比べ、あまりドギツさがない。いわば、「等身大の貧困・メンヘラ」という趣。

    それでいて、描写力・観察力に非凡なものがあり、読ませる。
    とくに、生活保護を受給してからの心の揺れについての、冷静かつ繊細な自己分析が素晴らしい。生保受給者の心理を当事者がここまで活写した本は、ほかにあまりないのでは?

    また、ケースワーカーの対応の劣悪さや、著者がデイケアに通っていたクリニックの「闇」(どんな闇かは読んでのお楽しみ)の描写も面白い。
    いや、ほんとうは「面白い」などと言っては不謹慎な深刻な話なのだ。が、著者が声高な告発調ではなく軽妙なユーモアをまぶして綴っているため、随所で笑ってしまう。

    つい最近出た著者の新著『わたしはなにも悪くない』(本書の続編的な内容なのかな?)も読むことにする。

  • 読んでてドンヨリするけど、この人はとりあえず今はなんとかなってよかった。なんとかなったから語るに足る人生の物語として本にもなった。しかし、なんとかならなかった、語るに足らない人生の物語が語られることはあまりない。本にもならない。奇跡が起きないまま終わった、終わりつつある人生の物語が奇跡の後ろに死屍累々と横たわっているのに。その証拠に日本の自殺者は毎年2万人を超えている。そんな人達の人生は語るに足る価値がないのだろうか。

    語られる人生の物語には、多くの人が価値を認める。でも語られない物語を目にすることは難しい。可視化されない。認めることができない。だから、その物語の価値は自分で認めるしかない。しかし果たして、苦境の真っただ中にいる人はその価値を自分で認めることができるだろうか。孤立した中で卑屈にもならず、生きる希望を持てるだろうか。

    開き直れたらいいのか?というと生活保護バッシングを見ればそれが難しいことは明らかだ。生活保護を受けると生きる負い目、罪悪感を背負ってしまう。その負い目の発生源は自分の中にも外にもある。卑屈になったり罪悪感を背負ってしまうのを本人だけの問題にしていいのか?少なくとも半分は社会の側のまなざしの問題じゃないのか?内面の問題で言うと、マジメさが足かせになる部分は大きい。著者は万引きの罪を告白し、何年も経ってその罪を償おうとしている。テキトウな人だったらしないことだろう。

    貧困はお金を払った対価が得られないだけじゃない。お金を払うことによって他人から大切にされるという経験を得ることが難しくなる。床屋や美容院、接骨院やマッサージ、病院。これらのサービスは単に髪を切ってもらうとか病気を治してもらうだけではない。お金を払うことによって、他人から大切にしてもらう、心配してもらうというサービスを含んでいる。自尊心や自己肯定感に関わってくる問題だと思う。

    貧困は人間関係の貧困であることもよくわかる。お金がないと誰かと何処かへ行って遊んだり食事することができない。服や化粧品が買えないと小奇麗にすることもできない。床屋や美容院に行くことができない。そして人と会うのがおっくうになり、人と関わることで元気を出すことができなくなる。人と会わなくなると身なりに気を使わなくなる。更に人と会うのがおっくうになる。。。そうした悪循環の中で社会的に孤立してしまう。抜け出せなくなる。うつ病のように精神的に弱っている状態なら尚更だ。そんな感じのことを湯浅誠さんが言っていたのを思い出した。

    役所や病院、福祉施設が当事者を精神的に支えることは難しい。事務的な対応に終始したり、あるいは教育的、指導的な上から下に向かう力が働いてしまう。そんな人間関係の中からは、希望を持って生きる力は沸いてこない。だからこそ、当事者同士が精神的に支え合う自助グループのような共同体が必要なのだと思う。なのに、自助グループで嫌な思いをしたことが書かれていて、著者の責任は全くないけど残念に思った。

  • 久しぶりに、夢中になって一気に読んでしまった。著者でもあり、主人公でもある小林エリコさんの、生きてきたありのままが書かれている。本音で書かれた内容だから、ぐいぐい引き込まれる。そして、応援して読んでいた。もし、自分が同じ立場ならどうしていたどろうと考えた。自分の娘との関係も照らし合わせたりもした。人は素晴らしいなぁと感動もした。

  • この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。小林エリコ先生の著書。精神障害や貧困に苦しむ人、家族や周囲に精神障害や貧困に苦しむ人を持つ人にとっては元気がもらえる一冊のはずです。何気ない日常生活を平穏に過ごせることは何よりも幸せなことなのかもしれません。

  • 終始、語感が強い。というかセンセーショナルに文章を書く方なんだなと感じました。独白のように書かれているので、ずっと愚痴を聞いている気がします。
    読み終わって個人的に思ったのが、この方自身がその場の流れに身を任せるところがあるんじゃないかと。「だからダメなんだよ」とまでは言いませんが、この先もちょっと心配です。
    まぁ、なんだかんだ言っても「いろいろあったけど、よかったね」という感じの読後感でした。

  • 「死にたくなった」人の特効薬になる本を探して購入。

    ワーキングプアから、精神疾患をきたし、生活保護になる至った作者の体験がつづられている。

    私は、本書を「死にたい」気持ちを解決するためではなく、「死にたくなった」人の気持ちを知るために購入したのだったが、メンタル系の書籍の中で最も心に響いたのは本書である。

    そもそも、本を書く人なんて優秀ではないか。「死にたい」を理性と賢明さで克服した人間からのアドバイス。有能であるが故に心に変調をきたし、結果として有能な活動を行っている人間。ルサンチマンと呼んでもらって構わないけれど、どうしても自分や大多数の人に比べて境遇に隔たりを感じてしまう。

    対して、著者は確かに本を書いているが、経緯は親近感を感じる。短大を出て就職した先が、ブラック企業だったのだ。そして、生活保護というセーフティネットに引っかかるところまでなるべくして落ち込んでしまった不条理とも言える境遇である。

    しかし、先に賢人たちを強者だと罵ったあとに、著者の弱者としての立場に哀れみを感じて、それがまた、自分に快楽として作用しかかるのを感じた。著者は私よりも、ずっと強く、ずっと立派な人間である。この立場の境目は動的で連続的であることを忘れてはならないと肝に銘じた。

    本書で気づかされたこと、
    私たちは、仕事をしたくない、したくないと日々口にするが、仕事をすること、つまり社会を回している感覚というのは自分の存在意義に直結する。そして、そうできない、やむにやまれぬ理由で普通でいられず苦しんでいる人が、多くいるということを認識しなければならない。

    また、私は、生活保護を受ける人達を恥ずかしいと思ってきた。しかし、本書で追い込まれた人達の立場を知り、責めるべき理由なんてないことが分かった。生活保護は不運な人を救う日本人の良心ではないだろうか。

    最後に、これこそが「死にたくなった」人に必要な考え方ではないかと感じた著者の言葉を引用したい。
    “だけどまだ、人生の途中だ。これから先も失敗したり、絶望したりするかもしれない。けれど、それはすべて必要なことなのだ。私はこのままでいいのだと思った。”

    過去と未来の悲しみと苦しみをひっくるめて人生を全肯定すること。これが、「諦める」でもなく、「前を向かせる」でもない、過酷な境遇から復活を果たした著者が語る至言である。

  • 僕は精神病に興味がありますし、貧困にも興味がありますが、この著書はビジネス系のウェブサイトに寄稿していた著者小林エリコさんの記事を読んで知りました。

    序盤読み進めることが辛くなってしまい途中で辞めようとも思いましたが、最終的になんとか読み切れました。とてもいい本でした。

    著者自身のこれまでのことを書いている内容です。

    就職の失敗、自殺未遂、生活保護、貧困ビジネス、再就職の過程です。

    人間誰しも負のスパイラルに巻き込まれるとなかなか抜け出すことが大変ですが、著者はなんとか踏ん張ったわけですね。
    本当によかったね。と言ってあげたいです。

    貧困には経済的な意味合いがまずありますが、それだけでなく、健康の貧困、そして、関係性の貧困があります。

    経済、関係、健康いずれもとても重要なもので、それらの一つでも失うことで貧困へと至り易くなってしまうのです。

    どれを失っても辛いものですが、逆に言えば、それらのうちどこかに手厚いサポートが加われば貧困から脱却できるチャンスも高まります。

    関係性の貧困が解決すれば、社会制度の活用や就職のチャンスも高まるでしょうし、必要な医療制度に接続することもできるでしょう。

    また、人はどこかに所属しているという感覚がとても重要です。自分がどこかに所属している。他者から必要とされている。他者や社会に貢献出来ている。そう感じられて人は自信を持つことができ、そして、生きていくエネルギーが生まれます。

    自分の居場所があることはとても重要です。

    小林さんはいずれも失ってしまうのですが、そんな状態からよくぞ立ち直りました。

    しかし、世の中には上記の3要素を失って苦しんでいる弱者がたくさんいることでしょう。彼ら彼女たちのその状況を理解し、手を差し伸べる姿勢を持つ人、彼らの苦しみに耳を傾ける人が増えれば増えるほど、良い世の中になっていきます。

    それは、小林さんの意見ですが、僕も全く同じ意見です。

    残念ながら現代社会は弱い立場の人の気持ちを考えない人が多すぎるように思えます。そんなことでは結局自分自身の首を締めることなりますし、また、いつでも自分が弱い立場になり得るのです。

    この著書がどれだけの人に読まれているかは僕にはわかりませんが、多くの人に読んでもらって社会についてもっと考えて欲しいと思います。

  • ついふらっと自殺しようとしてしまったけれど、本当はまじめできちんと生きようとしている人だということが良くわかる。生活保護のこともざっくりと分かって、生活保護から抜けようとしている人への心無い対応している職員の人に腹が立ちました。ただ、生活保護を満喫している人たちもたくさんいるわけで、その人たちにすれば小林さんの心理はもちろんのことそれが税金であるということも理解できなかったのでしょう。

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著者プロフィール

1977年生まれ。短大卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺を図り退職、のちに精神障害者手帳を取得。
現在は通院を続けながら、NPO法人で事務員として働く。
ミニコミ「精神病新聞」を発行するほか、漫画家としても活動。
著書に『この地獄を生きるのだ』(イースト・プレス)、『わたしはなにも悪くない』(晶文社)がある。

「2019年 『生きながら十代に葬られ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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