宝塚ファンの社会学: スターは劇場の外で作られる (青弓社ライブラリー 68)
- 青弓社 (2011年3月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784787233264
作品紹介・あらすじ
宝塚歌劇のファン同士のいい席をめぐる駆け引きやスター・生徒へのさまざまな距離感を描きながら、非合理に見えるファンの行動がきわめて合理的に成り立っていてある「秩序」を形成していることを明らかにする。ファンがスターを作る過程に迫るファン文化論。
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:775A/Mi77t//K
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宝塚歌劇団から自殺者が出た。
とはいえ、宝塚にはまったく詳しくないので、参考程度に本書を手に取った。宝塚そのものというより、そのファンたちに焦点を当てているので目的とはすこしずれていたが、それとはまたべつにおもしろいところもあった。「社会学」と銘打ってはいるものの、分析というよりファンの実態、仕組みを紹介している。
けっこうな文量が割かれるのはガードと呼ばれる、入り待ち出待ちを仕切る役割である。これをやるのはファンではあるのだが、スタッフとファンの中間にあるようなひとたちである。そういうひとたちがいるらしい。公演中の拍手の仕切りからチケットの処理も任されたりするとのこと。重要視されるのは規律である。
気色の悪い集団という印象は強いが、よく知らない世界の気持ちの悪いひとたちの話なのでおもしろかった。 -
会の働きやチケット配分の仕組みが良く分かった。
カレンダーの売上が成績に影響するんやとビックリ。
ファンがスターの序列を内在化しているのは宝塚ならでは。 -
理解しつつ距離を置いて記録することの大切さ。
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宝塚歌劇団の私設ファンクラブについて。
その独自性故に事実の説明的な内容が多く、思っていたよりは社会学的な考察や研究は少ないように感じた。
ただ、宝塚のファンクラブを体系的に知るには良書。 -
宝塚のスターに序列があるように、ファンクラブ内にも序列がありルールがある。それを社会学という視点で捉える。私設ファンクラブがチケット配分やファン動員、出入りのガードやマネージャー業までこなす生態は、確
かにただのファンという枠組みを超えていて興味を覚える。ヅカ"ファン"通になれる(?)一冊。ファンクラブが宝塚歌劇団の重要なパートという事を鑑みると、それはタカラヅカそのものへの造詣を深める事に他ならない。 -
私は、観劇してキャトルでちょこちょこ買い物する程度のファンなので、会の皆さんの頑張りには感心します。頑張り過ぎて本末転倒になっている人もいるような…。しかし、熱心なファンの気持ちを利用している劇団はどうかと思う。
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目次:序章 宝塚歌劇団の転換―1990年代から2000年代へ、第1章 宝塚スターシステムとファンクラブ、第2章 ファンクラブの活動内容―ファンクラブ側から見て、第3章 ファンクラブ会員の役割―ファン側の視点、第4章 舞台と客席をつなぐファンクラブ、第5章 ファンクラブの意味、参考文献、あとがき
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宝塚が好きになって数週間だったので、よくわかっていなかったファンについて知ろうと思って読んだのですが、本当に分かりやすく体系的に書いてあって、驚きました。
内容にも、すごく驚きや発見があって、衝撃の一冊でした。 -
ジャニーズのファンクラブづくりにも影響を与えたという宝塚の施設ファン組織の力学を解説している1冊。。<単なるファンの集合に見えるものが実はスター形成に寄与している>しくみを説得力ある筆致で論じている。宝塚歌劇団には5つの組(公演団体)があり、その頂点にはトップスターが君臨している。タカラジェンヌたちは初舞台からスターとしてのレースを競い合っているのだが、そこにいっしょに参加しているのが、生徒(タカラジェンヌ)一人ひとりの私設ファンクラブだ。応援する生徒の序列を少しでも上げるために、会員たちは涙ぐましい努力をする。不入りな公演ほど生徒名でのチケット購入を増やし、ライバルのファンクラブに負けない人数をガード(入り待ち・出待ちの列)に送り込もうと動員をかける。さらにはクラブ内でも、良席のチケットをエサに、貢献競争が繰り広げられている。本書の価値は、<ファンを熱狂させる仕組み>が自発的なボランティア組織であるファンクラブ活動の随所に埋め込まれていること、そしてそのような仕組みがファンクラブ側とそこに所属するファン個人の緊張感を伴うせめぎあいのなかで自律的に生まれたものであることを明らかにしていることにある。スター個人の資質を語るのでもなく、売り出す側の戦略を論じるのでもない――ユニークかつ本格的な「ファン論」として面白く、かつ貴重な一冊。