ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器> (イースト新書Q)
- イースト・プレス (2015年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781680057
作品紹介・あらすじ
20世紀の科学者たちが開発し、実戦に投入された想像を絶する軍事技術の数々。中でも核兵器は人類に大転換をもたらした。本書は、政治的・倫理的な是非は一切問わず、純粋に物理学の観点から、その凄まじいメカニズムに迫っていく。原子核が膨大なエネルギーを生み出す仕組みから、兵器に利用する際の設計方法、冷戦時代につくり出された究極の産物まで、直視しなければ見えてこない「核」の本当の姿を、素粒子物理学者が描きだす。
感想・レビュー・書評
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多田将 「ミリタリーテクノロジーの物理学」
原子の構造から 原子炉や核兵器の仕組みまで わかりやすく説明した本。文系でも 原子炉と核兵器の相違点、エネルギーの正体、核兵器の原理を理解できる良書
環境や安全性への不安から 国際社会だけでなく日本の世論も脱原発や核不拡散の流れにあると思うが
物理学的な原理だけを知ると エネルギー技術としての魅力はある。
この本を読む限り、民事利用の原子炉と 軍事利用の核兵器(原子爆弾)の原理は同じ。
核兵器を持たずとも、原子炉を持ち、原子炉の臨界点管理について 豊富な技術と経験を持っている日本は 原子爆弾を持っているに等しいように感じる。
潜在的核保有としての外交的脅威はあると思う。
開発と商業化の途中にあるニュートリノに期待するより、原子力の暴発を防ぎ、暴発を止める技術はこれ以上進まないものかとも思う。原子より小さいニュートリノを使って 破壊できないのだろうか?
強大なエネルギーの正体、核分裂や核融合といった核兵器の原理は 原子の構造がわかれば 単純だった
*エネルギーの正体=陽子と中性子をくっつけている 原子核の「強い力」と電磁力の結合エネルギー
*核分裂=大きくなりすぎた原子核を分裂したもの。核融合=小さな原子核が合体したもの
原子爆弾と水爆の違い
*原子爆弾=核分裂させる核兵器〜 高濃縮ウランを燃料とすることにより、一瞬で超臨界状態をつくる
*水爆=核融合させる核兵器〜超高温プラズマ状態を作り融合させる。核融合の方が手間がかかるため、核兵器や原子炉は核分裂型が主流
原子の構造
*原子核は中性子と陽子の組合せでできている
*陽子と中性子を結合させる力と陽子の電磁力のバランスがとれていなければ原子核として安定しない
*原子核の「強い力」〜電磁力より強い力を意味〜陽子と中性子を繋ぐ力
*電磁力は陽子にしか働かない反発力〜強い力は陽子、中性子とも働く繋ぐ力
*強い力は、少し離れると強くなり、近すぎると弱くなり、離れすぎると働かなくなる
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核分裂反応と核融合反応の仕組み、制御の仕方、チェルノブイリや福島の事故の違いなど、どの説明もとても分かりやすく、テンポがいい。
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「ミリタリーテクノロジー」とのタイトルに惹かれて購入。
「本書は、特に有名で、よく耳にする技術ではあるものの、誤解されたまま、あるいは十分に理解されないまま、世に広まった軍事技術について、純粋に物理学の観点から解説を行うものです。」(まえがき)とあり、まさしくこれを求めていた!という感じの内容と心弾ませつつ読んだものの、、、、すすめどすすめど「核兵器」の話ばかり。
そりゃ物理学とタイトルにあるのだから、サイバー戦争とか期待していたわけではない。
それでも、ミサイル防衛とかレーザー光線とかそれくらいはあるだろうと思っていたのだが、まったくなし。
ミチオ・カク著「サイエンス・インポッシブル」のミリタリー版的なものを期待していただけに、ちょっと肩透かされた感じでかなり残念。 -
核兵器の原理を解説している。
著者のこと全く知らなかったのだが、画像を見て愕然としてしまった。金髪のロン毛。全く似合ってない。 -
核物理学の精髄である核兵器の原理を噛み砕いて、説明。原子力発電、IAEAなどについての知識も得られた。本当に無知だった。
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最後の章の「核兵器」にまで展開する話の進め方が秀逸だ.連鎖反応を制御する減速材や冷却材の所はよく理解できた.重水と軽水の話は良かった.長崎に投下されたインプロージョン型の原子爆弾の説明は,現役時代の仕事で一部の部品に馴染みがあり,楽しく読めた.このような知識は常識として持つべきで,知ろうとしない輩がとんちんかんな議論をしている場面が多々見られるのは,嘆かわしいことだ.
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理系音痴にもわかる物理学による核兵器の解説書、おおむね解りやすいという書評が多いが、どうしてどうして凡人には結構ハイレベル、それでも読書前より少しは理解力が高まって夷るような気になれる本。
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最高の内容。とても判りやすい。