ブルマーの謎: 〈女子の身体〉と戦後日本

著者 :
  • 青弓社
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感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787234100

作品紹介・あらすじ

ブルセラブームを契機に批判を受け、1990年代以降に学校現場から姿を消したブルマーは、なぜ60年代に一気に広がり、30年間も定着・継続したのか。資料探索や学校体育団体・企業への聞き取り調査から、普及のプロセスと戦後日本の女性観の変容を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 2019.6.22市立図書館
    こどものころは当然のように着用させられていたのにいつのまにか消えた(子らは小学校からショート/クオーターパンツ世代)「ブルマー」の謎に迫るレポート。はずかしいと拒否反応をしめすのが当たり前だった当事者の女生徒はいうまでもないが性的感情を喚起しないように慎重だったはずの学校体育の現場がなぜ密着型ブルマーを急に受容することになったのか。新聞雑誌から社誌、国会答弁などの徹底的な資料収集と中体連やメーカーへの聞き取りを重ねて、60年代に急速に学校の体操着に採用されるようになって普及してから90年代に姿を消すまでの事情を追う。

    普及のきっかけは東京五輪での海外バレーボールチームユニフォームに憧れてというのが俗説の1つだったようだが、それよりもおなじ五輪で女子体操競技のテレビ中継や写真などで体の線が露わなレオタード姿の演技を見られるようになって女性の健康的な美しさを評価することに正当性が与えられたことが大きいのではないか&女性の洋風下着受容の過程で戦前からずっと防寒と風紀上の策として見えてもいいような二枚履きが推奨されてきたせいで受容されやすくなったのでは、というのはなかなか説得力があった。
    消滅に関しても、ブルセラショップなど性的な眼差しがきっかけとなったという俗説を退け、「長い間、無視されたり抑圧されてきた反ブルマーの声は、セクハラ概念の浸透によってようやく学校にも届くようになったといえる」と結論づけているのは、このところのハイヒール/パンプスの強制の問題にもつながって説得力とともに希望を感じさせるものだった。

    ブルマーの黎明期に関してはちょうど「いだてん」の女子体育の黎明期と重なるところもあってドラマの補足情報のようにおもしろく読んだが、ブルマーの採用を巡って「中体連」という団体の正体を描くために思いがけず「いだてん」でおなじみの体協や陸連/水連なども登場して、戦後の体育教育・スポーツ行政の足取りも予習する形になり、このへんを大河ドラマではどう料理するのだろうかと期待と不安半々な感じ。

    ということで、いろんな面でタイムリーに考えながら読める充実の一冊だった。

  • サブタイトルに引きずられて読み始めたのは否めず(笑)。

    しかし、なかなかハイブロウな社会学の本である。

    昭和のある時期、ちょうちんブルマーが体にぴったりしたブルマーに代わり、その後わずか数年で汐が引くように廃れた。

    うーむ、ジャージ姿が標準だった気もするが、女子が体育の授業とかでぴったりしたブルマーを穿いていた記憶はある。でも、今はそんなもの穿かないのだという。知らんかったわ。

    さて、ブルマーの変遷と盛衰に関しては、ちょっと調べてもよくわからないらしい。(だから、こういう本もできた)

    学校のことであるから、女子生徒が自分たちで「かわいー」とか「恥ずかしい-」とかで着る物を選べるはずもない中、なぜそのようなことが起こったか。

    GHQのサシガネによる「中体連」の創設、スポーツ振興と教育の狭間で肥大していく思惑、企業との密約?などが次第に明らかにされていく。

    全体的な印象としては、家父長的男尊権威主義の源流というか、戦後教育のゆがみというか、昨今のスポーツ界のパワハラ問題に通じる何かを見る思いがする。

    ちなみに一気に廃れたのは、「ブルセラ」だの「セクハラ」だの体裁の悪い話題が相次ぎ、世間から外的圧力が強まった結果らしい。

  • 2016.12.11 HONZより

  • ブルマーの謎: 〈女子の身体〉と戦後日本

  • とても面白かった。
    多くの資料に導かれて、ブルマーが一世を風靡し急速に消えていった理由に迫っていく。その中で明らかになる全国中体連という組織との関わり。ブルマーが帯びることになったイメージとは······。
    とても引き込まれる作品だった。著者のブルマーへのこだわりが伝わってきた。

  • ブルマーの広まりの経緯が,中体連や東京オリンピックや繊維販売会社の思惑とともにあり,学校側はそれほど主体性がなかったのが面白い.そしてブルマーへの恥じらいが婦徳派の要件を叶えたというところが,切り口として新鮮だった.

  •  タイトルと、表紙の装丁はアレですが、いかがわしい本ではありません。大まじめな社会学の本。著者は大学の先生。
     なぜ、学校はブルマを体操指定服にしていたのか? どうしていきなり姿を消したのか?
     そういうものを全国の学校が一斉に選んだ、しかも文科省からの指示通達があったわけじゃないのに。そのことについて明確な説明ができないのはなぜか。そんなテーマを扱った研究本です。

     個人的な話になりますが、私、小学校と中学校、ずっとブルマでした。当時は漠然としか気にしてなかったですが、今考えると違和感がたくさん。
     なんでこんなに「お尻がまるまる見える」カタチの服が、体育の指定服だったのか。ブルマが恥ずかしくて、体操着の上着をブルマを覆うように着て、ブルマ自体を隠していました。ノーパンみたいで、逆に恥ずかしい。
     なぜブルマは出現し、消えたのか。たくさんの資料と、考察と、根拠を述べて、本一冊分、みっちりと論が展開されています。

     疑問を呈する部分はすごく納得がいく。背景事情は興味深い。パンツ二枚履き理論はすごく腑に落ちました。メーカーさんの努力や、中学体育連盟の思惑なんかも面白い。
     でも、それでもなお、著者さんが提示する理論には、部分的に納得しづらい部分がある。それも面白いところなんだと思います。一から十まで納得できるものではなく、ここはわかる、ここは私は違うと思う。そういうふうに読める本は、本一冊分以上の刺激があります。
     お金が動き、人が動くものっていうのは、まあ、秘めた思惑と、時代の後押しってものがあるよねえ。
     いつかまた、ブルマに関する新しい資料が見つかって、新しい論が展開されるんでしょうか。その日が来ることを願ってやみません。

  • 密着型ブルマーがいかにして広がり、定着し、そして消滅していったかの社会論。

    東京オリンピックを契機に、テレビを通じて外人選手を見る機会が増え、強い選手への憧れとしてレオータード(密着型ブルマ)がステータスシンボルとなる。また、戦後スカートの普及に伴い、スカートの下にパンツを二枚ばきする伝統があり、ブルマーに対する抵抗が少なかったとされている。

    また、ブルマーの普及に関しては、国威発揚のためにオリンピックで結果を残す必要があり、中学生年代の選手を早くから育成する目的で、中学生の全国大会開催が期待されていた。そこに、中体連が絡み、組織維持運営のために、衣料品メーカーと組み、ブルマーの着用を推薦することによって、一気に普及していった側面があるらしい。

    消滅に関しては、セクハラ概念の浸透、犯罪、代替物としてのジャージ系ハーフパンツの台頭があげっられている。

    中学、高校共に普及率が50%を超えていたのは、1969年から1975年ごろらしい。まさにこの頃思春期を迎えていた私は、周辺に密着型ブルマーが溢れていて、それが当たり前のように感じていた。
    しかし、その背景には本書で綴られていたような事情が複雑に絡んでいたということか。ある意味、時代の産物であった密着型ブルマーは、我々年代の記憶遺産かもしれない。

  • ブルマが普及して消滅するまでの流れを理解する事が出来た。ただ細部の歴史的事実は色々間違っているところがあるような気がしたが、大変な労作出会ったことには違いない。

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著者プロフィール

(やまもと・ゆうじ)
1953年生まれ。1986年京都大学教育学研究科博士後期課程退学。1986年京都大学教育学部助手を経て、87年より関西大学。現在、関西大学教授。著書『ブルマーの謎――〈女子の身体〉と戦後日本』(青弓社、2016年)。訳書 J・フィスク『抵抗の快楽――ポピュラーカルチャーの記号論』(世界思想社、1998年)、S・J・ボール編著『フーコーと教育――〈知=権力〉の解読』(勁草書房、1999年、監訳)。論文「ドキュメントを読む――いじめ自殺訴訟判決を例に」(『教育社会学研究』2009年)、「儀礼=神話空間としての学校」(単著)『教育文化を学ぶ人のために』稲垣恭子編(世界思想社、2011年)、「〈教育と暴力〉再考――デュルケムとの対話を通して――」『〈教育〉を社会学する』北澤毅編(学文社、2011年)、「概念の変形と理論の不幸――G. H. ミードのgeneralized otherを巡って」(『関西大学社会学部紀要』2016年)などがある。

「2021年 『精神・自我・社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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