図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか
- 青弓社 (2024年12月25日発売)
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感想 : 52件
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784787200884
作品紹介・あらすじ
図書館で働く人、日々利用している人が普段は気にしない、でも聞かれると「どうして?」と思う疑問をピックアップ。その疑問をデータ/事実/エビデンスに基づいて考える視点や道筋を、柔らかな筆致でレクチャーする図書館情報学の入門書。
感想・レビュー・書評
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図書館本 ★3.5
図書館学者・図書館情報学者
という方の存在を初めて知りました
私は読み終わった本を図書館に寄贈することがあるのですが、必ず
「寄贈された後は、図書館の管理になりますから、お返しはできません」と
毎回丁寧に言われる理由がわかりました。
貴重な本だけど、借りる人がいない本は電子化したらいいですよね
それなら寄贈した人も、あとで捨てたられた!!なんて怒らないはず
私の暮らしている市には、とても素敵な図書館があります
私のサードプレイスの一つです
貸し出しはないので、そこで読むだけなのですが
新刊をメインに揃えてあり
落ち着く空間です
最近はなかなか行けてないのですが、近くにあったらいいのに!と思います
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作者の佐藤 翔(さとう しょう)同志社大学教授は、「日本には現在、3292館の図書館があり、所蔵する図書・雑誌などの資料は4億6千万冊以上。日本人の5人に1人は年に1回は図書館で本を借りていて、日本社会で図書館は比較的重要な位置づけにある存在だといえる」と語ります。
なぜ「図書館を「学問」する」姿を本にするのかに答える本書は、幅広い分野にわたって詳細に説明されています。
わたしたち利用者については、第9章に書かれていました。
第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか
1 世の中には七種類の図書館利用者がいる
として、
①貸出中心・都市図書館利用者
年齢・性別等に大きな特徴なし。居住地が政令指定都市あるいは東京特別区
②貸出中心・地方図書館愛好者
平均年齢はやや高め、女性が多め。非都市圏居住者。
③場所としての図書館利用者
やや男性が多め。利用頻度・貸出は少ない。
④子どもの図書館利用同行者
女性が多め、世帯年収がやや高め。家事専業の人が多い。
⑤情報拠点・コミュニティー基盤としての図書館愛好者
年齢高い。男性が多め。高学歴。退職者多い。
⑥消極的図書館利用者
やや女性が多め。高卒・短大卒多め。年収やや低め。無職の割合高め。
⑦非定型利用者
年齢高め。女性が顕著に多い。大卒が少ない。
が挙げられ、分析されています。(詳細は本書でご確認ください)
そして、他には、利用者クラスタ分析のひとつとして、利用者を
①読書家
②たまたま使った
③子どもの付き添い
④意識が高い若者
⑤パワーユーザー
⑥その他
に分けて分析しています。興味深いです。
図書館利用者の分析は、ユーザーサービスの方針や、建物設計・レイアウト、選書などに影響する他、各図書館の個性化にも活かせるのではないでしょうか。
専門的な記述もある本書ですが、利用者が利用しやすい図書館づくりを考えるためにも、わたしたちが図書館の現状と課題について知っておくことは良いことだと思いました。
本書は、以下の構成で書かれています。
はじめに――なぜ「図書館を「学問」する」姿を本にするのか
第1章 図書館の本棚はいっぱいにならないのか
1 捨てて怒られる図書館員あれば、捨てずに怒られる図書館員あり
2 日本の図書館は、年間一千万冊くらい本を捨てている
3 図書館が本でパンクする日はいつくるのか
4 「現代あるいは、近未来除籍論」序論?
第2章 本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか
1 職業研究者の第一歩、「科研費」と私
2 図書“館”の強みは書架とブラウジングである
3 新たな発見を促す本棚=目につく位置に「思いもしない」本がある本棚
4 視線追尾装置、登場!
5 書架は三段目までが七割(もしくは二段目までが八割)
6 今後に向けて
第3章 図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか
1 「書架番号」、じゃまじゃない?
2 VR実験の概要と結果
3 われわれのVR実験はまだ始まったばかりだ!
第4章 なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか
1 ところで本当に月曜日に閉まっているの?
2 月曜日に閉まっているのは、日曜日に開いているからである
3 月曜日休館の妥当性
第5章 図書館を訪れる人は増えているのか、減っているのか
1 大ざっぱにみると――日本全体は二〇一八年に久しぶりに減、都道府県立図書館は微減
2 細かくみると――三分の二の図書館は微減傾向、三分の一は大幅増傾向
第6章 雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか
1 晴耕雨読にあこがれて
2 天候と貸出冊数、ついでに曜日の関係
第7章 どんな図書館がよく使われているのか
1 先行研究――実は一段落した研究?
2 結果その1――三十年を経ても精度は健在
3 結果その2――単純な全国展開は微妙?
4 結果その3――貸出関数が使い物になる地域とならない地域の違いがわからない
第8章 人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか
1 新規登録者ってどんな人?
2 新規登録者はそのまま定着するのか?
第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか
1 世の中には七種類の図書館利用者がいる
2 図書館利用者のクラスタリング――アメリカでの先行事例とNDL情報行動調査への適用
3 俺たちのクラスタリングはまだ始まったばかりだ!
4 終わると思った? もう少しだけ続きます――近年のクラスターの変化
第10章 図書館に税金を使うことは人々にどれくらい認められているのか
1 背景――図書館の「インパクト」をどう測るか
2 インパクト測定の一手法――仮想評価法
3 NDL情報行動調査(二〇二〇年度)での支払い意思額の状況
4 「千円以上払ってもいい」と思う人かどうかを予測する!……のは難しかった
第11章 子どもと行きたいのはどんな図書館か
1 子どもがいる図書館情報学者あるある――案外、自分は子どもを図書館に連れていっていない
2 「子どもの付き添い」で図書館に行く人の特徴
3 子どもがいる人が図書館に行く街/行かない街/行きたくても行けない街
4 子どもの有無と図書館に行った/行かなかった/行きたくても行けなかった
5 自治体の特徴
6 図書館の特徴
第12章 「あなた」はなぜ、図書館に行くのか
1 図書館利用をモデル化したい
2 データと分析手法――NDL情報行動調査のデータをロジスティック回帰にかける
3 結果――囲碁・将棋が趣味の人は図書館を利用する!
第13章 人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか
1 していない「Instagram」について堂々と語る方法
2 「Instagram」×図書館――データ取得篇
3 ハッシュタグ分析――本と図書館にはコーヒーがよく似合う
4 固有名詞分析――いまフォトジェニックな図書館はここだ!
5 画像分析――木のデスク・複数冊・子ども
6 フォトジェニック坂は登り始めたばかり
第14章 図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか
1 何が図書館員の就職戦線を規定するのか
2 就職内定率と司書資格取得者数の推移
3 いまがチャンス!
おわりに -
著者、佐藤翔さんは、本書によると、次のような方です。
---引用開始
1985年、宮城県生まれ。筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了。博士(図書館情報学)。同志社大学免許資格課程センター教授。専攻は図書館情報学。共著に『オープンサイエンスにまつわる論点――変革する学術コミュニケーション』(樹村房)、『改訂3版 情報倫理――ネット時代のソーシャル・リテラシー』(技術評論社)、『司書名鑑――図書館をアップデートする人々』(青弓社)、連載に「かたつむりは電子図書館の夢を見るか LRG編」(「ライブラリー・リソース・ガイド」)など。
---引用終了
で、本書の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。
---引用開始
図書館で働く人、日々利用している人が普段は気にしない、でも聞かれると「どうして?」と思う疑問をピックアップ。その疑問をエビデンスに基づいて考える視点や思考する道筋を、柔らかな筆致でレクチャーする。図書館を学問することの楽しさを伝え、学問することが図書館をより豊かな場にしていくことを指し示す入門書。
---引用終了
市町村あるいは都道府県が運営する、全国の図書館数は3292館。
多いのか少ないのか、よくわからないが、自転車で行ける距離に大きな図書館がある自分はは恵まれている。
そんなことを、不図思う。
それから、本書を刊行した青弓社の本は、初めてのブクログ登録になる。
青弓社という社名の読み方は、「せいきゅうしゃ」。
2025年4月30日の聖教新聞によると、図書館数は、3394館。 -
図書館の意義や役割を、身近な疑問や内部の人々の仕事から
分かり易く解説する。図書館の魅力をも伝える。
・はじめに――なぜ「図書館を「学問」する姿を本にするのか
第1章 図書館の本棚はいっぱいにならないのか
第2章 本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか
第3章 図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか
第4章 なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか
第5章 図書館を訪れる人は増えているのか、減っているのか
第6章 雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか
第7章 どんな図書館がよく使われているのか
第8章 人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか
第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか
第10章 図書館に税金を使うことは
人々にどれくらい認められているのか
第11章 子どもと行きたいのはどんな図書館か
第12章「あなた」はなぜ、 図書館に行くのか
第13章 人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか
第14章 図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか
・おわりに
「図書館を学問する」様子とはどういうものか?
その研究内容は・・・
本の廃棄・除籍は、何を保存するか。何を捨てるか。
人が本棚を見るときの特性からの配架の場所。
書架番号。月曜閉館は日曜開館だから。図書館の来館者数。
気候と曜日と貸出冊数。貸出回数を予測する貸出関数。
新規利用登録者の利用動向。
図書館利用者を7つのクラスターに分けて考える。
支払う税金のうち図書館サービスに使われる金額は?
図書館利用はどんな要因が影響しているのか。
SNSでの#図書館を分析する。図書館への就職について。
かつて学校図書館に図書館司書資格を持って勤務した
私としては、なかなか興味ある内容でした。
全国津々浦々、図書館は千差万別だから、
研究するのは大変だけど、価値があります。
外からだけでなく中からも知らない問いを気づかせてくれるし、
正規図書館員への就職活動は大変だったな~とか、
本の廃棄・除籍はしんどかったよな~とか、
つい過去を思い出してしまいました。
足りないことがあるとすれば、移動図書館の実態と、
図書館でのイベントについて。
中の人たちの試行錯誤と努力の研究も欲しいと思いました。 -
図書館情報学者の佐藤翔さんの「図書館を学問する」読了。
本が好き、図書館も使う。そんな私の気を引くタイトル。「図書館を学問する」。
とはいえ、きっと、図書館あるあるを集めたような本なんだろうなーと思って読んでみたら、
思った以上に「学問」でした!
質で語るのではなく、データに基づいての考察に溢れていました。
もともとは、著者の佐藤翔さんが個人で書いていたブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」が源流。そのブログが雑誌での連載になり、そしてその投稿を元にして書籍にしたというものだとのこと。14の問いに対して、実験・研究を通じて分かったことを、読みやすく話を展開してありました。どの問いにも、バシッとした「結論」まで辿り着けていないのだけれど、研究者が真剣に「図書館」という対象を研究している真摯な姿が見えるのが良かった。
どうやら、想定されている読者というのが、
1. 図書館で働いていたり、仕事として関わっている人
2. 図書館学者、図書館情報学者
3. 特に図書館で働いているわけではないが、図書館とそれを取り巻く業界に興味がある人
というふうに書いてありまして、あれ?私は入ってないな、とも思ったんですが(あはは)、本が好きで、本を読むために図書館を使う、という私にも、興味深く読める本になってました。
いろいろな話があったけれど、私にとって目からウロコがありまして……、それは、図書館が「本を借りるだけの場所ではない」ということ。「図書館の閲覧室で読書・勉強する」という感覚が抜け落ちていたことに気がつきました。学生時代には、大学の図書館でレポートを書いたこともあったけれど、そういえば、大人になって地域の図書館を利用するようになったからか、「閲覧室」の存在を忘れてました!! 落ち着いて本を読む時には、いつも「カフェ」を利用していたんですよね。カフェに行く必要なかったじゃんっ!と!
ということで、思い出させてくれてありがとう、と!
難しい話はわからなかったけど、私にとって大切な本になりました。 -
「図書館の本棚はいっぱいにならないのか」「なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか」「雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか」といった、図書館にまつわる興味深いトピックについて分析・解説した本。一見すると素朴な疑問(と言うよりはユルい質問?)だが、内容はいたって真面目に統計分析が試みられている。近年よく見かける、流行りの一押し図書館紹介のような具体例こそ少ないが(その点を期待すると物足りない)、図書館に携わる(運営側の)視点からも、利用者の視点からも楽しめる。自分としては、自身のこれまでの図書館との関わりや、子どもと利用する際のサービスのあり方などを考える機会になった。
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ブクログで知ってから読むのをずっと楽しみにしていた本。
アカデミックな内容ながら、読みやすい文章で親しみが湧く。
内容も「なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか」「雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか」等取っ付きやすいトピックばかり。
著者の、研究において「とりあえずやってみよう」の精神で調べる姿勢が好きだな。
具体的な表やグラフがあるので、結果を視覚に反映させやすい。
子連れの図書館に求めるもの、という視点が自分にはない発想で面白かった。たしかに図書館だけより周りの施設が充実していたほうが寄りやすい。
肩肘張らずに読める本なので、図書館や本が好きな人なら一読の価値あり。 -
図書館学者による研究を論文にできない筆致で纏めた一冊。
図書館の本棚はいっぱいにならないのか、本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか、図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか、なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか、図書館を訪れる人は増えているのか減っているのか、雨が降ると図書館に来る人は増えるのか減るのか、どんな図書館がよく使われているのか、人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか、図書館を使っているのはどんな人々なのか、図書館に税金を使うことは人々にどれくらい認められているのか、子どもと行きたいのはどんな図書館か、「あなた」はなぜ図書館に行くのか、人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか、図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか、…と盛り沢山の研究記録が収録されています。
論文においては“調べたけどよくわからないので無かったことに”することができませんが本書はそれができるので、著者は腹を割って気持ちよく執筆できているだろうなぁと想像できます。
司書を目指している方、既に司書の方に向けられた良書です。 -
図書館の実情がどうなっているのか。
その疑問に答えてくれる本。
字が細かいけど興味をそそられておもしろく読めた。
図書館でよく本を借りる私。
この本も図書館で借りた。
図書館が毎月本をたくさん買っているのにあふれないのが不思議だった。
インスタのフォトジェニックな図書館。
旅行ついでに行ってみたい。
本には『図書館員は狭き門』とある。
正職員はそうなのかもしれないが、我が街の図書館はかなり頻繁に非正規で募集している。カウンターは研修の名札の人がとても多い。どうなっているのか聞いてみたいけれど、こわくて聞けない。よっぽどブラックなんだろうか。人間関係がドロドロしてるのかと想像してしまう。
本には触れられていなかったけど、自動書庫の仕組みも不思議。いつか見てみたいなあ。 -
データに基づき図書館の疑問を解説。利用者の視線から見る配架の分析やInstagramと図書館の関連性など気になるテーマが多く掲載されています。解析手法は専門的ですが、筆致は柔らかいため読みやすいです。ただ、利用者や図書館職員の声があればもっと面白くなるなと感じました。
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司書資格を取ったところだったので、既存の内容もありつつ、実際の事例もあり良かった
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先日、図書館に関するある疑問を、ある図書館で、ある司書の方にぶつけてみたところ、残念ながら「知らない」と言われてしまいました。
その後、別の図書館に行った際に本書を見つけ、「自分の疑問が解消できるかも」と思い、借りてみました。
結果的には「解決できず」でしたが、図書館に対する理解が深まった一冊でした。
日本の公立の全図書館の延べ床面積は東京ドーム100個分、蔵書は4億冊、貸出数は6億冊/年など、普段考えたことのないことがいろいろと書かれていて、興味深く読めました。
ちなみに、図書館に関する本は、これまで読んだことがありませんでしたが、日本十進分類法だと010.4に分類されるのですね。
それはさておき、本書では、図書館に関するそもそもの疑問は解決しなかったので、次こそ、疑問を解決できそうな010.4の本を探しあてて読んでみたいと思います。-
お待たせしました、本件調べてみました。
まず書かれているのでは、と思っていた森耕一さんの本ではこの指標は扱われていませんでした。
色々調べ...お待たせしました、本件調べてみました。
まず書かれているのでは、と思っていた森耕一さんの本ではこの指標は扱われていませんでした。
色々調べていくと、かつて図書館評価指標に関する国際標準、ISO11620の中には「人口当たり貸出中資料割合」(Document on loan per capita)という指標が設定されていたそうです。
ただ、1998年の制定時にはあったものの、後にこの指標はISOから削除されてしまい、現在は使われないものになっています。
このあたりの話は五十嵐智哉さん(当時筑波大学の大学院生、現在は亜細亜大学で講師をされています)の修士論文で扱われていました。
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/57040/files/201821603_master_thesis.pdf
ただその指標の実際の活用例はなかなか見つからず、上述の五十嵐先生にも直接お尋ねしましたが、修士論文執筆当時、活用事例はあまりなかったとのことでした。
また、ISOの中でも複数の図書館や、異なる主題の資料同士の比較をする際に使うよ、とされている程度で、どのくらいがちょうどいいのか、という話は文書中では示されていなかったそうです。
いろいろ探しているとイギリスで一時、児童の図書館利用に関する統計の中で扱われている時期があったり、一番近いもので10数年前にスリランカで、3つの医学図書館の利用の違いを比較するという研究がありましたが、ここでも貸出中の資料割合を示しているだけで、それが何を意味していてどれくらいが妥当なのかという話はされていませんでした。
https://jula.sljol.info/articles/10.4038/jula.v15i1.3190
五十嵐先生のご見解としては、指標に入れては見たものの利用例はあまりないし、蔵書回転率等の別の指標で代替できてしまうので活用が広がらなかったのではないか、ということでした。
確かに、sugar41さんの問題意識のうち、「借りたい本は貸出中」という点については、利用者が借りたいと思った本が貸出中であるなどの理由で書架になかった件数をサンプル調査によって明らかにするなど、別の指標が提唱されていますし、利用が少ないかどうかについては蔵書回転率(蔵書冊数に対する貸出回数)や、貸出回数0資料の割合など、やはり別の指標が使いうるので、「貸出中図書の割合」という単一の指標でまとめて2つの側面を評価しよう、というのは流行らなかったのかもしれません。
ただそれはそれとして、今まで顧みられてはいなかったとしても何かしらの意味はありそうな指標でもあるので、機会を見つけて心当たりにそういう指標を出してみることに興味はないか聞いてみようかと思います。
もし進捗があればまたコメント欄や、それこそ雑誌本体の方の連載、ひいては本書の続編(かなうのならば!)等で取り上げられればと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。2025/04/09 -
丁寧なお返事ありがとうございます。
そして、多大なお手数をおかけして申し訳ありません…。
自分自身の疑問は直接は解決しませんでしたが、いろい...丁寧なお返事ありがとうございます。
そして、多大なお手数をおかけして申し訳ありません…。
自分自身の疑問は直接は解決しませんでしたが、いろいろな指標の存在を知ることができ、大変参考になりました。
適正な貸出割合については、図書館の規模の妥当性の判断につながるのではないか、と考えており、そこが今回の疑問の発端です。
とくに、公立の図書館については、税金で支えていくことになりますので、その根拠となる指標が存在すべきであり、その指標は市民にとってわかりやすいものであるべき、と考えておりまして、貸出割合は、そういう指標になり得るかも、と考えております。
そういう意味では、貸出割合以外に、税負担の根拠を説明しやすく、かつ、市民にとってわかりやすい指標がわかれば、今回の疑問は解決といえるかも、と思っています。
ちなみに、前回のコメントで書いていただいた森耕一さんの本は、いつも利用している図書館にあることがわかったので、「それを借りれば疑問解決か!」と思っていたのですが、そうとはいかず、残念です。
が、せっかくですので、借りて読んでみたいと思っています。2025/04/09 -
なるほど、図書館の規模の妥当性ですね。
それに関してはもう20年以上も前になってしまいますが、現在は筑波大学にいらっしゃる池内淳先生が、か...なるほど、図書館の規模の妥当性ですね。
それに関してはもう20年以上も前になってしまいますが、現在は筑波大学にいらっしゃる池内淳先生が、かなり網羅的な分析をなさっていました。
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390853719908670976
結論としてはどの指標を採用するかによって最適規模(もっとも効率性の高い規模)は変わるとされていまして、単一の指標での決定は難しい、とされています。
例えば蔵書回転率(蔵書1冊あたり貸出回数)がもっとも高くなるのは所蔵冊数8~16万冊くらいの図書館(小~中規模)だけれども、一方で職員数に目を転じると規模が大きい方が職員一人当たりの貸出冊数は多くなる(職員あたりの効率性は高まる)……といった具合ですね。
なかなか単一の指標でばっちり、というのは出てこないのですが、おっしゃるとおりわかりやすさ・伝わりやすさを考えると「いくつも指標を見るのがいい」とかいうのはわかりにくいのが難点です。
それもあって本書でも取り上げていた、レーダーチャートみたいに、指標としては複数使いつつも評価はぱっと見でわかる、みたいなものの開発が必要かなと考えて、色々やっております。
ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!
2025/04/09
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何かで紹介されていた。図書館のヘビーユーザーなので読んでみた。
大学で図書館学を研究している著者が、学問的に図書館を説明している。
学問として図書館を知りたかった訳ではなく、地元の図書館のヘビーユーザーであり、出先でも図書館があれば行ってみる図書館好きとしては、もっと図書館に対する知識が深まったらいいなあと思ったのだけど、期待していた内容ではなかった。
それにしても1ヶ月も延滞しておいて図書館研究者あるあるとはあきれる。そんな人は図書館を使わないでほしい。ただの迷惑な人。 -
なぜいっぱいにならないのか。解のひとつを体験したことがある。学生の時期に書庫の整理を命じられ、貴重なものを廃棄にする作業をした。資料が残ることは尊いのだが、保全の意図のないところに、利用の可能性がひくいところにおいておけない。なので、除籍についての研究があったらと思ってよんでみたのだが、除籍についての学術的研究は現時点ではあまりないらしかった。あの廃棄の仕事があまりにも過酷で病んだので、除籍についての理論、実践が書かれていく将来を期待したい。
とはいえ、この本は、疑問に思うことを考えて説明するという営みのわくわく感にひたれて、昨今の読書のなかでは特別によい経験となった。同時に、図書館のシステムを維持する方々のご苦労も伝わってきて、どこで生きていてもつらいご時世なのだとも感じた。 -
2.本棚のどこにあるかで使われ方は変わるのか
6.雨が降ると図書館利用は増えるか、減るか
9.図書館を使っているのはどんな人々か
が興味深かった。
図書館情報学は"フィールド"の学問、図書館という対象物に方法を試行錯誤しているというのが肌感として伝わった。
※学問の分野を表す呼び方は他に"ディシプリン"といい、こちらは方法論が先のタイプ
図書館のことを教えてくれる本ではなく、タイトルのとおり、『図書館を「学問」する』ことについて、問いの立て方やデータ分析の方法なども交えて教えてくれる本だ。
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図書館関係の雑誌「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」で連載された「かたつむりは電子図書館の夢を見るか(LRG編)」のピックアップかつブラッシュアップ本。図書館関係者には役立つ内容が多く、加えて今後の図書館学の研究提案、研究の試行錯誤ぶりも読んでいて楽しめる。
本の副題などのとおり、テーマの設定がとても面白く、「なぜ図書館は月曜日に閉まるのか」、「図書館はどんな人が使っているのか」など知ってみたい事柄が多い。コロナ後に現れた利用者「意識が高い若者」というの「言われてみれば…いるかも…」と感じた。
図書館の当たり前を改めて調査すると、よりよい未来につながるかもなので、自分も楽しみながら図書館について再考したい… -
感想
図書館から世の中を覗き見る。言われるまで気が付かない疑問。そこには物事の本質が隠されているかも。ではどう解き明かすか。その方法論。 -
【書誌情報】
著者:佐藤 翔
A5判 220ページ 並製
定価 2400円+税
ISBN 978-4-7872-0088-4 C0000
発売日 2024年12月25日
図書館情報学を専門にする著者が、図書館で働く人、日々利用している人が普段は気にしない、でも聞かれると「どうして?」と思う疑問をピックアップ。その疑問をデータ/事実/エビデンスに基づいて考える視点や思考する道筋を、柔らかな筆致でレクチャーする。
図書館を学問することの楽しさを伝え、学問することが図書館をより豊かな場にしていくことを指し示す入門書。
図書館専門誌「ライブラリー・リソース・ガイド」の人気連載に加筆・修正して、書き下ろしを加えた充実の一冊。
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787200884/
【簡易目次】
はじめに――なぜ「図書館を「学問」する」姿を本にするのか
第1章 図書館の本棚はいっぱいにならないのか
第2章 本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか
第3章 図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか
第4章 なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか
第5章 図書館を訪れる人は増えているのか、減っているのか
第6章 雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか
第7章 どんな図書館がよく使われているのか
第8章 人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか
第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか
第10章 図書館に税金を使うことは人々にどれくらい認められているのか
第11章 子どもと行きたいのはどんな図書館か
第12章 「あなた」はなぜ、図書館に行くのか
第13章 人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか
第14章 図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか
おわりに
著者プロフィル
著者プロフィール
佐藤翔の作品
