夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

著者 :
  • イースト・プレス
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感想 : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781620121

感想・レビュー・書評

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  • 『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』素晴らしい本です!|椿 由紀(Yuki Tsubaki)|note
    https://note.com/tsubaki_yuki/n/nde84828630c2

    話題の本:『夕暮れに夜明けの歌を』 奈倉有里著 イースト・プレス 1980円 | 週刊エコノミスト Online
    https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220308/se1/00m/020/074000d

    早春は残酷な記憶 人間の根よ、目覚めて驕るな 翻訳家・文芸評論家・鴻巣友季子〈朝日新聞文芸時評22年3月〉|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14590855

    書籍詳細 - 夕暮れに夜明けの歌を|イースト・プレス
    https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620121

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    岩波書店 図書 2022年6月号
    <対談> 戦争文学で反戦を伝えるには
    逢坂冬馬、奈倉有里

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      女の本屋 > 著者・編集者からの紹介 > 奈倉有里・著『夕暮れに夜明けの歌を――文学を探しにロシアに行く』 ◆イーストプレス・穂原俊二 | ...
      女の本屋 > 著者・編集者からの紹介 > 奈倉有里・著『夕暮れに夜明けの歌を――文学を探しにロシアに行く』 ◆イーストプレス・穂原俊二 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
      https://wan.or.jp/article/show/10040#gsc.tab=0

      (インタビュー)ロシアの中の声 ロシア文学翻訳者・奈倉有里さん:朝日新聞デジタル(有料会員記事)
      https://www.asahi.com/articles/DA3S15314640.html
      2022/06/06
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      編集部便り〈その232〉文才に恵まれた姉弟
      「新潮新書」メールマガジン[461号] 2022年7月10日発行 | 新潮社
      https://w...
      編集部便り〈その232〉文才に恵まれた姉弟
      「新潮新書」メールマガジン[461号] 2022年7月10日発行 | 新潮社
      https://www.shinchosha.co.jp/mailmag/shinsho/shi20220710.html?shi20220710
      2022/07/12
  • 大丈夫、ロシア文学の知識がなくてもそこそこ楽しめた笑 ただ列車に揺られるように身を任せ、筆者の記憶の広野を渡る。

    翻訳家である筆者の自伝なんだろうけど、彼女が大好きなロシア文学で彩られた紀行文にも見て取れる。こちらが作家や作品名を知らずとも、簡潔明瞭に解説してくれるおかげで、気になる作品もちらほら出てきた。(近寄り難くなった時には本書に助けを求めよう) そのかたわらで、真面目な筆者とルームメイトちゃん達とのやり取りがコミカルで可愛かったりする笑

    文学だけじゃなくて、ロシア語をマスターしていく筆者の成長も垣間見られ、気が付けば語学に一生懸命だった頃を回顧していた。「若い」&「目的がある」の条件さえ揃えば頑張れるのは頷ける。でも学習の中で筆者に訪れたという「思いがけない恍惚とした感覚」にはまだ至れていないんだよなー笑
    現地の大学進学を経て、看板にまで文学的ユーモアを見出した時には上達の早さもさる事ながら、「ついに来るところまで来ちゃったかー!」と圧倒された。(これぞ理想的なレベルアップ…)

    「語学をはじめたときにはただの記号だったものが、実態となり、さらに実感となる」

    ガイドブックに「最も警戒すべきは警官」と書いてあるような国にハタチになりたての子が単身で留学とは…留学中にテロや最寄駅では殺人事件も発生したりしてご本人やご家族も気が気じゃなかったと思う。本当に命があって良かった。。(ご家族の反応が明記されていない…という事はしょっちゅう衝突されていたのか?と近所のオバチャンみたいに勘繰っていた汗)

    筆者がテロの脅威にもめげずベランダで詩を朗読する姿を見ていると、これまで革命やらで殺気立った世の中をサバイブしてきた人達も、こうして言葉に救いを求めたから国内で文学が盛んになったのかなと思えてくる。

    後半以降はウクライナとの紛争等政治と絡めたエピソードが所狭しで、筆者の解説にしがみついていないと簡単に読み飛ばしてしまいそうだった。こちらは彼女が見た/見ている景色をただ眺めているだけだが、向こうで出来た大好きな友人や恩師を取り巻く環境を追わずにはいられない、追うことで少しでも彼らとの繋がりを感じていたいんだろうな。

    そう解釈した途端、自分は今まで自分の「大好き」と真剣に向き合えていなかった事を痛感、筆者の前で小さくなっていたのだった。

  • なんて美しい本なんだろう。ひたひたと押し寄せてくる感動。早く読み進めたいけど、ゆっくりゆっくり味わいたい。と、おもいつつも、後半は泣きながら一気に読んでしまった。

    深い信頼とおもいやりに満ちた関係は、切ないけれども温かくて。自分自身が少しずつ生まれ変わり、いつのまにか、かつての自分といまの自分はまったくの別人というくらい内面が変わるような人に出会うということに深い感動があった。

    文学の力を信じ愛している人たちの思いにあふれた本。今この時期に読めてよかったとおもう。

  • 星5では足りない。この本は今後、何度も読み返すことになる。
    "どうしたら「人と人を分断する」言葉ではなく「つなぐ」言葉を選んでいけるのか"
    文学の役割を信じて、善き読者でありたい。

  • 日々悲しいニュースが溢れるなか、まさに文字の羅列を無自覚に取り込むのではなく、思考に繋げる必要を感じた…
    巻末の地図を見ながら、文中の魅力的な人々と平和を想わずにいられない。
    僕にも本当に今読むべき本でした。

  • 読後しばらく恍惚とし、いつもならすぐ書き始める感想文も手につかなかった。
    2月に読んだ本書の感想を今ようやく投稿する。

    ***

    留学先のロシアでひとりの先生との出会いが、著者のその後の人生を大きく変えた。
    敬愛する恩師は、言葉の大切さについて教えてくれた。
    なのに帰国前にふたりきりになれた時、言葉は無力になり、どの言葉も心を表しはしなかった。

    「言葉が心を超えないことを証明してしまうような瞬間が人生のどこかにあるからこそ、人はどうしてその瞬間が生まれたのかを少しでも伝えるために、長い長い叙述を、本を、作り出してきたのだ」

    忘れられない、忘れてはいけない、忘れたくない。

    著者が過去を記した理由は、その全てかもしれない。この本を書き終えて、ほっとしただろうか。それとも...。

    今まで読んだものの中で、もっとも儚くうつくしい回想録だった。

    ***

    本を読んでいて幸せを感じるのは、こういう本に出会えた瞬間にほかならない。

    この本を読んだときは、著者が翻訳した作品を読んだことがなかった。本能的に、読まなきゃいけない、と感じた。こういう直感は当たる。

    p79
    西欧圏では目次録の記述から六六六という数字を忌み数とする風習があり、そうでなくとも数字の揃ったゾロ目は好まれないことが多い。

    p96
    たとえばプーシキンのエヴゲーニー・オネーギンは、「余計者」の典型として文学史のなかで受け継がれていくわけですが、これはプーシキンが巧みにあの時代の申し子の心理を掴んで描き出した結果でもありますね-こういう人物像のことを「性質的形象」といいます。「いろんなことを少しずつ」学んだという生い立ちや周囲とのかかわりかたに、「オネーギン的」性質が常に反映されている。アレクサンドル・デュマのように心理的性質の描写に秀でた作家は、ひとつの作品のなかでたくさんの性質的形象を生み出しています。もっと知りたい人はぜひカール・レオンハルトの『強調された個性』という本を読んでみてください。

    p102
    エセーニンほど愛されている詩人も珍しい。文学が好きな人なら誰でもひとつやふたつは暗唱できるのだ。

    p135
    授業で「ちいさな人間」の形象の話が出たときだ。「ちいさな人間」というのは、ゴーゴリの『外套』に登場する主人公の小役人に代表される人物像だ。下級官吏など社会的に身分の高くない人間が、裕福な人からしてみればちっぽけなものごとに執着して一喜一憂したり翻弄されたりする様子が描かれるので、当時の社会問題や文化的背景が色濃く反映されている場合が多い。この人物像は世界的にもさまざまな広がりをみせた。(中略)芥川龍之介が『芋粥』という短編で『外』を模倣しつつ「ちいさな人間 」を描いているのは日本では有名な話(後略)。

    p157
    ロシアの大型図書館は基本的にすべて閉架である。

    p183
    エセーニンの詩が印象に残っている-

    愚かな心よ 高鳴るな
    僕たちは皆 幸福にだまされてる
    同情を求めるのは 物乞いだけだ......
    愚かな心よ 高鳴るな〔...〕

    もしかしたら 僕らのことも
    雪崩のような運命が 気にかけて
    この愛に 小夜啼鳥の歌で
    応えてくれる かもしれない

    愚かな心よ 高鳴るな

  • 本書に巡り会えた幸運に感謝せずにはいられない。
    本書は文学である。それも珠玉の逸品。
    著者の言う「言葉があまりにも無力になる瞬間」に出会った思い。
    かわりに印象に残った言葉を引用したい。
    p13
    「…賢さや幸せという、普段は自明のものと認識している言葉の意味を考え直すことになる。そうして緩やかにつながる言葉同士の関連性に目を凝らし、意味の核心に迫ろうとするが、核心は近づいたかと思えばまた遠ざかる。「言葉」と「意味」はひとつにはならい、でもだからこそ面白いー」
    p55
    「「この世界の光は闇よりも少しだけ多い」という言葉が空虚な約束や気休めではなくなるためには、「原因」を問い続けることが必要なのだと。」
    p201
    「偉ぶったり叱ったりすることで表面的に授業を成り立たせることはできても、それは力で抑え込んだだけで、そこから対話は生まれない。先生は、まだ学生とはいえ文学に従事する人間を尊重し、対話することを決してあきらめなかった。」
    p245
    「世界のニュースが報じなくなった灰色の世界で、ただ日々を生きようとする人々。その灰色はしかし、単純なひとつの色ではない。白か黒かを迫らずにそれぞれの灰色に目を凝らすことなくしては、対立は終わらないのだろう。」
    p263
    「文字が記号のままではなく人の思考に近づくために、これまで世界中の人々がそれぞれに想像を絶するような困難をくぐり抜けて、いま文学作品と呼ばれている本の数々を生み出してきた。だから文学が歩んできた道は人と人との文脈をつなぐための足跡であり、記号から思考へと続く光でもある。もしいま世界にその光が見えなくなっている人が多いのであれば、それは文学が不要なためではなく、決定的に不足している証拠であろう。いま世界で記号を文脈へとつなごうとしているすべての光に、そして、ある場所で生まれた光をもうひとつの場所に移し灯そうとしているすべての思考と尽力に、心からの敬意を込めて。」

    もっとたくさん取り上げたいが…
    本書は1ページ、1行たりとも不要なところがない。
    タイトルもそうだが、文章のリズムや各章の構成、引用される詩や小説の一節など注意深く効果的に配置されていながら不自然さは微塵もない。著者の体験した驚きや喜び、切なさなどが瑞々しく感じられ、一緒に体験している気持ちになれる。読書する幸せを味わえる。

  • 2022年のマイベスト本。
    私たちは遠い昔に大切な何かを置き去りにして、それを忘れたまま日々を過ごしているんじゃないだろうか…と思った。読むほどにそれを感じた。田んぼの中にいるミジンコ、稲の葉の音、脱穀のもみ屑、郷里の風景、統廃合で消えてしまった母校、夕焼けに染まる校舎。しまいには農作業をしている祖父母の背中が見えてきて、おもわず泣いた。

    著者の奈倉有里さんは、ロシア国立ゴーリキー文学大学に入学し、初の日本人の卒業生で「文学従事者」という学士資格を取得した。ソ連が崩壊した時は8歳で、ロシア通だった両親が血相を変えて右往左往していたという。
    祖父がトルストイ好きだったせいか、脳内で「ロシアはほぼ新潟(ほぼ故郷)」なるということが書かれていて、とても共感ができた。『バイオリン弾きの故郷』では、旅先でトラブルがあり、バイオリニストのドミートリ―さんに助けてもらった。ドミートリーさんや、人の温かさが本から伝わってくるのを感じた。3章の『合言葉は「バイシュンフ!」』では、ロシア語の罵倒語について書かれていて、ふき出しながら笑った。ところどころ挿入されている詩も味があって素敵だ。クライマックスは、30章の「大切な内緒話」と「言葉を補う光を求めて――あとがきに代えて」だ。読んで打ち震えた。これからは言葉を大事に使っていきたいと思った。


    奈倉さんが訳した本を読んでいきたい☞『理不尽ゲーム』

  • 呆然と幸福感に包まれながらも、嫉妬と後悔が綯い交ぜになったような読後感。おそらく僕の今年のベストワン。
    こんなにも真摯に、身体ごとぶつかかっていきながら、楽しく「学ぶ」姿は、とても眩しく、羨ましく、そして自分自身の後悔をも喚起させる。「細胞が生まれ変わる」ほどの勉強を僕もしたかった。いや、したくなった。(そう今からでも!)でも素直な文体がとても可愛らしく、まるで(SPY×FAMILYの)アーニャが大人になったみたいで心が癒やされる。この本こそ、僕は孫に読ませたい。あと何年後だ?

  • 一度に読むのが惜しくて、少しずつしか読み進められなかった。図書館で借りていたが、どうしても手元に置きたいと感じて結局購入。

    後半は涙なしには読めなかった。

    ロシアの文学大学での生活を追ったエッセイだが、そこには人々との出会いと別れ、学びへの探究、ロシアをめぐる政治的な動き、そして文学への想いが語られる。

    「文字が記号のままではなく人の思考に近づくために、これまで世界中の人々がそれぞれに想像を絶するような困難をくぐり抜けて、いま文学作品と呼ばれている本の数々を生み出してきた。だから文学が歩んできた道は人と人との文脈をつなぐための足跡であり、記号から思考へと続く光でもある。もしいま世界にその光が見えなくなっている人が多いのであれば、それは文学が不要なためではなく、決定的に不足している証拠であろう。」


    著者には到底及ばずとも、文学部で学んだ者として、そして曲がりなりにも国語教育に携わるものとして、この部分には、文学と共にあることをここまで言語化できる著者に畏敬の念を示すとともに、自分も末端ながらもその「光」を守るための行動をとらねば、という勇気と決意を抱かされた。


    静かな文章だが、徹底的に言葉にしているところに著者がこれまで言葉や文学にいかに真剣に向き合ってきたかが感じ取れる。

    これからの人生で何度も開きたい一冊となった。

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著者プロフィール

82年東京生まれ。ロシア国立ゴーリキー文学大学卒業、東京大学大学院博士課程満期退学。著書に『夕暮れに夜明けの歌を』『アレクサンドル・ブローク 詩学と生涯』、訳書に『手紙』『陽気なお葬式』など。

「2022年 『戦争日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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