木をかこう (至光社国際版絵本)

  • 至光社
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本棚登録 : 915
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (85ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783401322

作品紹介・あらすじ

イタリアが生んだ世界的デザイナー・ムナーリによる木の描き方の本。いくつかの原則を基にユーモアをまじえて展開。新しいものの見方に気づかせてくれる。

感想・レビュー・書評

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  • 人間とサルとの違いを示すキーワードは何か?私は「抽象化」だと思っている。
    たとえばサルは、バナナという抽象概念として理解していない。
    えっ、「チンパンジーはバナナだってちゃんとわかっているんじゃないの?」だって?
    それは一部正しくて一部誤っている。チンパンジーはバナナという概念で抽象化しているのではなく、「少し反り返った形をした、黄色い皮をむくと中に白い果実があって、それを食べるとおいしい食べ物」というように理解している。
    その証拠に、人間にバナナを描いた絵を見せれば、赤ちゃんを除いて誰でもその絵がバナナだと理解できる。でもチンパンジーは食べ物ではない絵を、本物のバナナと同じものとして一致させることができない。つまりチンパンジーはAndy Warhol が描いたVelvet Underground & Nicoのジャケットを見ても食欲はわかないし「あっ、そろそろバナナを食べたいな」とも思いつかない。
    https://booklog.jp/item/1/B07BZBCWWW

    この本で私がすごく興味深かったのは、木の枝の形態をうまく抽象化していたこと。

    木の枝の抽象化自体は、レオナルド・ダ・ビンチのスケッチがヒントになっている。
    ムナーリはレオナルドのスケッチと、自分の目に映った枝が茂る木のシルエットとを繋ぎ合わせ、次の規則性を再確認した。
    -根元付近の幹の太さを1とすると、2つに枝分かれする場合、枝の太さはそれぞれ1/2になる。さらにその先で2つの枝に分かれば、太さはまた1/2ずつになるので元の幹の太さの1/4になる…という規則が当てはまるのではないか?-
    「枝を、たてにして、みんなくっつけると、一本の柱のようになります。
    幹が、1本の柱とすると、それが、やがて、2本になり、4本になります。
    でも、どの枝の部分も、集めたときのふとさは、もとの幹のふとさと、おなじになるのではないでしょうか。」(P63)

    レオナルドが木の枝のフォルムの数的な規則性を見出し、それを受けてムナーリがデザイナーとしてビジュアル化し、子どもにもわかりやすいように解説してくれた。
    言われてみればなるほどと思える。だけどたいていの人は個々バラバラの木の形に意識が集中し、規則にまで思いは至らない。
    この本では、子どもが読めるようにやさしい文章で書かれているので「へえ、そうなんだ」と容易に受け入れそうになるが、サルから人間への進化の一環である抽象化の過程が描かれているようで、とても興味深く読めた。

    それともう1点興味深かったのは、最終ページにムナーリが日本語版に寄せたとする一文にある「ムナーリは、まじめに芸術と取り組まないで、遊んでいる」と批評家に言われる、というくだり。
    でもこの本では実に巧妙かつ大胆に、木の枝の抽象化に成功していると私は思っている。まさに凡人にはできない天才の仕事。つまり、人間(=ホモ・サピエンス)とは、究極的には「ホモ・ルーデンス(=遊ぶ人)」であり、遊びとは人間をより進化させるファクターなのだと改めて気づかされた。

  • 【イタリア絵本まつり】

    もともとブルーノ・ムナーリを手に取ったのは、須賀敦子が翻訳していることに気づいたからだった。須賀敦子翻訳の絵本があったなんて!

    本書はその題名の通り、「木をかく」コツを解説し、深掘りする内容。
    法則はいたって簡単で、「枝は、幹から遠くなるほど、だんだん細くなる。」
    この一つの題材で、83ページ。
    ユーモラスで多角的な発想力が天才的と言われるムナーリがどう料理して話を展開するのか、ぜひ見てみてください!

  • 絵を描くのが苦手な子どもと一緒に読んだ。
    結果、「スケッチしに外に行こうよ!」。
    素敵な本でした。

  • 分類は絵本なんだけども、それ以上。

    カタチはノウハウなんだけども、詩として味わおう。

    この本、実は深い!

  • 絵をかくという単純な楽しさを思い出させてくれる



    ちょっと、木をかいてみませんか

    絵が下手だとかそんなこと関係ありません、めんどくさいとか言わずにほんの数秒でかけちゃいますから


    根をかいて、幹をかいて、枝をかいて、葉っぱをかいて、ついでに花も

    もちろん、どんな順番で、どんな木をかこうとも自由です

    下手だとか言う人もおりません。

    一本かくだけで、自分の中のアートな気持ちがくすぐられると思います。

    もっと表現してみようかな

    そんな入口にまで連れて行ってくれる本です。

  • なんとなく、木の持つ性質、同じ原理から必然的に種々の類型が派生してくる様子は建築の歴史上の変形、または設計中の変形の感覚に似ている。特に、シザの建築に感じた感覚を思い出した。全く違うように見えるものも、根源を同じくする兄弟であるような感覚。「根源」にはもっと大きな何かが見える。

    絵本にしてはとても知的な性格が強いもので、子供が楽しめるかは疑問。

  • イタリアのデザイナー、ブルーノ・ムナーリ(1907-1998)による、
    分かりやすくて可愛らしい、木の描き方の絵本。

    枝別れの法則など、「なるほど~」と思う。
    木を観察するのが楽しくなります。

  • 読むと木が描きたくなるかも

  • 絵本作家のブルーノ・ムナーリさんによる、木の描き方。絵本のようだが、幾何学的な説明もあり、妙に納得。みんなで木を描くワークショップやっても面白いかも。植物、面白いなあ。

  • 自由の形のひとつ。

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著者プロフィール

ブルーノ・ムナーリ(BrunoMunari)
1907年ミラノ生まれ。イタリアの前衛美術活動「未来派」に共鳴し、造形作品の発表をはじめる。1930年代よりグラフィックデザイナー、アートディレクターとして本の編集や装丁を手がけ、戦後ダネーゼ社をはじめとするプロダクトデザインの仕事も多数。1954年、55年、79年にコンパッソドーロ賞を受賞。子どものための実験的な絵本やワークショップによっても世界に知られ、1974年、84年に国際アンデルセン賞を受賞。60年代以降、ハーバード大学で視覚表現によるコミュニケーションについて講義を行うなど、新しい時代のためのデザイン教育に尽力。1998年の没後なお、創造の本質に迫る教育の普及に貢献し続けている。

「2018年 『点と線のひみつ ブルーノ・ムナーリのデザイン教本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブルーノ・ムナーリの作品

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