三角みづ紀詩集 (現代詩文庫)

著者 :
  • 思潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783709831

作品紹介・あらすじ

『オウバアキル』の登場は、新たな感性の出現を印象づける鮮烈な言葉の事件だった。ゼロ年代以降の世界に、苛烈に刻みつけられてきた詩群を集成する。

感想・レビュー・書評

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  • 三角みづ紀という詩人のことを知ったのは高校生のときだった.学校の図書館にあった『オウバアキル』という詩集をたまたま見つけて,たまたま手に取った.それまで詩集なんて読んだこともなかったのに.

    オウバアキル.
    そのタイトルの意味を,読み方を,高校生のわたしは知らなかった.ただただ本のなかに綴られた詩に衝撃を受けた.高校生のわたしには強烈な感性だった.

    この本には上記の詩集以降に発表された詩集も収録されているのだけれど,ずっとおなじ感性のままで詩作をされているのかといえば,もちろん違う.
    ときがたつにつれて,ひとは変わる.
    三角さんの詩も,ただ鋭利で薄暗くて冷たくて脆かった印象からすこしずつ,しなやかさややわらかさ,あたたかさ,光のようなものを感じるようになったと個人的におもった.
    オウバアキルのときの衝撃は,いまのわたしには刺激が強すぎてきっと飲み込むことができない.高校生という特殊な年頃だったからこそ惹かれたのだとおもう(これはいまがいい・わるい,とかいう話ではなく).

    いまでもわたしにとって三角みづ紀さんはちょっととくべつな詩人.そのわりに初期の作品しかちゃんと読んでいないので,こんどはまた別の詩集を読んでみようとおもう.

    ちなみにこの本にはエッセイもすこし収録されているのだけど,三角さんのエッセイ,とてもすきだとおもった.

  • 『オウバアキル』や『カナシヤル』など、刊行済の複数の詩集から構成された現代詩文庫版。

    一貫して陰鬱で自傷気味、心に闇を抱えたような病んだ印象は拭えない。男とのやり切れない関係や、とても良好とは言えない母との距離感に独りもがく自分。死はいつでも隣り合わせ。繊細な心の内に秘めた鋭利な刃の向かう先は他人か、はたまた自分か。読んでいる先から、深く深く自分の殻に閉じこもっていく感覚。
    内から湧き出す空虚、喪失、自棄を「詩」というかたちで表現していなかったら、彼女は一体それらを自分のどこに抱えておくつもりだったのだろう。

    読むと心が軽くなったり背筋が伸びるような力強い詩と触れ合ってきた私としては、異質な世界だった。

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著者プロフィール

北海道札幌市在住。一九八一年鹿児島生まれ。大学在学中に現代詩手帖賞、第一詩集で中原中也賞を受賞。第二詩集で南日本文学賞を受賞。執筆の他、朗読活動も精力的に行い、多くの国際詩祭に招聘される。一カ月の間、欧州を旅して執筆した第五詩集『隣人のいない部屋』で萩原朔太郎賞を受賞。代表詩篇は翻訳されアメリカ、メキシコ、フランスをはじめ他国でも紹介されている。二〇二〇年に第八詩集『どこにでもあるケーキ』をナナロク社より刊行。

「2022年 『空気の日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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