鮎川信夫詩集〈現代詩文庫〉

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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783707080

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  • 詩が、戦争で死んだ人たちに捧げるためや、死んだ人たちに取り残された人たちの慰めのためにあるとは思わないけど、

    純粋な詩でなく、あくまでも孤独な個人の生活に立脚した詩としてこれを読んだ時に、やるせなさとか弔いとか言う言葉じゃ接近しきれない何かにせまれるのは確かだし、その"何か"が生の実感であり詩にしか作り出せないものだと思う


    .

    誰も聞いていない。
    この喧騒の大都会の
    背すじを走る黒い運河の呻きをー
    あなたは聞いた。
    氷と霧と蒸気と熱湯の地獄の苛責に
    厚くまくれた歯のない唇をひらき
    溺死人が声もなく天にむかって叫ぶのを...
    「今日も太陽が輝いているね
    電車が走っているね
    煙突が煙を吐いているね
    犬は犬の中で眠っているね
    やがて星がきらめきはじめるね
    だけどみんな<生きよ>と言いはしなかったね」

  • 最後の春休みは鮎川信夫のことをよく考えていた。二月にこの詩集を読み始めた時に、アメリカという詩でとても惹きこまれた。荒地派という言葉と共に以前から聞いていた名前ではあったけれど、ここまでかと驚いた。
    詩のことを、知りたい。社会人になる直前に、自分の中に芽生えたつよい思い。長田弘は彼の詩を〈沈黙〉と〈眼差し〉という構造で書かれたもの、と論をはじめる。鮎川の詩を読み終えてから、詩について知りたいと思った。そうして鮎川の詩論を読んでいくという流れを取れたことが何よりも幸運で、幾つかの詩論が書かれた後半部を、何日もかけて丁寧に読んだ。〈詩〉という言葉で語られる彼の考えを、書く時の態度に置き換えて、胸のうちに収めた。青春期に戦争を経験した文学者たち(年表を見て知ったが、彼は庄野潤三とほぼ同年代らしい)の心を深く知りたい。

  • 噂にたがわず「橋上の人」が凄まじかった。戦争で死んだ者の遺言執行人として、死にそこなった者が残りの生を全うしようとする覚悟。戦後の荒地から新たに芽吹く生命の息吹に希望を託すも、張りぼての似非復興社会に柔軟に迎合する共同体への不信は積もり積もり、だから猶更死者との対話を請け負うことが詩人の使命となる。ここではないどこかへの船出は叶わず、言葉を武器に破壊の街に踏み止まる。現実のありのままの風景と対峙し、言葉で切り裂くことで詩は詩となる。この破壊力を活かす土壌のないこの国の有り様を、嘆かわしく思う。

  • ***備忘録***

    サークル詩のメカニズム=労働組合と同じ

    物理的に食うことが楽
    (生活上破滅する人がいなくなる)

    自己表現をしたがる(孤独を望まず)

    ※自立した言語表現としての詩
    →知識人の心の慰め・・・A
    →内面的な出家遁世・・・A
    →弁証法的発展・・・B

    A=好事象

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