苦学と立身と図書館 パブリックライブラリーと近代日本

著者 :
  • 青弓社
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本棚登録 : 189
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787200747

作品紹介・あらすじ

いまでこそ「自習」する場所として活用されているが、公共図書館はいつ・どのようにして勉強・独学の空間になったのか。明治期からの近代化のなかで、勉学の情熱を抱えた青年・女性たちに果たした図書館の役割とは何だったのか。

明治初期の唯一の無料公開図書館である東京書籍館の成立と展開をたどる。そして、音読の禁止を背景にして、弁護士・医師・教員の資格試験の勉強空間として図書館を使う利用者が増えたことを掘り起こす。一方で、図書館での独学を軽んじる社会的な風潮もあり、そういった独学をしていた専門学校や社会人経験を経た大学入学者に対して差別があった事実も指摘する。

加えて、雑誌「成功」から当時の社会的な成功のあり方、独学と立身出世の関係を読み解き、学歴社会への移行も描出する。

これまで正面から取り上げられてこなかった「図書館と勉強」をめぐる独特な文化を掘り下げて、近代日本の風俗や社会的な感性も浮き彫りにする。


目次
序 章 “public library”と日本の図書館
第1章 日本的図書館観の原型
第2章 パブリック・ライブラリーを日本に
第3章 東京遊学と図書館の発見
第4章 読書装置としての貸本屋と図書館
第5章 苦学と立身と図書館
第6章 勉強空間としての図書館の成立

感想・レビュー・書評

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  • 近代化する日本における図書館の変遷が綴られた一冊。
    パブリック・ライブラリーと呼べるものが突如出現した当時、どのような現象が起きたかが解説された研究書です。
    読書装置として、学歴獲得手段として、そして勉強空間となっていくのですね。
    多くの人の生涯学習を可能たらしめる図書館の存在は当たり前となりましたが、これは簡単には作ることができない高度な社会装置であることを再認識しました。

  • 東2法経図・6F開架:016.2A/I89k//K

  • ふむ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/749000

  • 公立図書館には、必ずと言っていいほど「長時間の勉強はお控えください」と席に書いてあるけれど、
    この本を見て叫びたくなる。
    「昔から、勉強している人、いるではないか!!」
    昔とはどれくらいかというと、岩倉使節団の調査の時点ですでに確立していたとのこと。そんな昔から。

    じゃあ、現代の追い出される図書館で勉強する人は、どこに行けばよいのか?(特にこのコロナ禍)
    というのはこれから考え続けようかなと思う。

  • 今年はコロナウイルス感染拡大で様々な方面で影響を受けた。あまり目立たないが図書館もその中に入る。




    緊急事態宣言発令以来、図書館を閉館したり、再開しても事前予約で貸出しする、新聞や雑誌の館内利用中止、閲覧スペースの利用中止などだ。図書館が利用できない間、書店も閉店している状況だったので、営業している書店をネットで検索して、本を買い求めた思い出がある。




    今回の本は、日本における図書館の歴史を振り返った珍しい本なので、思わず手にとって読んでみた。




    近代日本の図書館は、欧米から移入された制度だが、日本にも図書館につながる施設があったとして次の2点を著者は指摘している。藩校などの学校の文庫、そして、貸本屋だ。





    日本初の国立図書館は1872年に書籍館として設立された。その後、1897年帝国図書館になり、1948年に国立国会図書館法の成立によって現在の国立国会図書館になった。




    図書館というと学生や老人が閲覧ルームで利用するイメージがある。実際に行くとよく見かけた。著者は、学生が図書館を利用する起源について図書館の蔵書を利用して勉強する人が増えたからだ。



    1890年代には、上京遊学者向けのガイドブックが出版された。主なものとして、「東京遊学案内」(黒川安治編、少年閣、1891年)があった。この本の明治25年版から、学校案内に加えて遊学者が利用できる図書館の案内も掲載するようになった。遊学者とは時代を感じさせるなあ。



    それと同時に、医師、弁護士、教師などの職業資格試験制度が新設され、図書館に所蔵されていた資料が試験に役立ったので勉強する場所として重宝された。医学書や法律書のみならず、講義録や試験問題集なども1880年代から図書館に所蔵されていた。今に時代だとさすがに大学の過去問などは見かけないので違いを感じる。




    「苦学と立身と図書館」の関係はこれいかにと思ったら、「成功」という雑誌につながりがあった。「成功」は、1902年10月に創刊された。1916年まで、ほぼ月刊で発行されて、1905年には読者数15000人、さらに1908年には発行部数東洋一という広告文を載せていた。さすがに東洋一とは大げさな気がするなあ。この当時、ジャロがあったら問い合わせがあっても不思議ではない。



    家柄にとらわれることなく、試験に合格すれば新たな世界が開けてくる。その世界の舞台に立つのを夢見て、「成り上がりたい」とギラギラした人たちがアクセル全開で参考書片手に突っ走る場所として図書館はありがたい存在だったのだな。



    著者は、学校の制度と共に発達してきた日本の図書館制度について「この入学試験という制度の影響を大きく受けることによって、勉強空間であり受験道場でもあるという、その独自の性格を形成してきたといえる」としている。





    その図書館もコロナウイルス感染拡大で影響を受けて学生が閲覧ルームを利用できなくなっている。コロナ以前からカフェが勉強空間の役割を担ってきている。これから図書館のあり方はどうなっていくのか気になる。

  • 近代公共図書館制度が日本社会のなかでどのように位置づけられてきたかを考察し、近代の公共図書館観を明らかにする図書。近世から大正までの図書館史を見つつ、現在にもつながる図書館観を考えさせる内容だった。

    1880年代あたりの図書館は、個人が入手できないような専門図書の利用を求めて、職業資格試験の受験生が多かった。教育制度が整って、就学率が上がる1900年代になると、受験勉強のための空間利用がいっきに増えてくる。大正期には、全国各地で受験生が図書館を利用するという風潮が広まった。

    図書館が学生の勉強空間として受け入れられて、発展したのであれば、今、現在につてはどう図書館を社会に位置づけるのか考えたい。教育制度に注目しておくのも大事かもなぁと思った。

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著者プロフィール

1965年、福岡県生まれ。九州大学大学院人間環境学府教育システム専攻博士課程単位取得退学。博士(教育学)。山口大学人文学部講師。専攻は図書館学、日本教育史。共著に『読書と図書館』(青弓社)、論文に「明治期の「苦学」の変化の図書館論への影響――雑誌『成功』を中心として」(「図書館文化史研究」第32号)、「学制施行期の書籍館政策について――“free public library”としての東京書籍館の成立をめぐって」(「日本図書館情報学会誌」第59巻第4号)など。

「2020年 『苦学と立身と図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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