貧困とセックス (イースト新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781650722

作品紹介・あらすじ

AV女優や風俗嬢など性産業に携わる人々を取材し、介護事業の経営者として辛酸を嘗めた経験も持つ中村淳彦と、セックスワークのなかでも最底辺の売春ワークに陥っている女性を取材し、自身も脳梗塞に倒れて貧困当事者の苦しさを痛感した鈴木大介。いま最も「地獄」を見てきた二人が目にした、貧困に苦しむ人々の絶望的な現状とは。性産業の問題から、教育・福祉・介護の悲惨な状況、そして日本社会の構造的問題にいたるまで、縦横無尽に語り尽くす。

感想・レビュー・書評

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  •  「貧困」がキーワード。コンビニとかに置いてある実話誌や男性向けの娯楽誌出身のライター二人の対談集。これほど濃い中身だとは思わなかった。大手マスコミのエリート記者では、ここまで取材できないだろう。
     貧困の原因とか、裏側に潜むもの、あまりに酷い実態、そう貧乏と貧困は違うのだ。本書の見出しをいくつか書きだしてみる。

     援助交際は「カルチャー」じゃなかった
     セーフティーネットとしてのセックスワーク
     生活の糧をつぶすだけで支援はしない国
     女子大生風俗嬢と奨学金問題への誤解
     なぜ家出少女の保護は進まないのか
     「再貧困中年童貞」という名のモンスター
     国の政策に翻弄されてきた貧困階層
     等々

     あと、付け加えると「エロ」要素は期待しないで読むこと。

  • お二人とも貧困と性について多くの取材と著作を重ねており対談も面白い。
    性を金銭化できるうちは貧困層に至らぬがそこからも滑り落ちると…。
    中村氏については中年童貞で鈴木氏については家出少女から其々の考えが伺えるが読んでいくうちに日本の未来は深い穴倉の底にある様に感じた。

  • なかなか気合いの入った本でした。
    裏社会ライターの中村淳彦と鈴木大介の対談本です。

    介護を筆頭とした壊れてる産業、ブラック労働で時間と賃金を取られるより、裸になった方がマシという選択になる時代。
    ただそこに単に短時間で稼げるという意識でスペックが高い女性が加わり、裸になっても稼げない女性が出てくる時代になってるようです。
    性を売るというのはかなり特殊な女性ととらえてましたがそうじゃないみたいです。
    2003年の労働者派遣法の改正を機に普通の女性だらけ。
    誤解しちゃダメなのが風俗してるからって貧困層ではないということです。
    風俗以外に行く場所がなく、そこから弾かれた女性。それが最貧困層。
    社会的にそういう商売を潰すことばかりですがその後のこういう人たちのケアが全く考えられてないのも今の現状です。
    仕事のない人、できない人に国が介護職を紹介するのにも触れてました。
    本来とても繊細な仕事でスペックが要求される仕事に対し軽視されがちな介護職。
    労働時間、賃金を考えるとそういう人たちを紹介するのは仕方ないことかもしれませんがそういう人たちをほっておくと1番恐ろしい「最貧困中年童貞」が生まれます。
    これは男性の貧困層についてです。
    この本で呼ばれてる「最貧困中年童貞」という人たちは簡単に言えば引きこもり、親の金で生活してた人たちで親が他界した後の人たちです。
    ただ今後の日本でこの人たちをどう働いてもらうか、どう使うかが最も大事でしょうね。
    奨学金問題もかなりリアルでした。
    大学にいくためだけに背負わせる借金。
    国を挙げたビジネスです。
    なんとなくこの本を読んで日本はかなりやばいところにきてるのを強く感じました。
    もう奇跡でも起きない限り格差は広がり続けそうです。

  • 「ポエム」という表現には笑った。確かに学校や家庭でこうあるべきというポエムを聞かせられて育って来た気がする。対談形式なのでスラスラ読めるが内容は深い。その場の空気を読むだけでなく、もっと過去とか未来とか、時間的にも空間的にも視野を広げる「想像力」を持ちたいと思った。

  • この本の中身について、どこまでが真実なのかはわかりませんが(明らかに盛っている記述もあるので)、想像を超えるレベルの貧困や、その原因となるDVや家庭崩壊、虐待があること、また、そういう人たちにとってのセーフティネットとしてのセックスワークの存在、というのは衝撃的でした。

    日本全体から見れば、ごくわずかな人たちを対象とした話ではありますが、著者たちの感覚では、こういう人たちは増えており、また、この人たちの生活レベルは、さらに下がる気配があるとのことで、読んでいて気持ちが暗くなりました。
    が、こういった問題を知らずに生きていくのも、それはそれで違う気がしました。

    この本で扱っている内容を含め、セーフティネットのあり方については、社会全体で考えていく必要があるように思います。
    問題の解決には、大きく分けて、トップダウンによるものと、ボトムアップによるものがあると思うのですが、この類の課題は、トップダウンが主体になると、とんちんかんなことになりがちなので、ボトムアップを主体としながら、トップ側は、ボトムアップの内容を踏まえつつ、しかるべき方向性を示す、というのが有効ではないかと考えています。

  • <目次>
    第1章  貧困とAV業界
    第2章  貧困と性風俗
    第3章  貧困と格差社会
    第4章  貧困と子どもたち
    第5章  貧困と中年童貞
    第6章  貧困と日本の未来

    <内容>
    日本の将来について考えさせられる内容だった。そして現実を知らないことに愕然とした。二人のライターの対談集で、やや軽さや問題発言もあるが、現実の最下層に寄り添っている二人なので、学者や役所やNPOあたりの発言よりも重きがある。

  • 取り止めもない雑談ですね。

  • "社会的マイノリティ"というカテゴリーで括られると、表から見える事実で物事を語られがちで、本当に知るべき裏側を見えなくしてしまう危険性がある。これは日々考えていたことだったが、この本を通してセックスワーカーにおいても同様だと学んだ。
    自由主義な現代社会においてセックスワークが重要な"最後の受け皿"になっているのは事実であって、社会が夜の世界に嫌悪感を抱くのはあまりにも無責任。となれば、元凶だと思われるスカウト男もある意味ではヒーローとすら感じる。3章の女子大生、5章の中年童貞の話は金銭的な問題だけでなく、いくつもの問題(制度、育ち、人種)が、どこから手をつけたらいいのかわからないほど複雑に絡んでいた(それらをわかりやすく解説しているこの本は本当に優れている)。

  • 上の階層の人が下層の人から情報を得るのは難しい。そもそも対等ではないから。
    上の人は机上で下層の勉強ばかりしている。意味ないけど。

    ★2000-2005年あたり、新自由主義的な経済政策を取り、規制緩和などで従来の雇用が崩れ、カラダを売る人が増えた。所謂普通の女の子たち。

    1997 雇用の崩壊の始まり
    2003 労働者派遣法の改正
    2005 普通の女の子たちがAV女優やってる世界

    1990年以前なら、AV女優なんて1億円もらってもやりたくない、が一般論だった。

    世帯収入の減少により、多くの人が「月に5〜6万円の生活費」が足りなくなった。生活ができないから、カラダでも売るか、となる。

    2004年以降は店舗型の摘発が相次ぎ、家がない女の子のセーフティーネットは減少した。
    店舗型がダメならデリヘル、デリヘルなら無届けでもバレにくいし、モグリでやるなら未成年も使っちゃえ、という援デリが生まれる。

    ところが、キャバやソープ経験のある頭のよいトップランカーお姉さん(悪くいえば詐欺師みたいなもん)が月200とか稼いでしまうので、そもそもコミュ障だったり頭がない若い層は上手に稼げない。稼げないから病む。売春ワークがセーフティーネットではなくなってしまった。

    ★当たり前だけど誰も言えないが、ブスとデブの女性は美人よりも貧困に陥りやすい。経済主体は経済的に合理的な行動をする、という経済合理性の法則がそのまま当てはまっている。

    AVプロダクション「ブスほど、親にもらったカラダだからみたいなことを言う」
    整形は投資である。整形で得られる利益は大きい。

    韓国では、正面きって「あんた、ブスだな」というので、その流れで「いい整形病院紹介するよ」となる。

    必ずしも美人である必要はないが、入り口は見た目なので、整形の効果はある。
    お金になりそうな順に並べるなら、見た目次第。
    ただし、自分の好きな順に並べるなら人それぞれ。コミュ力やキャラクターでも勝負できる。
    容姿以外の能力を使ってトップになれる子は、女を売る業界でなくても成功する子。

    風俗業界はセルフプロデュースなので、稼ぐことを第一優先にして、どのキャラクターが1番受けるのか、髪の色からメイクまで色々試すべき。

    アングラの個人撮影業者のほうが、マーケティングできているかも。

    裏も表も高齢者から金をむしり取るスタンス。オレオレ詐欺、富裕層向け介護ビジネス、リバースモーゲージしかり。セックスワーカーもこちらへ進出すべきではないか?

    稼げる子は相手に自分をチューニングできるから、勃たせられる確率が高くなる。
    ビジュアルだけの子は歩くTENGA状態で消耗して消えるだけ。
    つまり、高齢者向けにそっち系で働くなら、勃たせる技術を転用してお金を出させるように動くべし。

    ロリコン男を相手にし続けても、相手がコミュ障なので対人スキルも上がらない。若さだけで楽をすると後で困る。

    将来、どうやって高齢者に喜んで財布を開けさせるか、考えながら知識や技術を身につけることが、介護職のアルバイトは良いかもしれん。

    最前で支援している婦人団体が、なぜそのような難民が生まれたのか、国の事情を知らないというのが残念。

    福祉や支援を目指す人々と、売春してきた人たちでは、その生きてきた世界の風景があまりにも違いすぎる。

    1958 赤線廃止

    婦人保護事業は赤線廃止と同法の成立。貧困のセーフティーネットとして存在した売春施設の破壊を推進することでうまれたさらなる貧困者の支援をしている本末転倒な仕組み。

    敗戦後に米軍向けにカラダを売る管理されていない組織解体を果たせたかもしれないが、そのあとのウーマンリブ運動でこじれる。セックスワークは全て女の敵である、と決めつけて排除していった。これにより、本当に苦しい人と、女性の権利ガーたちとの距離を広げていった。

    スカウトと支援者が情報共有できるなら、本当に苦しい人にリーチできるが、今はそれができてないので、「助けて」と声があげられるレベルの人にしかリーチできないでいる。

    雇用は残しておかないと地下にもぐるだけ。結果的にさらなる被害拡大が起きるのに、それを無視してAV業界を撲滅するために動く婦人団体。

    お役所の婦人相談員へのクレーム。なかには相談者が汚物扱いされたり、フェミニスト運動に使われそうになったりする。

    婦人団体やフェミニストには「買春男憎し」で団結している印象が強い。
    お金の提供者である買春男をつぶしても、そもそもの貧困については解決しない。

    婦人団体→攻撃→AV業界

  • 内容は、いわゆる二流紙にセックス、暴力関係の記事を書く、ジャーナリスト2人の対談。日本が1990年代をピークにデフレ、長期の不況という失われた20年を経て、先進国の中で、突出して貧しくなった。近年、社会学者などがセーフティーネットとしての風俗業などについて大きな関心を示している。私もその点では大いに関心を持っていたため、ラジオで、紹介されたことを機会に読んでみた。内容としては、学術的な客観性や具体性に乏しい。その一方、学者や政治家に比べ、対象である風俗嬢などに目線が近く、裸の現実を突き付けてくる。生活保護などを受けようとしない彼女らの存在を理解する意味でも、筆者たちの主観的な感じ方が、必要とされるのだろうと思わせられた。
    ただし、問題の解決方法などを考えるためには、より客観的な文献の登場が望まれる。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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