「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う (青弓社ライブラリー)

著者 :
  • 青弓社
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本棚登録 : 79
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787233721

作品紹介・あらすじ

アイドルが一過性のブームではなく文化として根づきつつあるいま、アイドルという芸能ジャンルの特性を、「SNSや現場の重視」「アイドルのパーソナリティの開示」「ファンの承認欲求」という観点から分析して、アイドルを語る言葉をバージョンアップする。

感想・レビュー・書評

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  • 現代の日本においてさまざまな人びとによって語られる「アイドル」ですが、著者はそれらの言説は錯綜しており、アイドル・ファンや批評家たちにとってもわかりにくくなってしまっているといいます。本書は、そうした錯綜するアイドルにまつわる言説を解きほぐし、交通整理を試みた本です。

    著者はまず、「アイドル」ということばがどのように理解されてきたのかを明らかにします。そのうえで、「アイドル」についての一定の理解が成立するに至ると、そうした「アイドル」へのメタ言及的な批評性をそなえたアイドルたちが登場するようになります。秋元康が作詞を担当した小泉今日子の「なんてったってアイドル」はその典型であり、やはり秋元がプロデューサーを務め素人性を前面に押し出した「おニャン子クラブ」によってそうした「アイドル」現象の享受形態は定着しました。

    他方で著者は、そうしたメタ・レヴェルの「アイドル」をめぐる言説においては、アイドルである少女たち自身の「自主性」のようなものが抜け落ちていたと指摘します。そして、現代の日本において「アイドルらしさ」が一つのフォーマットとなっており、それぞれのアイドルはその形式を「乗りこなす」ことで、みずからの「自主性」のようなものをかたちづくっていると論じています。

    著者がはっきりとそのように語っているわけではないのですが、いわば「アイドル」という語りの「形式化」の果てに「強度」を見いだし享受するというしかたで「アイドル」という現象を理解しているとまとめることができるように思いました。また、サブカルチャー批評において『うる星やつら』の「ビューティフル・ドリーマー」からセカイ系への展開を論じた東浩紀に対して、ゼロ年代におけるサヴァイヴ系の興隆の意義を説くとともにAKB48の魅力を語った宇野常寛の仕事の果たした役割を明瞭に見てとることができるような視座が、本書において与えられているといえるのではないかと思います。

  •  アイドルという言葉の意味から出発し、アイドル戦国時代といわれる今の「アイドルらしさ」とは何かについて、握手会や音楽性、SNSなどを通して論じた本。70年代から現在に至るまで、アイドルを取り巻く状況は大きく変わってきているにも関わらず、アイドルに操り人形性を求めるステレオタイプのアイドル観は消えない。だからこそ「アイドルらしからぬ」アイドルであることを売りにすることも可能である。あえてステレオタイプを演じるアイドルや、あえて邪道に走るアイドルがいて、多様性溢れる今のアイドルというジャンルが私は好き。

  • 学術論文みたいに堅苦しく書かれているが、社会学者から宇田丸さんから竹中夏海先生まで引いた文章は等価に扱われているし、AKBやももクロ以外にもBiSやドロシーやEspeciaにも言及してアイドルを論じる下地を整理してる。

  • おもしろいです。ちょっと読みづらい。

  • アイドルおもしろいよ。

  • 昨今、熱狂の渦の中心とも、批判の対象ともなることも言及されることが多くなった「アイドル」。アイドルについてされがちな言説についての交通整理を行い、それぞれの言説をフラットな立ち位置に立たせ、「アイドル」(特に女性アイドル)の現状を冷静に見ることができるようになれる本。

    「アイドルの歴史はこうだった」とか「アイドルはこういう解釈だ」「アイドルとはこういうものだ」という本や文章は多いけれども、それらの言説を整理するという意味では、この本はアイドルについての論壇の中で非常にレアであり、かつ重要な位置づけができるはず。

    ただ、香月さんのように非常に丁寧な交通整理をもってしても、いやむしろ丁寧な手法だからこそ、「「アイドル」自体が日本社会のなかで、一見非常にわかりやすそうで、実際にはものすごくつかみどころがない言葉なのだ。アイドルについて語るとき、我々はアイドルは何なのか、あまりにわかっていない」(あとがきより)ことが明示されるというジレンマを改めて実感することができた。

    個人的には昨年のさわやかさんの『AKB商法とは何だったのか』と双璧のアイドルについての批評本なんじゃないかと思っている。

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著者プロフィール

1980年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専攻は文化社会学。共著に『宝塚イズム』シリーズ(青弓社)、論文に「スターシステムと文化の「高級」性の根拠――歌舞伎の社会的地位を事例として」(「社会学評論」第61巻第4号)、「「ハイカルチャーの大衆化」とはなにか――歌舞伎の高尚イメージ形成と「初心者」からの眼差し」(「年報社会学論集」第22号)など。

「2014年 『「アイドル」の読み方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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