さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち

  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781620428

作品紹介・あらすじ

「宇宙食、作れるんちゃう?」
はじまりは生徒の一言だった。
数々の困難をのりこえる大気圏突破ノンフィクション!

地域の名産「よっぱらいサバ」の缶づめが、宇宙へ旅立った! そこには12年にわたる物語があった。一筋縄ではいかない開発、学校統廃合の危機。葛藤の中で一人一人が力を合わせたとき、宇宙への扉が開いた――。


「大きすぎる夢は、一人で実現するのは難しい。
でも長い年月をかけて、一人一人が力を合わせた時、信じられないことが現実になることがある」

2022年発行高校英語の教科書(三省堂刊)でも紹介!
小浜水産高校から若狭高校へ引き継がれた、宇宙食開発のもようを、宇宙ライターの林公代氏が詳細な取材で迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  中学生の頃の自分に伝えたい。人生は一度きりだよね。だったら試してみてもいいんじゃないかな。今、将来を迷っているんだったら、どのみち高校普通科でも迷うよ。だったら、職業系高校で試してから大学を選んだらいいじゃない。
     この本読んだ今の自分なら、絶対そうする。その方が、忙しいかもしれないけど、楽しそうと。
     本書が図書館の「ティーンズ」コナーにあったので、つい、こんな感想がでてきます。

     著者の一人、小坂康之先生が東京水産大学を卒業し、福井県の小浜水産高校に赴任したところから物語は始まります。
     本のタイトルのようにサバ缶が宇宙に行って、盛り上がりもありますが、だいたい地道です。

     まず、小坂先生は新卒教員なので授業のスキルアップに取り組みます。
     そして食品加工の教員として、小浜水産高校伝統のサバ缶工場の、食品安全の「HACCP認証」取得を目指します。
     金属検出機が買えなくても、サバを切る包丁の刃こぼれ危害を防ぐため、10分ごとに包丁を点検して記録を残します。素晴らしい教育です。感動で涙がでました。
     今は金属検出機はあるそうですが、10分ごとの点検はあえて残しているそうです。こうして、生徒さんたちは、HACCPの本質を体得されるんですね。

     そして、小浜水産高校の統合問題を、小坂先生は他の先生方と、そして、地域の方々と共に乗り越えていきます。何でも統合するのは大変ですよね、みなさんがんばりました!

     そこから小坂先生は、探究学習を究めていきます。学校は全国1位にも選ばれています。
     探究学習では、最初の課題設定に力を入れているそうです。生徒さんたちの、好きなこと探しに時間をかけます。これは以前読んだ『リサーチのはじめかた』と同じだ。

     小坂先生はじめ先生方の考え方は、生徒さんの成長が第一ですね。宇宙日本食サバ缶は学習課題の1つであり、学習を深めていった先の、当然の帰結であることがよくわかりました。

     宇宙日本食サバ缶について、ぜひ本書を読んでみてください。

  • 教育困難校だった小浜水産高校が、1人の熱い先生=小坂先生が赴任してきたこと、元々職業訓練の一貫で有していたサバ缶加工施設があったこと、地元の海をきれいにしたいと思い、地域を巻き込んだ活動をするような生徒たちがいたことなど、色々なタイミングも合って学校が変わり始める。

    宇宙食がいかに厳しい条件の下で作られるか、認められるまでの年月の長さにも驚くが、それを乗り越え、発想から、高校生が作ったサバ缶が宇宙に届くまで、14代もの生徒が(途中で中断していた時期もあるが)たすきを繋いで、夢を実現させた生徒たち、それを応援した大人たちに頭が下がる。

    途中で学校統合もあり、教育のあり方を当事者の学校だけに止まらず、地域ぐるみで議論したというのもスゴい。日本の教育、地方の力は捨てたもんじゃない、と元気をもらえた一冊。
    途中何度もウルウルきた。

  • 今度小坂先生の講演会を聴きに行くので、その前に読んでおこうと。
    工業系水産系の高校って、昔のイメージは教育困難校って感じですが、今はどの学校も資格を取ったり、就職で即戦力となる技術を身につけたり、大学院進学してさらに専門性を身につけたりと生徒の姿は素晴らしいところが多いです。
    小浜水産高校での生徒の成長の姿もまさに素晴らしく、勉強ができる知識に負けない技術を手に入れていった。それを支えたのが小坂先生の生徒への愛情と教員としての器。
    最近は「探究科」がある高校が増えてきた。そこに進学する子はすでにやりたいこと興味があることが明確になっている子が多いが、その他多くの子はやりたいこと興味があることがない、わからない。それに時間をたくさんとって本当にやりたいこと興味のあることを見つけていく探求学習がどの学校でもできるといいな〜。

  • <訪問>「さばの缶づめ、宇宙へいく」を書いた 林公代(はやし・きみよ)さん:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/653688?rct=s_books

    「さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち」 もの作りのときめき、大人も呼応|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14554112

    書籍詳細 - さばの缶づめ、宇宙へいく|イースト・プレス
    https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620428

  • 人間、食べなければ生きてはいけない。

    それは宇宙であっても同じ。地球と異なる環境で、栄養を摂るために、どう工夫するか、それらの集大成が宇宙食であり、宇宙食で思いつくのは、子供の頃に見た、フリーズドライの食品たちだった。

    この本のタイトルを見て、確かに缶詰なら宇宙に飛ばせるのではないか、とページをめくったが、話はそれほど単純ではなかった。

    宇宙食でも用いられるHASSPの取得から、『宇宙食、作れるんちゃう?』という一言をきっかけに始まったこのプロジェクト。

    学校の統廃合や、そもそも缶詰類が、廃棄物の問題で宇宙に持ち込めるかどうかなど、向かい風は吹き荒れる。
    それでも、14年もかかって最終的に実現できたのは、代々引き継がれてきた研究と、幸運と、そして、「楽しさ」があったからとこの本は述べている。

    「楽しさ」といっても、気分が高揚するばかりの楽しさでは決してなく、「やりがい」や「達成感」、そして「報われることの喜び」の集積が、振り返ってみると「楽しさ」があったと、要約されてしまうが、決してそんな単純なわけではなかったことが、この本の節々に語られずとも現れてくるような気がした。

    宇宙食に限らず、同じ制限された中で食を摂るという意味で、災害食に応用できないか、という研究も社会的に進められているそうだ。

    宇宙食と災害時の食糧は、どうしても日常からかけ離れたイメージがある。しかし、それらも見えない創意と工夫で、いつか日常食べるものと一緒に、食卓にのぼるようになるのかもしれない。

    「いつか」は、もっと近くにあるのかもしれない。
    そう、希望に満ちた気持ちになることができました。

  • “サバ街道を宇宙へと繋げる水産高校”

    「宇宙食、つくれるんちゃう?」

    そんなつぶやきから始まった、若狭のサバ缶が宇宙食になるお話。

    水産高校の高校生たちが作る、地元小浜のサバを使ったサバ缶を、宇宙食基準に則って、宇宙食に認定され、宇宙で「おいしい!」って言ってもらうまでの14年間。

    自分たちがワクワクする課題って、自分たちでしか探せなくて。与えられるもんじゃないんだよね。

    ただ、サバ缶の宇宙食を作る話じゃなくて、きちんと“探究学習”の話であることがすごい。

    自ら課題を探して、知恵や知識やコミュニケーションで解決していく。こうやって課題に取り組むって楽しいよね。

    今、私も会社の課題に対して、施策を経営層に提案するっていう研修を受けてるけど、ああ微妙に現実的でつまんない、ワクワクしないの作っちゃったなーと、少し悔しい。この本をさきに読みたかった!

  • 情熱は伝染する。最初はたった1人の情熱だったかもしれない。でもそれが周りにどんどん広がっていき、やがて大きな偉業を成し遂げる。

    さば缶を宇宙食へ。

    かつて教育困難校とも言われた学校で、それはただの夢物語だった。一人一人の力は小さくて、とてもそんな大きな夢を叶えられるわけはなかった。

    でも、たくさんの生徒たちが少しずつ前へと突き進むことで夢は現実へと変わる。

    子どもというものは、やはりどこまでも純粋で真っ直ぐなんだろう。学校の雰囲気が悪ければどこまでも悪くなるかもしれないし、逆に良ければ自発的に一生懸命努力をしてくれる。

    人生経験の少ない彼らは自分の力だけで道を探すことは難しい。だからこそ周りにいる大人がどれだけ彼らを見てあげられるかでその先の伸び代は違ってくるのだろう。

    本書で何度か出てくる「見取り」という言葉がすごく心に残っている。生徒が変わるきっかけとなる瞬間。それはとても些細なことで、注意深く見なければ見逃してしまうほどのこと。

    しかし、その瞬間を見逃さずに捉えられるかどうかでその後の人生が変わってくるのだと思う。

    さば缶を宇宙食にしたいと13年もの時間をかけてバトンを繋いできた生徒たち。その想いはもちろんだか、周りにいる大人たちの情熱がとても良かった。

    教育書として良書。

    エピローグでやられた!

  • 福井県の水産高校の話。泣ける。
    14年の歳月をかけて、夢を叶えていく姿にジーンとくる。
    ずっつくられていたサバ缶の開発。
    宇宙食として認定されて、
    宇宙飛行士が実際に食されたところまで。
    周囲の人に協力をお願いして、
    結果を出すということを学べた。
    娯楽があまりない宇宙生活に、
    食事が潤いを与えてくれる。
    日本食のお米や魚を食べると元気になる。
    宇宙での楽しい思い出は、
    全て食と関わっている。
    夢って叶うと思う!
    小坂先生の生きた教育。すごい。
    ワクワクした。
    野口飛行士からのアドバイス、大きさについて、サイズを小さくした方がいい。
    重力がないので、食べ物をちょっとつかんだだけでごそっと全部とれてしまう。
    だからカップヌードルの麺やからあげクンは、ひと口サイズだそう。消しゴムサイズくらいだと、つかんで食べやすい。と。
    サバ缶が食べたくなった。

  • 先生と生徒と環境、うまくいく時は、本当に『歯車が全てかっちりとはまる』時ですよね。
    みんなが凄い!
    日本には教える勉強が多すぎる。
    自分で考えるって大切。学力じゃない。

  • 高校生たちが14年かけて伝統で作り続けた鯖缶を宇宙食としての基準をクリアして野口宇宙飛行士が宇宙で食した物語。教育って何かとういう大切なポイントが散りばめられたドキュメンタリー。周囲を巻き込みながら生徒に伴奏し続けた小坂先生とその他の高校、大学の教員、地域の方々。そしてワクワクしながら地道に研究を続ける生徒たち!こんな勉強してみたかったなぁと思う。

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著者プロフィール

1977年生まれ。京都大学東南アジア研究所研究員。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。博士(地域研究)。
専門:民族植物学。

「2008年 『ラオス農山村地域研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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