宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン

  • 社会評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784784519019

作品紹介・あらすじ

1977年、宇宙戦艦ヤマトは一気に社会現象になった。アニメ・サブカルチャー文化/資本の成立を刻印したその作品世界を詳細に分析し、この時代の社会・文化思潮と重ねて論じる。宇宙戦艦ヤマト=70年代文化批評。

感想・レビュー・書評

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  • 「表現の不自由展」の問題等で民主主義の側に立っていると思われている著者ではあるが、本書の限りに於いては民主主義の側では無く、戦争推進勢力に見える。

    「宇宙戦艦ヤマト」を芸術作品であると持ち上げている本書であるが、ついでに同じ様な好戦的タカ派アニメの「機動戦士ガンダム」まで芸術作品として持ち上げているのである。

    アニメーション映画は劇場版やテレビアニメ等の「商業アニメ」と広島国際アニメーションフェスティバルで取り上げられるような「芸術アニメ」の二つに大まかに分けられる。

    「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」はその流通形態から言っても、内容から言っても前者である。
    とても芸術作品とは思えない出来であり、そればかりか「戦争は格好よいぞ」「15歳の君にも戦えるぞ」と戦争を賛美し、戦争への批判力を当時の子供達(=今の有権者)から奪う役割を果たしていたのである。

    こうした「好戦的タカ派アニメ」に漫画等も含めた「好戦的タカ派サブカルチャー」は
    戦前は「のらくろ」「桃太郎海の神兵」等は少年兵獲得の為に作られた。特に「桃太郎海の神兵」は露骨に軍部の予算で作られたのである。

    戦後は1964年の「ゼロ戦はやと」にはじまり、少し間を置いて(その間「のらくろ」もテレビアニメ化されたが)「宇宙戦艦ヤマト」以降「機動戦士ガンダム」「超時空要塞マクロス」・・・「鬼滅の刃」まで作り続けられているのである。
    特に「宇宙戦艦ヤマト」は続編で自爆した筈なのに更に続編が作り続けられると言う滑稽さである。

    これ等「好戦的タカ派アニメ」は何を目的に手を変え品を変え執拗に作り続けられているのだろうか。それは青年や子供達=近未来の有権者から戦争への批判力を奪い、日本を再び戦争をする国に引き戻す事を目的にしていると考えられる。
    こんな危険で悪質なアニメを「芸術作品」であると持ち上げる著者は民主主義の側に立っている人物とは到底思えない。

    この様な「好戦的」とか「右傾化」と呼ばれる映画は実写映画でも多いが、それらに系統的に批判を加えた映画評論家が故山田和夫氏であり、その著書「偽りの映像―戦争を描く眼」でも徹底的に「宇宙戦艦ヤマト」に批判を加えている。
    この故山田和夫氏の著書の中で氏は、雑誌か何かで「宇宙戦艦ヤマト」を持ち上げて来る大学生に対して徹底的に反論を加えたと書いている。
    私の想像に過ぎないが、もしかするとこの大学生の慣れの果てが著者ではないのか。

    「偽りの映像―戦争を描く眼」:https://booklog.jp/item/1/B000J73HIQ

  • 宇宙戦艦ヤマトは最初のTV放送から見ていた。同級生たちのほとんどが裏の『猿の軍団』を見ていて、♪猿の軍団~という主題歌を口ずさみながら、月曜の朝、小学校に来たのをうっすらと憶えている。
    70年代という時代の空気とヤマトを並べて分析してみせる手法は興味深い。企画書段階での『宇宙戦艦コスモ』が紆余曲折を経て、ヤマトに落ち着いたこと。途中から松本零士が企画参加して、戦争ものが宇宙の大航海物語になったことも初めて知った事実だった。
    再放送で人気になり、映画で大盛り上がりしたヤマトだが、最初のTVシリーズからのファンであった僕は、『さらば』までは熱狂したものの、一度死んだ登場人物が生き返る大人のご都合主義のシリーズ3作以降、急激に興味を失ってしまった。
    松本零士の描くヒロインの浮世離れした美しさに心奪われたのは、すでに40年近く前だが、3Dのスターシャなら近頃は、錦糸町あたりでも見かけるようになった。マリア・シャラポアとまではいかないが、それなりに美しいウクライナあたりの東欧美人は身近になった。ただし、怪しい色香に誘われて、ついていっても無償の愛は望めそうにないから、見るだけ。鼻をひくつかせて深呼吸するだけ。

  • 正にリアルタイムで本書に書かれている時代に、ヤマトに熱狂した一人として、知らない設定を知って改めて興味を持ったことと、一方的な解説が続く箇所は読み飛ばしてしまった。一作目、二作目の頃はメカ設定集も買って映像にないかなり詳しい話を知っているつもりだったが、それが時代背景や、宮沢賢治に迄遡る話だったとは驚きであった。

  • C0030 ヤマトをネタによくもここまで書けるものです。設定年齢が50代なのに、老人というのはどうなのでしょう。続編への一連のコメントは、死者へ鞭打つようで悲しい物があります。

  • 1977年、宇宙戦艦ヤマトは一気に社会現象になった。アニメ・サブカルチャー文化/資本の成立を刻印したその作品世界を詳細に分析し、この時代の社会・文化思潮と重ねて論じる。宇宙戦艦ヤマト=70年代文化批評。 この手の本に、図版が少ないのは厳しい。文章でうまく表現されているが、デザイン画があると、より具体的に内容がつかめるのだか。権利の問題なのでしょうね。沖田艦長や徳川機関長だけでなく、佐渡先生までも「老人」の仲間入りですか。私、ほぼ同年齢なんですけど。「復活編」までで本書は終わっているが、ぜひ「実写版」についての言及も読んでみたい。

  • ヤマトが生まれた1974年。
    その周辺を知らない私にとっては、待望の一冊でした。

    ヤマトの分析のみ成らず、当時の日本の状況、映画や演劇などの文化との関係性も述べられています。
    文化的土壌の分析は、文化人なら読んでおくべきものかもしれません。

    ヤマト本編は、パート1(1974年)から復活篇(2009年)、SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010年)までもフォローしている本格派!
    隠れた名著です。

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