- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781616612
作品紹介・あらすじ
加熱するシャンシャン・フィーバー、空前のイヌネコ・ブーム。フクロウ・カフェができたかと思えば、今度はカワウソが熱い! 現代社会でこのうえなく愛される動物がいる一方で、嫌われる動物もいる。 ヘビ、カエル、ネズミ、……。一部の好事家を除けば、一般に忌避される存在だ。 こうした個々の「動物」に対する扱いの差は、どこから生まれたのか?偏見とも思えるような「ステレオタイプ」なイメージは、本当に正しいのか? 動物の生態を守るために調査研究を続ける生物学者が解き明かす、人による「動物へのイメージ」の由来と変遷。 都市生活のなかで失われた「人と動物のあるべき関係」を探る。 本書が取り扱う主な動物 (ペット)イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネズミ (家畜)ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ (野生動物)サル、タヌキ、キツネ、クマ、オオカミ、ヘビ (利用動物)シカ、イルカ、クジラ、アライグマ、トナカイ
感想・レビュー・書評
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表紙の可愛らしいイラストにつられた。確かにパンダは熊だ。
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案外、評価の低いレビューが多かったですが、私自身は楽しんで読むことができました。
かつて日本では人々の生活環境と自然の距離が近く、手が届く/目に触れるところに野生動物(タヌキヤキツネなど)がいました。
農耕・畜産などの性産業も身近で、「食べる」という行為は食糧を確保する=採集/収穫するか、獲物を狩猟する→調理する→食べる→片づける、という一連の行動すべてを指していました。
現代では都市化が進み、身近な動物は「ペット」か「動物園のアイドル化された動物」か「TVで見る自然番組」となり、動物に対して抱くイメージも、その実態とはかけ離れたものになっています。
たとえば、「可愛いアイドル」として絶大な人気を誇るパンは熊に近い野生動物ですし、「卑怯者」「悪者」というイメージのあるオオカミはかつては「大神」として敬われる存在でした。「狡猾でずるい」と思われているキツネも、やはり神(=稲荷)だったのです。
これら、今の私たちが動物に対して抱く「誤った(動物生態学的な視点からみると間違いの)イメージ」がどこから来たのか、ということや、人と動物/人と自然の関係がどのように変化してきたのか、という点が丁寧に説明されています。
また、これらの考察を行うにあたって、人が飼育するかどうか/品種改良がなされたかどうかという点から、
・品種改良がされて飼育されるペット(イヌなど)
・品種改良がされて飼育される生産動物(ウシなどの家畜)
・野生動物のまま飼育されるペット(アライグマなど)
・野生動物のまま飼育される生産動物(鹿など)
・飼育されない野生動物で人に利用されるもの(兎など狩猟の対象となるもの等)
・そのほかの野生動物(人が利用しないもの)
の6つのカテゴリに分けるという視点は新鮮でしたし、理論的だったと思います。
人間と動物との関わり方に正解はありませんし、そのことについて筆者は「問題に対する処方箋は書けない」と正直に打ち明けつつも「ささやかな提案はできそうな気がする」と述べています。それは、子どもたちを中心に自然を体験させること。かつて(少なくとも高度成長時代以前には)あった、自然を身近に感じられるような生活を送って動物のありのままの姿を知り、「誤った」イメージを修正すること。
本書の最後の一文、「知りたいものがあれば、勉強は楽しい」は至言です。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50106214 -
身近な動物について知らないことがたくさんあったので面白かった
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パンダはたれ目メイクだからモテる…
た、確かに… -
読み進めにくかった。
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教科書を読んでるみたいな感じでした。そんなにかたっ苦しい難しい文章でもないのに、なかなか読み進まず…。都市化が進んだ現代社会と、昔とで日本の生き物とのあり方、考え方が変化してる事はよく分かるが、だからどうしたらいいのかがハッキリされてはなくなんかダラダラとした印象でした。動物のイメージについては、しっかり文章で書かれてるので、へ〜。となります。
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ヒトが独擅場と自負する知能は狩猟する獣に共通する。遊牧は文明の原点で、定住化=農業開始は能力退化。人類は“自己家畜化”することで“繁栄”してきたが、ハンターではなくドンキーになることでもあった。農業はリスク低減に見えたが気候条件などで大きく成果に上下がでるし、水路確保などで広域代表権力の誕生も促した。採集捕食者とのバトル開始でもあった/著者の専門はシカ。遺体の腐敗はヒトに共通する、鎌倉、~桃山時代、江戸時代初期までよほどの貴人でなければ葬儀はせず“河原に置き捨て”だったらしい。葬儀と埋葬をするのはヒトだけ
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【感想】
・文化面の記述に目を瞑れば楽しい本。全体的に「農業化で人類の○○が変わった」「都市化で……」という観点から説明している。このおかげで成功しているとも言えるし、このせいで細部に粗が目立つことになったともいえる。
・参考文献は巻末にある。
しかし、(1)「各文献のどの記述を使ったのか」を書いていない。(2)「この本のどの記述が文献に基づいているのか」(そして、この本のどの記述が著者独自の意見なのか)が、読者には分からない。
・専門外の怪しい記述:
「捕鯨とイルカショー」(pp.194-199)の持論は、気持ちばかり先走っていて、サブタイトルにある「科学」っぽさに欠けている。
「住(とくに排泄・トイレ)」(p.211)について1段落割いているが、歴史の概観としては微妙で、要約だとしてもムズムズする。
なお、都市と動物観について「まとめ」にあたる記述が、本書の最後尾にある(pp.252-254)。
【書誌情報】
『人間の偏見 動物の言い分――動物の「イメージ」を科学する』
著者:高槻成紀[たかつき・せいき]
イラスト:chizuru
デザイン:albireo
定価:1,870円(本体1,700円+税10%)
ISBN:9784781616612
NDC分類:481
発売日:2018年5月15日
製本:並
ページ数:272
カテゴリー:サイエンス
加熱するシャンシャン・フィーバー、空前のイヌネコ・ブーム。フクロウ・カフェができたかと思えば、今度はカワウソが熱い!
現代社会でこのうえなく愛される動物がいる一方で、嫌われる動物もいる。ヘビ、カエル、ネズミ、……。一部の好事家を除けば、一般に忌避される存在だ。
こうした個々の「動物」に対する扱いの差は、どこから生まれたのか? 偏見とも思えるような「ステレオタイプ」なイメージは、本当に正しいのか?
動物の生態を守るために調査研究を続ける生物学者が解き明かす、人による「動物へのイメージ」の由来と変遷。都市生活のなかで失われた「人と動物のあるべき関係」を探る。
本書が取り扱う主な動物
(ペット)イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネズミ
(家畜)ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ
(野生動物)サル、タヌキ、キツネ、クマ、オオカミ、ヘビ
(利用動物)シカ、イルカ、クジラ、アライグマ、トナカイ
〈https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781616612〉
【簡易目次】
まえがき [003-010]
もくじ [011-016]
第1章 たくさんある動物にまつわる言葉
会話に動物が出てくる
特徴をうまくとらえた言葉
想像上の動物に対しての言葉
現状ではピンとこなくなった言葉
第2章 動物のイメージはどこからきたのか?
進化生物学的に見た好まれる動物の条件 042
パンダはどうして人気者なのか? 046
恐怖心や不快感が嫌われる動物を生む 049
ヘビはなぜ気味が悪いのか? 051
質感も好悪を左右する 056
文化によって違う扱い!? 058
想像上の動物はなぜ生まれたのか? 061
第3章 ペットとしての動物
人と動物の関係による類型 066
身近な存在であるペット 070
忠実で人なつっこいイヌ 073
気まぐれで孤独なネコ 076
ペットの品種と処理 079
可愛さを絵に描いたようなウサギ 082
ネズミなのに愛されるモルモット・ハムスター 086
なぜネズミは嫌われてしまうのか? 088
ペットとして飼われる鳥と魚 094
コラム*「南極物語」は美談か? 096
第4章 家畜としての動物
家畜はどのようにして生まれたのか? 102
のんびりと牧歌的なウシ 106
颯爽と駆けるウマ 111
鼻が印象的なブタ 114
モコモコの毛でおおわれたヒツジ 119
ヒツジとは似て非なるヤギ 125
家禽と養殖・養蚕・養蜂 130
コラム*反芻獣の進化の秘密 137
第5章 代表的な野生動物
人によく似たサル 144
間抜けでずんぐりしたタヌキ 154
狡猾であやしいキツネ 158
タヌキやキツネが「化かす」のはなぜか? 161
巨大だけどお人好しなクマ 164
身近な野鳥、不思議な野鳥 169
第6章 利用される「野生」動物
本当は飼育が難しいアライグマ 180
野鳥・魚・昆虫の飼育 183
家畜化・養殖の試み 185
観光客を呼ぶ奈良のシカ 187
枝角が特徴的なシカ 191
捕鯨とイルカショー 194
狩猟される鳥・漁獲される魚 198
コラム*薬用と毛皮という利用法 200
第7章 動物観の変遷
急激な人口の変化 204
狩猟採集・農業・都市生活における生活の変遷 206
都市生活はヒトをどう変えたか? 215
時代ごとに動物観はどう変遷したか? 220
民話・伝承に読み取る動物観の変遷 229
第8章 私たちは動物とどう向き合うか
史実に残る「動物裁判」 240
高等・下等の境界はあるか? 243
都市生活がもたらす非寛容さ 246
パンダ・フィーバーについて 248
現代人と動物のステレオタイプ 252
私たちは動物にどう向き合うか? 260
あとがき [265-267]
文献 [268-271] -
●人間が持っている動物に対してのイメージは文化や時代によって変わっていく。どうしてその動物にこういうイメージを抱くのか化学的にアプローチしている。