報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781616100

作品紹介・あらすじ

北朝鮮は「Jアラート」発令前に発射を予告していた、都議会議長は小池百合子氏との握手を拒否していなかった、開校反対派のキャンペーンが森友学園問題の発端だった、加計学園の認可は「ゆがめられた行政」を正すものだった、…など、国民はフェイク・ニュースには目が行きがちだが、「都合の悪い事実」の「カット」には目が行かない。カットされた部分に潜むニュースの真相を、実例を挙げて検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀のフランス人によって、民主主義についての面白い定義がなされています。
    「民主主義とは、多数派(の世論)による専制政治である」
    さらに彼は、情報化社会の問題についても言及しています。
    「情報の過剰から生まれる無知というものがある。専制国家では、誰も何も言わないので人は行動のすべを知らない。民主国では、ありとあらゆることを言われるので、人は出鱈目に行動する。前者は何も知らず、後者は言われたことを忘れる。1つ1つの絵の輪郭が無数の細部の中に埋もれて見えないのである」
    どちらも、本書の前書きにでてくる引用ですが、好調な出だしです。

    誰もが知っている5W1Hは、「ジャングルブック」の著者キップリングが有名にしたことを初めて知りました。(P22)
    2010年の調査では、各国のテレビ、新聞や雑誌への信頼度は、日本人が60%(テレビ)~70%以上(新聞、雑誌)だったのに対し、米国は20%台、ドイツは40%台、フランスは30%台、英国では10%(新聞、雑誌)~30%台(テレビ)という結果でしたが、日本人の情報の取得は新聞の宅配制度やテレビの100%普及という特別なお国事情も影響していると思われます。

    世論は「朝ドラ」と「ワイドショー」で作られる(P69)も慧眼です。

    また、日本ではクロスオーナーシップと呼ばれる新聞社やテレビ局の系列化が普通ですが、米国では言論の自由や多様性を阻害するということから規制がかけられています。(P97)

    また、なぜかテレビ報道されない「電波オークション」の実態ですが、ドコモなどの通信会社は毎年130億円~200億円を電波利用料金として納めていますが、民放のテレビ局は約5億円しか支払っていません。(P102)
    新聞社の消費税転嫁と同様、テレビ局の「電波オークション」は話題にされたくないトピックスの筆頭なのでしょうが、だからと言って国民の知る権利を蔑ろにする自由はありません。
    電波オークションが嫌なら、せめて100億くらいは自主的に払いなさい!(ちなみにNHKは20億円払っていますが、携帯各社と比較しても一桁違います)

    ところでNHKは、島倉千代子の「東京だよおっかさん」を紅白歌合戦で歌わせないことを初めて知りました。(P129)
    それは、2番の歌詞に靖国神社のある九段に行くというフレーズがあるからというのは呆れます

    2016年の英国議会で新ミサイルシステム導入のための予算計上審議の以下のやり取りは、日本のマスコミだと大騒ぎになります。
    野党議員「あなたは罪のない男女や子供たち数十万人を殺す用意がありますか?」
    メイ首相「イエス。ここにいる紳士の方々はお分かりかと思いますが、我々がそのような覚悟をもつことが、敵の攻撃を躊躇させる抑止力になるのです」
    日本のマスコミの空想平和主義者たちが、日本の国会でもしこれを聞いたら「非人道的だ、相手の命を犠牲にして自分たちだけが助かろうというのか」などと訳のわからないユートピア論を展開するのでしょうが、一国の宰相は自国民の命を守る責任があります。
    そんな国が嫌なら、つべこべ言わず即刻海外移住してください、ですよね。

    また格安航空会社のバニラエアでは、車いすの障害者が自力でタラップを上がらなければならないことに怒って「人権無視の会社」というレッテル貼りを行う。(P186)
    安い料金にはそれなりの理由があり、嫌なら他の選択肢もあるし、そして当の本人は明らかに「プロ障害者」なのに、マイノリティの人権にはからきし弱い歪な姿が浮き上がります。

    そういえば、野党議員も(共産党や民進党が多い)、国会で支援者からの声という形で手紙や直訴状のようなものを披露し、「総理はこんなにも苦しんでいる人の気持ちを無視するのですか?」というような質問をしているが、手法はまったく同じです。

    本書でもこのように書かれています。
    「弱者をモチーフとすれば、フェイクメディアはフェイクニュースを量産することができる。それを利用したい勢力は、いかようにでもフェイクメディアを利用できる状況が生まれる。ポリティカルコレクトネスはフェイクメディアをテロリズムメディア化させる可能性がある」(P190)

    先の選挙中に書かれた本書は、こんな点も指摘しています。(P222)
    都議会選挙の応援に駆け付けた安倍総理は選挙妨害する反日左翼陣営の人に向けて、「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」と発言したことが、「安倍総理が国民にキレた」とわざと間違えて報道したり、小池都知事が質問記者の言葉をそのまま使って「排除」といった瞬間に、「差別だ、選民思想だ」などと訳が分からぬ報道があふれて希望の党の潮目が変わりましたが、そもそも政党が政策で立候補者を選ぶという当たり前のことが、どうして問題なのか本質的な議論から意図的にすり替えています。

    こうしたガラクタ情報から身を守るためには、現状では残念ながらマスコミ報道をまず疑うことから始めなくてはいけないようです。

    面白いので是非読んでください。

  • 政治的ニュースについて日本のテレビや新聞が捏造報道を繰り返す、或いは日本国民に必要な情報を意図的に流さない、その理由について。

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著者プロフィール

西村幸祐(にしむら・こうゆう)
批評家、関東学院大学講師。昭和27年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科在学中より「三田文学」編集担当。音楽ディレクター、コピーライター等を経て1980年代後半からF1やサッカーを取材、執筆活動を開始。2002年日韓共催W杯を契機に歴史認識や拉致問題、安全保障やメディア論を展開。「表現者」編集委員を務め「撃論ムック」「ジャパニズム」を創刊し編集長を歴任。(一社)アジア自由民主連帯協議会副会長。著書は『ホンダ・イン・ザ・レース』(講談社)、『「反日」の構造』(文芸社文庫)、『幻の黄金時代』(祥伝社)、『21世紀の「脱亜論」』(祥伝社新書)、『韓国のトリセツ』『報道しない自由』(ワニブックス【PLUS】新書)、『朝日新聞への論理的弔辞』(ワニ・プラス)など多数。

「2022年 『九条という病 - 憲法改正のみが日本を救う -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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