精神の生態学 改訂第2版

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  • Amazon.co.jp ・本 (706ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783511755

作品紹介・あらすじ

文化とは?性格とは?病気とは?情報とは?進化とは?意識とは?文明とは?環境とは?芸術とは?神聖とは?物象科学の思考を捨て、関係性を問いつめ、マインドの科学を築いていった巨人ベイトソンの全軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 思考の辞書と言ったかんじ。部分的に読んだ。
    二項対立の解消法は異化?不快を避けるのではなく、極めてみる。自分の中にこびりついているあらゆる二項対立に目を向ける事ができる。
    精神分裂症やアルコール依存症の原理に関する理性的理解を深める事ができる。
    ダブルバインドが場合によっては創造性を高める事に繋がるということはマレーゲルマンも言っていたけど、裏付けは薄めかなとおもった。
    ”目的を達成する一番の方法は目的を捨てることだ。”
    ”「われわれが生きるこの世界はいったいどんな世界なのか”という純粋な知の衝動に導かれていれば、それでよい。”

  • 読み応えあり

  • 〈メタローグ〉
    メタメッセージ。内容だけでなくコンテキスト自体がメッセージを送っている。一元論的理解

    〈文化と型式〉
    分裂生成。対極の要素を選ぶような(場合分けをするような)二元論で文化を理解するのではなく、その二つを一つのセットと見なす。そのなかで要素と全体が表しているメッセージ、コミュニケーションがある。

    〈関係と病理〉
    第二次コミュニケーション形成(メタ認識)がない限り第一次コミュニケーションも成立しない。
    そのようなメタの視点に立てず、反論できなくなる状態がダブルバインドであり精神分裂へと繋がる。
    学習とはコミュニケーションの積み重ねであり(階型論)、コミュニケーションがメタ化していく過程で全体のシステムとしてのコミュニケーションを理解する。
    対称性、相補性のうち、対称性が物事のエスカレートへと繋がる。物事の認識は、コミュニケーションのサブゲームシステムがあり、それを包括するシステムがあるというような認識が必要。

    〈情報と進化〉
    体細胞の変化が遺伝子の進化へと繋がる。つまり小さな情報変化が進化を生み出す。
    個体発生の対称性異常も情報のシステムの問題。

    〈生命と認識〉
    認識は自己を超えて、生態のシステムのなかすべてで適用する。二元論から一元論への収束。システムのなかでサイバネティクス的に意味が決まる。

    〈文明と健康〉
    文明もシステムの進化とともに成熟する。ヴェルサイユ条約はダブルバインドを生み出し負のスパイラルをドイツに課した。
    環境破壊も生態システム(人口、エネルギー、思考様式)が歯止めのきかないループに陥ることで深刻化する。対称性を持つループをいかに相補的に打ち消す逆の動きを取り入れるかが重要になる。

    〈総括〉
    精神を高い次元に持っていくためのステップをベイトソンは強調している。高い次元に到達するということはメタ学習、メタコミュニケーションの認識を行うということだ。メタ化することで第一次学習も理解できる。むしろメタ化しない限り第一次学習を理解することはできない。メタ化はシステム全体(サイバネティクス、コンテキスト)を包括する方向に向かう。システムが一方向に加熱しすぎないように相補的な動きが必要。
    二元論から一元論といった哲学的な議論から、生態学、心理学、経済学まで含めた包括的な議論であるため荘重さを増している。

  • 必読書・・らしい
    おもしろいけどおもしろいけど

  • 6825円購入2009-11-10

  • 物事をどのように精密に考察するか、そしてその際に何を確かな根拠として考察を作り上げていくかという点において、自分などには到底遠く及ばない遥かな高みを見せられた気がした。

  • ”多大の成果を期待して、形なく名状しがたい「希望」を抱きつづけるという行き方がありうると思う。その成果が何かということは、曖昧なままでいい。それが何かは分からないまま、いつも成果が間近い事を確信していること。実際に間近いかどうか、そもそも検証できないことなのだから。” #精神の生態学

  • ・学生はきちんと出席し、授業に強い関心を示したが、毎回授業が三回か四回すすんだところで、きまって質問が上がってくるのだった。「この授業はいったい何なんですか?」
    わたしとしてもいろいろな答を試みた。あるときは、学期末にはこういう問いに答えられるようになっているようにといって、まるで教理問答集のような質問のサンプルを学生たちに手渡した。
    「サクラメントとは何か」、「エントロピーとは何か」、「あそびとは何か」―といった問いを盛り込んだものである。
    教育戦略として、これは失敗だった。クラス全員だまりこんでしまったのである。しかしそんななかでも、役に立った問いはある。

    幼い子供がホウレンソウを食べるたびに、ごほうびとしてアイスクリームを与える母親がいる。この子がa―ホウレンソウを好きになるか嫌いになるか、b―アイスクリームを好きになるか嫌いになるか、c―母親が好きになるか嫌いになるか、を知るには、ほかにどんな情報が必要か。

    この問いとたくさんの種類の討議に、授業の一回か二回ぶんを費やすなかで、この種の問題に必要なのは、母親と子供の行動のコンテクストについての情報にかぎられる、ということがハッキリと理解されてきた。この「コンテテクスト」の現象、そしてそれと密接に関連する「意味」の現象の有無が、いわゆる「ハード・サイエンス」と、わたしが目指していた科学との境界を画するものなのである。

    ・娘 そのいろんな種類の点数を最後に足していけばいいのね。
    父 足したらだめさ。掛けるとか割るとかなら、意味があるかもしれんが、足すのは絶対だめだ。
    娘 どうして?
    父 どうしてって、足せないんだよ。分からないか?ふむ。これじゃ算数も嫌いになるだよ。そういう一番大事なところを教わってないんだったら、

    いいかい、「オレンジ2つ」と「2マイル」とでは、同じ「2」でも違うだろう?頭の中で「2」という観念が出来るところは同じだが、その種類が違うんだ。種類の違うものは足せないよ。

    ・娘 学習する方は本能的なのね?
    父 そういうことになるね。学習する能力を学習で身につけなければならないんだったら別だが。

    ・科学者というのはいつも、世界が単純にできていると考えたがるんだな。そしてその期待は、決まって裏切られる。

    ・思考が無限を悪魔に変えた。
    恵み深きを、むさぼる炎に変えた。
    そのさまに人はおののき、夜の森に逃げてかくれた。
    永遠の森はそのとき裂けた。
    そしてあまたの地の球となって、宙を巡った。
    巡る宙は海となり、すべてを呑んだ。
    跡に肉の壁が残った。
    そこに悪魔の宮殿が建った。
    有限の回転にぐるり縛られた有限の姿が立った。
    そして人は天使になった。
    天は巡る円となった。
    神は冠をかぶり、冷徹な君主となった。
    ―ウィリアム・ブレイク

    ・娘 「あなたは豚のようだ」が直喩で、「あなたは豚だ」が隠喩。
    父 ほぼ正解だ。隠喩に「これは隠喩だ」という表示がつくと、それは直喩になる。
    娘 夢にはそういう表示がないのね?
    父 その通り。
    何に喩えているかは示さずに喩える。Aについて言えることを、Aの名前を出さずに、Bに当てはめる。「国が腐敗する」と言うだろ?その国に起こった変化を、バクテリアが引き起こす果物の変化に喩えているわけなんだが、隠喩ではバクテリアのことも果物のことも、表には出てこない。
    娘 夢も同じ?
    父 逆なんだ。夢は果物の方を見せておいて―バクテリアまで見せるかも知れないが―国は出さない。夢は関係を取り上げてそれを練っていく。その関係が何と何の関係なのかということは取り上げないんだ。

  •  専門的な部分はよく分からなかった。じっくり読んでいると普段は開けない頭の隅っこの引き出しを覗くみたいにして、よい刺激を受けて読書中の考えごとが捗る。反面、読み進む速度は遅くなった。しかしそれぞれの論考は短いものであるので、またやる気がでたら気軽に読み返してみたい。

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