読書と図書館 (図書館の最前線 4)

著者 :
制作 : 大串 夏身 
  • 青弓社
3.71
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本棚登録 : 25
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787200396

作品紹介・あらすじ

高度情報通信ネットワーク社会では、適切な情報を選んで既存の知識と組み合わせ、新しい知識や知恵を創出する主体が求められている。コンピュータ全盛の現在でも、自身の考え方を養うために読書は最重要である。読書に果たす図書館の役割と可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 2090

    情報を入手するだけでは読み解く能力が身につくわけではないし、情報の集積が自然に知恵やア ィデアを生むわけではない。一人ひとりが情報を読み解き、そこから知恵を生み出せるようになる ための訓練は、読書という行為によらなければならない。 コンピュータによって大量に流通する多様な情報を使いこなさなければならない時代だからこそ、 情報から知恵やアィデアを生み出すための読書がより一層必要になるといえる。

    読書のために図書館を利用することには多くの利点がある。図書館で本を借りると、必ず返しに なくてはならない。このことは欠点と考えられがちである。しかし、返却のために 習慣をもつことは、読書を継続して発展させるのにとても適していて、結果的に自分の読書生活に 、たいていまた何かを借りたくなるだろう。このように定期的に図書館に通い、本 大きな利益となる。

    ある分野について短期間のうちに知識を深めるには、「その分野の新書を五冊前後ざっと読む」 という方法があるといわれている。たしかに一、二冊読んでも内容が偏ってしまうし、かといって 新しい本ばかり選んでも変遷はつかみにくい。そこで、一つのテーマについて、新しい本や古い本、 また、平易な本や難解な本も含めて十冊選んでみると、そのテーマや対象がどんなものなのか、こ 0でどのように考えられてきたのかがおおよそ理解できるようになる。よく整備され。 書館が近くにあれば、こうしたことは容易にできる。さらに、一つの分野から新旧 十冊の本を選ぶこともできる。こうした試みができるのは図書館ならではである。 ところで、図書館は多くの人が共同で利用するために多くの本が集められているが、自分の好み や関心とは異なる分野の本も多く含まれている。このことも捉え方次第で利点になる。アィデアは 脳による情報の編集・総合の過程のなかで生み出されるものと先に述べたが、新しいアイデアは、 自分の仕事や興味とは異なる、いわば自分の専門とは関係ない知識や知恵にふれたときに生まれる ことが多い。これを気軽に実践できるのが図書館である。普段自分が近づかないような分野の書棚 に行ってみて、気になったものを二、三冊借りて読んでみる。こうすることで、自分の思考パター ンとは異なるものの見方や発想が得られることもあるのだ。

    美智子皇后の講演
    読書とは、どのようなものかと考えるとき、次の言葉は説得さ り返ってみると、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。何よりも、そ 9みを与えてくれました。そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を した。それはある時には私に根っこを与え、あるときには翼をくれました。この根っこと翼は、私 が外へ、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなりまし 「読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました。本の中には、さまざま な悲しみが描かれており、私は、自分以外の人がどれほど深くものを感じ、どれだけ多く傷ついて いるかを気づかされたのは、本を読むことによってでした」

  • 雰囲気は論文集のような感じ。
    子供の読書、学校図書館、図書館について興味がある方なら読んでみて損はないと思います。内容が詰まっていて参考文献も多いので、研究や論文を書くならこの本から読むのが良いのでは。

  • 第1章、読書の重要性と図書館、
    第2章、子ども・ヤングアダルトと読書、
    第3章、読書と学校図書館
    第4章、日本出版義産業の構造変化
    第5章、出版社からの発言
    第6章、読書をめぐる図書館と書店
    第7章、読書推進運動の現状と今後について
    第8章、言葉の力と日本の未来

    読書とは何か、読書がなぜ必要なのかなど、学校図書館の現場に居るものとして常に心に留めておかなければならないことを改めて学んだ1冊。仕事上も大変参考になる、図書館情報学の教科書的な本。

  • 読書と図書館・出版産業・書店・読書推進・文字、活字文化推進機構など、現代社会における読書の意味やその推進をすすめる機関や本を提供する側の解説がなされた本。最新の情報で書かれていますし、各分野に詳しい方々が執筆していてためになる本でした。(2008.7.20)

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著者プロフィール

1948年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業後、東京都立中央図書館勤務、特別区協議会調査部、東京都企画審議室調査部をへて、昭和女子大学へ。現在、昭和女子大学名誉教授。著書に『レファレンスと図書館』(皓星社)、『図書館のこれまでとこれから』『挑戦する図書館』『調べるって楽しい!』『これからの図書館・増補版』『図書館の可能性』『文科系学生の情報術』『世界文学をDVD映画で楽しもう!』『DVD映画で楽しむ世界史』(いずれも青弓社)、共著に『図書館概論』(学文社)、『触発する図書館』(青弓社)、編著に『読書と図書館』(青弓社)など。

「2021年 『まちづくりと図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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