衛生展覧会の欲望

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  • 青弓社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787230836

作品紹介・あらすじ

近代日本が生んだ怪しげな空間──衛生展覧会。人体模型、寄生虫・細菌標本、病例標本、胎児標本などの奇妙きてれつなオブジェの数々とそれを見つめる人々。国民「啓蒙」の名のもとに設置された、衛生思想普及のための文化装置を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 荒俣宏は著書で見世物・ポルノグラフィーとしての衛生展覧会を見事に描き出していたけれど、これは衛生展覧会の背景にあった優生・衛生学的思想をあざやかに描き出している。

     ぼくらが子どもの頃にはまだあった「健康優良児」。優生学的な思想の影響だろうとは思ったがここまでとは思わなかった。
     昭和六年の「朝日新聞」に中学三年までの男女の健康優良児の半裸の写真掲載(もちろん女の子も)。身長体重成績も記載。近親者の病気、死去などもチェックされ、小学生の審査では早熟なものは好ましくないとされ脇毛なども審査のチェックになったという。

     この話もちょっとすごい。昭和六年、女子スポーツ連盟理事長の星野龍猪が中心に「日本裸体体操連盟」が結成される。健康を強調するヌーディズム運動がさかんに。星野の著書「はだか・日光・水」にはおまけとして「ハダカ写真50枚挿入」。今で言うならいわゆる野外露出なんだけど性的関心は建前上は禁止されていた。

  • 秘宝館は、現代でも見れる衛生博覧会である、とはわかりやすい。
    差別思想丸出しで、現代にあるようなモラルも大きく欠如した、衛生博覧会。
    公共衛生の教育が必要だった時代、わかりやすく、実害の多いケースを引き合いに出して映画や模型、人形を作って、見世物的に見せる。
    いや、大真面目だったんだろうけど。

    以下メモ。
    有田ドラッグ商会
    日本裸体体操連盟

  • 明治初期から昭和30年代まで続いた「衛生展覧会」における、身体をめぐる眼差しについての考察。
    事例が非常におもしろい。衛星映画、病める人形についてなど。

    正常を規定するということは、正常/異常を分かつこと。
    病に侵された身体を知る、見るということは、自分のうちにその可能性を見ること、あるいはその身体
    との境界線を定めようとすること。
    個と公という、相互に監視しあう近代的な眼差しの形成に、おそらくは「衛生展覧会」も関わっていた
    だろうという結論。

    エルスケンの写真集は初耳でした。

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著者プロフィール

1962年、富山県生れ。富山大学文学専攻科修了。ライター。著書に『健康法と癒しの社会史』『不安定だから強い 武術家・甲野善紀の世界』『技アリの身体になる』他。

「2018年 『北斎川柳 五七五で描いた北斎漫画の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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