健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて

著者 :
  • イースト・プレス
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781618883

作品紹介・あらすじ

現代人が課せられる「まともな人間の条件」の背後にあるもの。

生活を快適にし、高度に発展した都市を成り立たせ、
前時代の不自由から解放した社会通念は、同時に私たちを疎外しつつある。
メンタルヘルス・健康・少子化・清潔・空間設計・コミュニケーションを軸に、
令和時代ならではの「生きづらさ」を読み解く。

社会の進歩により当然のものとなった通念は私たちに「自由」を与えた一方で、
個人の認識や行動を紋切型にはめこみ、「束縛」をもたらしているのではないだろうか。
あらゆる領域における資本主義・個人主義・社会契約思想の浸透とともに、
うつろう秩序の軌跡と、私たちの背負う課題を描き出す。

かつてないほど清潔で、健康で、不道徳の少ない秩序が実現したなかで、
その清潔や健康や道徳に私たちは囚われるようにもなった。
昭和時代の人々が気にも留めなかったことにまで私たちは神経をつかうようになり、
羞恥心や罪悪感、劣等感を覚えるようにもなっている。
そうした結果、私たちはより敏感に、より不安に、より不寛容になってしまったのではないだろうか?
清潔で、健康で、安心できる街並みを実現させると同時に、
そうした秩序にふさわしくない振る舞いや人物に眉をひそめ、
厳しい視線を向けるようになったのが私たちのもうひとつの側面ではなかったか?(「はじめに」より)

感想・レビュー・書評

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  • いろいろと細かいことはあるけれど。でもこれを言語化できるというのはすごいことだと思う。

  • 学生時代に(近代史で)よく読んだポストモダン本だなあと思いつつ、この切り口が現代日本にここまで当て嵌まるかと、前半は膝を打ちながら読んだ。
    しかし後半の衛生の章に差し掛かり、外見やサブカルチャーがこんがらがってくる辺りから首を傾げる所が…
    かわいい最強説の様な話は眉唾もので、フェミニズム/ジェンダー論的な切り口から再検証が必要なのではと感じた。

  • 令和時代ならではの「生きづらさ」とは?メンタルヘルス・健康・少子化・清潔・空間設計・コミュニケーションを軸に考えます。

  • 付箋を貼りまくりながら読んだ。いつか時間をとって読み返したい。治安も良く、清潔で安全で、心地良い社会のはずなのにどこか違和感がある。この生き辛さはなんだろう。昭和の終わりに生まれ、東京生まれ東京育ちの自分が読むにはとても納得のいく本だった。何でもかんでも「支援に繋げましょう」の世の中に違和感がある。今の社会を否定するわけではなく、昔は良かったと感傷に浸るわけでもなく、様々な視点から「医療や福祉を通じた社会への再配置」に切り込む文章には引き込まれた。

  • 今の生活に感じる違和感を、歴史、社会史などを交えながら詳細に紐解いていく内容。感覚的に感じていた事に光が当たり、ハッキリとしていくような感覚。

  • 現代では、社会に参加して活躍するために必要なコミュニケーション力などのスペックが、数10年前に比べても急激に高度になってきており、そのために、生得的にスペックの低い人は、社会に参加できず、また、日本の、特に東京などの都会では、社会構造や物理的な空間設計などにより、かつてのように、社会からドロップ・アウトして生きる余地も狭まってきており、社会福祉に組み込まれる以外の選択肢は極めて限られている。というのが、主な主張。
    直感的には、そうかな、とも思わせるのだが、肝心な根拠があまり確かではない。
    数値的な分析が難しい内容なので、新規の研究に基づくデータの提出が困難なのは、致し方ないかもしれないが、もうちょっと客観的なエビデンスがほしいと思った。特に、SNSの影響に関しては、著者の思い込みに基づく記述が目立つように思われる。

  • 私たちは現代では、
    健康に生きなければならなくなった。
    長生きしなければいけなくなった。

  • ・元々ブログをよく読んでおり賛同できる意見が多かったのと参考文献の多さと面白さに興味が出たので購入。最近読んだ学術系の本よりもより共感しやすい。
    ・社会が健康や正しいとする価値観に向かってあらゆる行動が環境、規則の両面から方向付けされ、そこから外れた生活ができなくなっている、閉塞感について書いた本。
    医療や行政が現代の価値観に沿った生活ができることを目指しているのは単純にあるべきサービスで歓迎していたけれど、そうした価値観の再生産に寄与している、いうのは納得。ここは筆者の専門領域なのでもっと掘り下げて読んでみたかった。健康が純粋な自然科学の世界を超えて今では社会的に優越した個人を顕示する手段となっている、というのも、健康でマウンティングしてくる人種をよく見ているので実感できる。あれは快活さを善とする価値観とも相まって社会でのランク付けや出世に効いてきてると思う。現代の価値観を突き詰めれば出産育児は選択できないというのも深い実感がある。
    ・一方で昭和を美化しすぎているように見える。昭和が多様な生き方を許容していたのかは三十代で年配者層の営業ノリで疲弊した自分としてはどうにも実感しがたい。個人主義が欧米と比べて社会に根付く前に社会制度だけ出来上がってしまった事を一因としているが、そこも欧米との比較待ち。
    ・これに何か対策を示しているわけではないけれど、生きづらさを個人の問題に矮小化せず社会に対して問題提起をしていく必要があるのでは、という最終章のまとめには前半の観点から深く納得できた。
    ・『いかにして民主主義は失われていくのか』を大きく参考にした、と紹介されていたので、そちらを読んでから本書を読んでみたのだが、考察の射程を新自由主義から社会の多様な秩序に広げておりかつ生活で実感できるさまざまな事例が散りばめられており(*)、視野の広さと落とし込み具合に感嘆した。前述の参考書籍を読んだ時には自分にはこんなに違う観点からは考えられなかった。中身の是非は置いておいてもそれだけで発見だった。
    (*)政治思想の学術書とブロガーとしての社会学的な意見、という大きな違いがあり勿論どちらの本が良いとかいう話では無い(前者が個人的につまらなかったのは事実だが)
    ・ただこのラノベみたいなタイトルはどうにかならんかったのか、、妻にそんなタイトルの本買って恥ずかしくならない?とか言われた泣。いえ、内容に沿っている時点でタイトル詐欺の本よりはましです。

  • 適応できない者を枠外に追いやる住みやすい社会、病的な健康志向、子育ての全責任を親だけに押し付ける社会…なるほどと思わせることばかり。
    うまく適応できている人にとっては今は気にならないのかもしれないが、ある日突然枠外へ放り出されるかもしれない社会であることを自覚することの大切さ。
    解決策はこれからの課題だがこういう問題提起は大事。

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著者プロフィール

1975年生まれ。信州大学医学部卒業。精神科医。ブログ『シロクマの屑籠』にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。著書に『ロスジェネ心理学』『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(ともに花伝社)、『「若作りうつ」社会』(講談社現代新書)、『認められたい』(ヴィレッジブックス)『「若者」をやめて、「大人」を始める』(イースト・プレス)がある。

「2020年 『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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