- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781690001
作品紹介・あらすじ
いまの日本は、福沢諭吉の「鼻毛抜き」から始まった?私たちの足元を考えるうえで不可欠の、近・現代史をわかりやすく。
感想・レビュー・書評
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この人は本来、長編の人だ。その人が中学生にも分かるように四苦八苦しながら明治から昭和にかけての日本の『問題』を提示するのは、たいへんだったに違いない。
結果みごとな問題提起が出来たと思う。
中学生の皆さんに提案があります。
夏休みが終わったら、文化祭の準備に入ると思いますが、社会研究サークル辺りがぜひともこの問題提起に取り組んだらどうだろう。この本をたたき台にして、集団討議して、わかったところ、わからなかったところを整理し、疑問を親や教師や大人にぶつけて、文化祭で発表したらどうだろう。きっといい発表が出来るはずだ。
福沢諭吉『学問のすすめ』は『人は平等だ』といったわけではないの?
学歴社会ってこんな風に出来たのか
憲法は『押し付け』なのか否か
日本はアメリカの<家来>になったのかなあ
韓国が今ごろ賠償請求するって、どうよ
自衛隊海外派遣は必要なの?
全部あと6~7年もすれば、中学生が責任もって判断しなくちゃいけないことばかり。おじさんは文化祭のテーマにふさわしいと思うけどなあ。新聞社に手紙を書けば、取材に来てくれるかもしれないよ。あっ、もちろん先生と相談してからだけどね。
巻末に『谷川俊太郎さんからの四つの質問』というのがあります。小熊さんの答えはそこで見てもらうとして、おじさん、この四つの質問には唸りました。
『何がいちばん大切ですか?』
『誰がいちばん好きですか?』
『何がいちばんいやですか?』
『死んだらどこへ行きますか?』
このシリーズ、全ての作者にこの質問がぶつけられているらしいのですが、みんなそのときの気持を書いていて、決して将来への約束ではないというところが味噌です。でも、真剣に答えてみると、自分がこれからどんな人になって生きたいのか、見えてくるから不思議です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書では、漢字にふりがなをふっている。平易な文章で書かれているが、内容自体は、子供向けというわけでもない。誰向けに書かれているのだろうか?中学生とか高校生、あるいは、日本語の特に漢字が苦手な在日外国人等だろうか?
本書が書かれた意図は、最初に述べられている。
■日本という国のこと、そのしくみや歴史を知り、いまの状態がどうやってできてきたかを理解すること。
■そのために、「日本という国」の歩みを簡単にふりかえること。
■ただ歴史の教科書のように全てを扱うことは出来ないので、「明治時代のこと」と「第二次大戦後のこと」を選択し、それについて述べる。
明治時代は、日本が近代化を始めた時代である。欧米列強が帝国主義的な領土拡張にはしり、アジア諸国も植民地化していった時代。そのような中、日本は、欧米と肩を並べること、すなわち、同じく帝国主義的な国になることを選択した。そのために、教育に力をいれ、軍隊を強くし、近代的な(帝国主義的な)国家をつくろうとした。そういったことが、福沢諭吉の言説を中心に解説されている。
そうやって、アジア各国に侵略していった日本は、太平洋戦争をおこし、そして敗戦を迎える。その後、アメリカを中心とした連合国の駐留を受け、サンフランシスコ講和条約を結び、日米安保条約を結び、米軍の駐留を受け入れ、戦争放棄の憲法を持つ一方で自衛隊を保有することとなる。それらは、基本的に冷戦時代の米国の世界戦略に沿ったものであった。
ところが、東西冷戦が終わり世界の構造が変わった中でも、冷戦時代のスキームを維持しているのは、時代に合わなくなってきつつあるのではないかと問題提起をし、最後に今後の日本がとるべき道を三つの選択肢を示しながら述べている(「このままいく」「日米安保条約を継続しつつも、時代に合った形に変えていく」「思い切って全部を見直す」という三つの選択肢)。
小熊英二は、さすが社会学者であり、世の中の構造を、本当に分かりやすく分析し、示してくれる。本書も同じ。 -
最近、スタディツアーで学生と海外に一緒にでかけていて思うのは、日本の近現代史(明治以降)をほとんどまともに知らない学生が多いなぁ…と言うこと。
カンボジアの内戦と言っても太平洋戦争時に日本が南部仏印に進駐していたことやその理由を知らなかったり、その後の東西冷戦構造の基本知識がないと、社会構造の理解をできないのではないかと思う。
自虐史観的論調が強くなってきたけど、この本は受験勉強で近現代史をきちんと勉強してこなかった大学生には是非とも読んで欲しい。
橋下徹とかはこの本の内容、嫌だろうなぁ…笑。 -
現在の日本の基礎はどこで出来たか、というのを『明治』と『戦後』に求めて、そこを振り返ることで今の日本を考えようという内容。「歴史を学ぶことの意義」についても意識させられる。
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こ、これは!中学生向けらしいが大人でもイケる。戦後70年の節目にあたり、なぜ日本が同じ敗戦国のドイツとこうまで違った道を歩んでしまったのかを考えるのに貴重な1冊。
学校で習わない近代史は、こういう本を読んで学ぶのだ。
差別主義者の福沢諭吉先生が恐れていた「貧にして智ある者」を日本に増やすためにもね! -
小熊英二さんの「社会を変えるには」が面白かったので、何かまた読みたいな、と思っていました。だけど、どれもこれもあまりに分厚いのでちょっとなあ、と思っていたところで見つけた本。
中学生くらいに向けて語りかける感じで、明治以降の日本史を非常にざっくり語っている。ルビも降っていて、読みやすさが前面に出ている。で、まあ、要は簡明に走り抜けている訳で、当然ながら荒いところとか物凄い省略とかあるんだけど、それでもって総花的ではなくできてるのは、作者に言いたいことというか、伝えたいことがちゃんとあるからでしょう。僕は好きです。
近代国家としての成り立ちから、戦争とか対外関係が一応軸になっていたと思います。それらが全て日米安保とか沖縄とか自衛隊とか、アメリカとの関係とか、今現在の我々の暮らしというか、我々の税金の使われ方というか、というところに繋がっているんですよ、ということ。この本が書かれたとき以降、今の方が、9条とか軍事とかっていうのはなまなましいので、できることなら万人にこれも読んでもらいたい本ですね。
テレビは、所詮ムードしか伝えないので。すべてのことに、少なくとも大事なことには、「なんで?」と、「誰がそれで得をするのか損をするのか」と、「以前はどうだったの?」と「他の人や国ではどうなってるの?」と、いう疑問を2重にも3重にも重ねていくことが大事だと思います。なんで9条を変えたいのか。変えると、日本が軍隊持てると、誰が得するのか。
考えるきっかけになるのかも知れませんね。
今は世間全般的に(政権から)右なので、まあ右というか、田舎町のヤンキー的な視野狭窄な保守お祭り景気回復至上主義ムードな気がするので(笑)、そういうムードから言うと、こういう本は左翼的と言われることになるんだろうなと思います。でも別に極めて冷静な歴史学習と考察に基づく意見の本だと思います。
良かったら、大人も若者も皆様どうぞ。中学生向きで書かれていますが、コレ読んで「こんなの全部当たり前に知ってるよ。ガキ向きじゃん」と言える大人は100人に1人もいないと思いますので(笑)。 -
恥ずかしながら戦後史を、ちゃんと興味を持って勉強したことがなかったので、初めて知ったことがたくさんあった。
日米関係、靖国参拝問題、歴史認識、憲法改正、自衛隊…等々のニュースや、選挙の時、各国首相の発言を聞く際など、この本で読んだことが、自分なりの考えを持つための指針となってくれそうだ。 -
学生の頃に読んだ本。増補改訂版は今回が初めて。
(超絶余談だが、当時読んだ増補改訂版ではない本は、友人に貸したまま借りパクされてしまった。)
最近なんとなく政治に関心が高くなり、近代の日本の歴史を確認したくなり久しぶりに読んだ。
結構知らなかったことが多く、とても勉強になった。
現代の政治を考えるにしても、このように歴史的文脈をたどることは、近視眼的な思考を脱却しよりメタな次元で考慮するために重要となってくる。そういう意味で、今回この本を読むことができて良かった。 -
"よりみちパン!セ"のシリーズは良書が多かったので復活は嬉しい。
本書もその新装パン!セの一冊。ジュニア向けなので平易な文章で書かれているが、内容はとても読み応えあり。なぜ学ぶのか、日本の今に至るまでの道とその理由について、など、深く掘り下げようとすれば何冊も本が書けてしまうだろうテーマだろうが、丁寧に入口を示してくれているので決して内容は薄くない(単に広く浅く社会的なテーマをサラリと扱いました的なものとは一線を画す)。
今読むべき本のひとつだと思う。若い人はもちろん、いいオトナにとっても。