コルカタ

著者 :
  • 思潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783731733

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  •  音と音
     重なって 波紋をつくり 幾重にも 遠くまで
     運ばれていく ハコバレテイク
     届くように トドキマスヨウニ
     あのひとに わたしでないひとに
     -『雨と木の葉』より

    小池昌代の詩集である。紀行文のような、、、しかし、そこにあるのは確かに、小池昌代の詩。印度の蒸し暑さの中で、いつも以上に湿り気を含んだ言葉たち。

    始まりの一篇。するするとそこにすい寄せられてゆく。そこにあるもの、それは印度の水が、空気が、食物が、小池昌代という身体に取り込まれ、出てきたもの。

    それは、消化器官をただ単に下ってきたものではない。それは、元々あった分子を置換して生まれたもの。それは例えば、ギュウギュウ詰めの長椅子割り込んできた他人の身体が、回りの身体と触れ合って生じる居心地の悪さがなくなるまで、バランスを探して吐き出されるエネルギー。異物がすっかり輪郭を失ってしまう直前のあいまいさ。そこに潜んでいる大きな圧力の存在。この始まりにあるもの、それに魅せられる。

    しかしその気配は、輪郭を失って不思議と逆にどこまでもどこまでも広がっていく、その気配は、この一篇にしか、感じない。あとに続く詩篇たちは、もっと輪郭のはっきりした異物。それを懸命に飲み込み、消化してしまおうとする詩人の身体が、ギシギシと悲鳴をあげる。頭は、混乱した思いにからめ捕られている。思いは、辛うじて詩人の身体が果たさなければならない一つの歩みに、すがることで生き残る。

    ああ、でもここには「動」が詰まっている。切り取っても切り取っても、フレームに収まり切らない何か、と、収めようとする詩人の身体の葛藤がある。新しい、小池昌代。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99243100

  • 昌代さん独特のぞわっとする高揚感が感じられた。

  • ことばの魅力を浮遊するように味わえる一冊。
    意味も理由も感情も、響きで教えてくれる。
    詩の魅力はそういうところだと思う。

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著者プロフィール

小池 昌代(こいけ まさよ)
詩人、小説家。
1959年東京都江東区生まれ。
津田塾大学国際関係学科卒業。
詩集に『永遠に来ないバス』(現代詩花椿賞)、『もっとも官能的な部屋』(高見順賞)、『夜明け前十分』、『ババ、バサラ、サラバ』(小野十三郎賞)、『コルカタ』(萩原朔太郎賞)、『野笑 Noemi』、『赤牛と質量』など。
小説集に『感光生活』、『裁縫師』、『タタド』(表題作で川端康成文学賞)、『ことば汁』、『怪訝山』、『黒蜜』、『弦と響』、『自虐蒲団』、『悪事』、『厩橋』、『たまもの』(泉鏡花文学賞)、『幼年 水の町』、『影を歩く』、『かきがら』など。
エッセイ集に『屋上への誘惑』(講談社エッセイ賞)、『産屋』、『井戸の底に落ちた星』、『詩についての小さなスケッチ』、『黒雲の下で卵をあたためる』など。
絵本に『あの子 THAT BOY』など。
編者として詩のアンソロジー『通勤電車でよむ詩集』、『おめでとう』、『恋愛詩集』など。
『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02』「百人一首」の現代語訳と解説、『ときめき百人一首』なども。

「2023年 『くたかけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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