内閣官房長官秘録 (イースト新書) (イースト新書 37)

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  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781650371

作品紹介・あらすじ

中曾根康弘総理にペルシャ湾岸への自衛隊派遣に異議を申し立てた"カミソリ"後藤田正晴。戦後最大の宰相・田中角栄の築いた派閥の流れをくんだ経世会支配-「竹下政権には三人の官房長官がいる」と言われた。竹下登総理、小渕恵三官房長官、そして若き日の小沢一郎官房副長官である。経世会は、のちに自公政権の礎を築いた野中広務と青木幹雄という「衆参のドン」となる官房長官を輩出する。そして安倍政権の最大のキーマン菅義偉内閣官房長官の次なる一手、此の男の政権戦略が日本政治を震わす!

感想・レビュー・書評

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  • ☆2(付箋8枚/P431→割合1.86%)
    文庫にしては厚く盛りだくさんだったので、数値はちょっと下がっていますが、楽しめました。
    数人歴代の官房長官を扱っていますが興味深く思うのは菅官房長官の政治術です。
    いやでも竹下さんが政治家が大物になれるかどうかの違いは「絶対に大きなところで間違わないこと」だと本書で述べていたけれど、それが全て組織の中の人の問題だということが、考えさせられました。


    ・菅は、横浜市議を務めながら、いつの日か国政への思いを強くしていった。
    <霞が関の中央官庁が主導する中央集権の枠組みを、壊さなければいけない>
    当時の横浜市は、待機児童の数が多く、子どもを保育園に預けられずに困っている親が多く問題になっていた。また、特別養護老人ホームの入所待機者も増え初めていた時期でもあった。
    だが、待機者を解消するために保育所や老人ホームなどの施設を整備するのには、国の制約が多くあった。全国一律の制度になっているため、地価の高い横浜市では、国の基準を満たす面積の土地を確保するのは、容易ではない。そのため、施設の整備がどうしても遅れてしまっていた。

    ・自民 党の選挙対策担当者として菅が常に意識せざるを得なかったのが、小沢一郎の影だ。小沢は選挙対策担当の代表代行として民主党の衆院選戦略のすべてを牛耳っていた。
    「小沢さんはすごい」
    選挙前からそんな言葉を多くの人が口にしていた。菅は、そのたびに疑問が湧いた。
    <小沢さんは、古いタイプの政治家。今様には合わない>
    小沢が選挙に備えて地方を回る際、訪ねる先は決まっている。労働組合の幹部か地域・職域団体の長といったところだ。それら支援団体の上層部と根回しをすることで選挙を乗り切っている。

    ・菅は、いつも梶山に言われていた。
    「おまえなんか、官僚にすぐに騙される。官僚は、説明の天才だ。官僚には自分たちの思惑があり、政治家に説明するとき、必ずその 思惑を入れて説明するから、それを見抜けないとダメだ。なにも、官僚だけじゃないぞ。マスコミだって、取材するときに最初から一つの方向を決めてくるから気をつけろ。学者だって経済人も、いっしょだぞ」

    ・<官房長官としても、まずまずうまくやってはいくだろう>
    自民党担当として菅を見てきた菅番の記者は、菅の仕事ぶりについてはそんな予想を立てていた。
    だが、就任後一カ月で起こった事件で自らの読みを大きく修正しなければならなくなった。きっかけとなったのは、「アルジェリア人質事件」。
    事件発生直後から終息までの菅の切り盛りは番記者の目から見ても、「すごい」の一言に尽きる。中でも「情報の出し方とスピード」。
    舞台裏についてすべて知っているわけではない が、番記者は菅の会見を取材しながら、こんなことを感じていた。
    <総理は東南アジアを外遊中。不在だった。でも、アルジェリア情報の要所は現地でのぶら下がりで総理がしゃべっている。確認したわけではないが、菅さんがそうさせているようなイメージがある。あくまで大事なところは菅さんでなく、総理の口から発言している>

    ・アルジェリア人質事件が発生した平成25年1月16日から三日後の19日、菅は、邦人救出のための政府専用機の派遣の検討を始めた。
    「政府専用機を出そう」
    そのとき、防衛省は何かと理由をつけては、頑なに拒否した。
    「そこはテスト飛行したこともなく、初めての空港での離着陸になります。そんなところに、行けません」
    「飛行ルートがロシア上空にかかる ことになります。外務省がロシア政府から許可を取るのに一週間ほどかかる」
    「できない」を繰り返し、首を縦に振らないのだ。
    「自衛隊のパイロットは予行演習をしなければ離着陸できないのか?アルジェリアに行ったことがないから行けないだと?それなら機長は、全日空や日本航空に頼むから」
    「ロシアの上空に行くのに一週間かかるだと?ロシアだって、この現実を知っているんだろう。ロシアだって、人命救助の飛行の許可に、そんなに時間をかけるはずがない」

    ・菅には、各省庁に一人は、本音で話せる人間がいる。
    <その人がそういうのなら、間違いない>
    そこまで信頼できる人間である。
    政権を運営していく中で直面する問題には、菅自身がすべて判断を下せるということば かりではない。自分だけでは判断を間違ってしまう場合もある。そういう慎重な判断を迫られたとき、菅は、ためらわず相談できる相手に訊くのだ。
    「どのようにすべきか、率直に聞かせてほしい」
    そして、その答えを基準にして、マスコミ、学者、経営者等に相談して最終的な判断を下すようにしている。これは、横浜市会議員時代からの菅の癖である。

    ・コメなど農産物に付加価値を付けて、高く売る。例えば、一俵60キログラムの玄米を出荷すると12000円ぐらいだが、その収入ではコストを下げて頑張っても儲からない。
    ところが、コンビニで売っているおにぎりは一個100円。ざっと計算すると60キログラムのコメからおにぎりは1400個作れる。60キログラムのコメが14万円になるわけだ。

    ・竹 中は思う。
    <政治家にとって重要なことは、絶対に大きなところで間違わないことだ。そういうセンスは、小泉さんと菅さんの共通点だな>
    竹中は、第一次安倍内閣においての失敗の始まりは、郵政民営化の造反議員を復党させたことがきっかけだと分析する。
    また、橋本徹大阪市長が率いる日本維新の会も、石原慎太郎や平沼赳夫らの所属する太陽の塔と合流したのが、大きな判断の間違いだったと竹中は指摘する。

  • 菅さんの凄さやこれまでの経歴、生い立ちが分かる。何も知らず政権や政治の批判ばかりしている人はこの本を読むなり、もっと勉強するした方が良い。

    地盤を譲ってもらった楽な選挙を選ばず、お金がなくても地盤がなくても強靭な意志とたゆまぬ努力があれば何事もなし得ることを実現させた。

    NHK受信料は年間16,140円。衛星受信料も含めると年間27,480円。衛星放送がスタートした平成元年と比べると地上波、衛星ともに年間4000以上値上がりしていた。NHKの受信料実際に払っていたのは32,000,000人にとどまり約10,000,000人が支払っていなかった。結果平成23年10月末、NHKは平成24年から26年の頃計画の中で受信料値下げを発表。受信料の約9%となる年間2440円継続振り込み支払いで年間840円の支払いが実現した。受信料の値下げはNHKの開局以来で初めてのこととなった。

    タブーに近かったNHK受信料の値下げ
    地方分権改革推進法
    横浜市での待機児童とか現状を踏まえて
    ふるさと納税制度
    →平成20年4月30日に成立
    平成22年4月、宮崎県で公的による被害が発生した。宮崎県のJUNKOから寄付金や義援金が寄せられたこの時大いに活用されたのがふるさと納税だった。宮崎県に寄付されたふるさと納税は総額で1億5625万円東日本大震災でも復興に役立ててほしいと全国からふるさと納税制度を活用して声が寄せられた。被災した岩手宮城、福島の三県の寄付でふるさと納税の対象になるものは4000億円を超えると言う。
    自分を育ててくれた故郷に少しでも恩返しをしたい思いの人もたくさんいる

    現在の税制は戦後間もない間に導入された#シャウプ税制。当時と今では平均寿命が20歳違い、新幹線も飛行機上も整備されていなかった。まして週休2日制となんかあり得なかった。みんなその日を生きるために働きづめだった。時代はどんどん変わりライフスタイルも予想されないほどかかった。人生における受益と負担と言う考え方があっても良いのではないか。

    社会保険庁は年金の保険料の使い道を天下り用の大規模年金雇用基地グリーンピア建設や日常の事務費諸々の経費などに企てていた。昭和55年に年金記録のオンライン化が始まりその半年後の調査で大量の記録ミスが生じていることが発覚したがそのまま先送りしてしまった。このような勝手が許されたのは社会保険庁の職員が地方事務次官であったからである。社会保険庁は地方4分部局として都道府県単位の社会保険事務局を設置し、その学科として地域ごとに社会保険事務局が置かれていた。これらの地方支部局はかつて都道府県庁の組織とされていたが職員の身分は国家公務員であった。これが地方事務次官であるが国家公務員が地方の県庁に勤務しているため、各都道府県知事には人事権がない社会保険庁労働組合はやりたい放題であり、こうした労務管理がいい加減さが年金の無駄遣いや消えた年金問題と発展していった。ここで再び後労相に対処をさしても到底改善は望めない。そのため安倍総理は総務省の方で引き取る決断をしたのである。このような勝手が許されたのは社会保険庁の職員が地方事務次官であったからである。社会保険庁は地方4分部局として都道府県単位の社会保険事務局を設置し、その学科として地域ごとに社会保険事務局が置かれていた。これらの地方支部局はかつて都道府県庁の組織とされていたが職員の身分は国家公務員であった。これが地方事務次官であるが国家公務員が地方の県庁に勤務しているため、各都道府県知事には人事権がない社会保険庁労働組合はやりたい放題であり、こうした労務管理がいい加減さが年金の無駄遣いや消えた年金問題と発展していった。ここで再び厚労労省に対処をさしても到底改善は望めない。そのため安倍総理は総務省の方で引き取る決断をしたのである

    かんぽの宿は会員保険が爆発的にヒットしたことに端を発している。あまりの売れ行きにだぶついてきた資金の使い道が求められるようになる。旧郵政官僚の発案で簡易保健所のための簡易保健福祉事業団を設置することになった。当然理事長は郵政事務次官経験者の指定ポストであった。いわゆる天下り先だ。

    事業団が全国に作っていたのがかんぽの宿だった。支配人を始め管理職の多くは天下りポストである。事業団は年間に40代から50億もの赤字を垂れ流し始める。これを処理する方法がかんぽの宿売却だった。不動産売買よりは事業の売買に近いものだ。この点が国民には理解されなかった。従業員の雇用確保しながらの売却である店が顧みられることがなかった。赤字を垂れ流し天下りのための組織にはびこる負の連鎖を断ち切るのが西川たちの役割。そこが全く報道されていない。2400億のもの100億円で売るのはおかしいといった論調ばかりがマスコミを覆っていた。

    高校卒業した後集団就職で東京に上京し段ボール工場で働き始めた。が視野を広げるため大学で学びたいと言う思いを強く抱くようになり入学金を貯めるために築地市場の台車運びなどのアルバイトをし、アパートに帰れば試験勉強って言う生活に1年続けた。そして当時私学の中では1番楽に扱った法政大学を選んで入学した。

    円高、デフレ脱却による日本経済の再生と東日本大震災からの復興、尖閣や北朝鮮の問題による危機管理といった3つの課題に対応できるのは阿部さんしかいない。

    今の世の中で泥水をすすって這い上がった人間が総理になることの意味は計り知れない。実現すれば国民にも輝きが出るだろう。

  • 978-4-7816-5037-1 431p 2014・10・27 初版1刷

  • 少々政権よりなのかなと思いながら読みましたが、菅さんのところまででタイムアップ。
    菅さんの朴訥としながらも冷やかに世間と世論を見ている姿が好きです。歴代官房長官の視点で歴史を見るのは非常に楽しい。やはり、後藤田さんと小渕さんのイメージが強いね。梶山さんはあまり印象にないんだなぁ。しかし、今後は官房長官=菅さんになるのだろうね。それ位頻度高く露出し、失点なくうまく立ち回ってるので当然だろうね。
    ボンボンの安部さんとの組み合わせは確かに非常によい。次の総理とまではいかないけど、党内より閣内で輝く人だなぁ。

  • 20150910

  • タイトルが気になって手に取ってみたら、小説だったのでビックリ。話が時系列になっていないので、ついていくのが面倒。題材が題材なだけに、全体的に自民党寄り。そんな「秘録」と言うような内容なのか?というのが気になった。

  • ○作家の大下氏の作品。
    ○現官房長官の菅氏を中心に、過去の官房長官の特徴や伝統などを、政界の裏側にも触れつつまとめたもの。
    ○とても興味深かった。

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著者プロフィール

1944 年6月7日、広島県に生まれる。1968 年3月、広島大学文学部仏文科卒業。1970 年、『週刊文春』の記者となる。記者時代『小説電通』(徳間文庫)を発表し、作家としてデビュー。さらに月刊『文藝春秋』に発表した『三越の女帝・竹久みちの野望と金脈』が反響を呼び、岡田社長退陣のきっかけとなった。1983 年、週刊文春を離れ、作家として政財官界から経済、芸能、犯罪まで幅広いジャンルで創作活動をつづけている。
著書は、「十三人のユダ 三越・男たちの野望と崩壊」「美空ひばり・時代を歌う」(以上、新潮社)、「闘争! 角栄学校」(講談社)、「トップ屋魂 首輪のない猟犬」(イースト・プレス)など400 冊以上にのぼる。
近著に、「田中角栄秘録」「官房長官秘録」「小泉純一郎・進次郎秘録」「清和会秘録」(イースト・プレス)、「映画女優 吉永小百合」(朝日新聞出版)など。

「2016年 『田中角栄の酒 「喜びの酒」「悲しみの酒」「怒りの酒」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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