歴史修正主義とサブカルチャー (青弓社ライブラリー)

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  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787234322

作品紹介・あらすじ

メディアにヘイトスピーチやフェイク・ニュースがあふれ、「右傾化」が懸念される現代日本。「歴史修正主義(歴史否定論)」の言説に対する批判は、なぜそれを支持する人たちに届かないのか。

歴史修正主義を支持する人たちの「知の枠組み」を問うために、歴史を否定する言説の「内容」ではなく、「どこで・どのように語られたのか」という「形式」に着目する。現代の「原画」としての1990年代の保守言説を、アマチュアリズムと参加型文化の視点からあぶり出す。

「論破」の源流にある歴史ディベートと自己啓発書、読者を巻き込んだ保守論壇誌、「慰安婦」問題とマンガ、〈性奴隷〉と朝日新聞社バッシング――コンテンツと消費者の循環によって形成される歴史修正主義の文化と、それを支えるサブカルチャーやメディアの関係に斬り込む社会学の成果。

******************

酒井隆史さん(大阪府立大学)、推薦!

なぜ、かくも荒唐無稽、かくも反事実的、かくも不誠実にみえるのに、歴史修正主義は猛威をふるうのか? いま、事実とはなんなのか? 真理とはなんなのか?

真理や事実の意味変容と右傾化がどう関係しているのか?

「バカ」といって相手をおとしめれば状況は変わるという「反知性主義」批判を超えて、本書は、現代日本の右翼イデオロギーを知性の形式として分析するよう呼びかける。キーはサブカルチャーである。わたしたちは、本書によってはじめて、この現代を席巻する異様なイデオロギーの核心をつかみかけている。この本は、ついに現代によみがえった一級の「日本イデオロギー論」である。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史修正主義者がディベートをいかに利用してきたか。ネットに漂う「論破」という言葉。人狼的世界観。

  • どのように場が作られたのかの部分が良い。

  •  青弓社ライブラリー 92

    『歴史修正主義とサブカルチャー ―― 90年代保守言説のメディア文化』
    著者:倉橋 耕平
    版型:四六判  240ページ 並製
    定価:1600円+税
    ISBN:978-4-7872-3432-2 C0336
    初版発行年月 2018年02月

    紹介
     なぜ歴史修正主義(歴史否定論)を支持するのか――。自己啓発書や雑誌、マンガ、新聞報道などを対象に、1990年代の保守言説とメディア文化の結び付きを、アマチュアリズムと参加型文化の視点からあぶり出す。現代の右傾化の源流に斬り込む社会学の成果。

    解説
     メディアにヘイトスピーチやフェイク・ニュースがあふれ、「右傾化」が懸念される現代日本。「歴史修正主義(歴史否定論)」の言説に対する批判は、なぜそれを支持する人たちに届かないのか。
     歴史修正主義を支持する人たちの「知の枠組み」を問うために、歴史を否定する言説の「内容」ではなく、「どこで・どのように語られたのか」という「形式」に着目する。現代の「原画」としての1990年代の保守言説を、アマチュアリズムと参加型文化の視点からあぶり出す。
     「論破」の源流にある歴史ディベートと自己啓発書、読者を巻き込んだ保守論壇誌、「慰安婦」問題とマンガ、〈性奴隷〉と朝日新聞社バッシング――コンテンツと消費者の循環によって形成される歴史修正主義の文化と、それを支えるサブカルチャーやメディアの関係に斬り込む社会学の成果。
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      酒井隆史さん(大阪府立大)、推薦!
    “なぜ、かくも荒唐無稽、かくも反事実的、かくも不誠実にみえるのに、歴史修正主義は猛威をふるうのか? いま、事実とはなんなのか? 真理とはなんなのか? 真理や事実の意味変容と右傾化がどう関係しているのか? 「バカ」といって相手をおとしめれば状況は変わるという「反知性主義」批判を超えて、本書は、現代日本の右翼イデオロギーを知性の形式として分析するよう呼びかける。キーはサブカルチャーである。わたしたちは、本書によってはじめて、この現代を席巻する異様なイデオロギーの核心をつかみかけている。この本は、ついに現代によみがえった一級の「日本イデオロギー論」である。”
    https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234322/

    【目次】
    はじめに

    序章 なぜ「メディア」を問うのか
     1 保守言説の広がり
     2 これまでの調査研究でわかっていること
     3 本書の対象――歴史修正主義と一九九〇年代
     4 「何が語られたか」ではなく「どこで/どのようにして語られたか」
     5 本書のアプローチ――コンバージェンス文化
     6 本書の構成

    第1章 歴史修正主義を取り巻く政治とメディア体制──アマチュアリズムとメディア市場
     1 歴史修正主義の特徴
     2 歴史修正主義はどこで/誰が展開しているのか
     3 教科書をめぐる政治運動と右派メディア知識人
     4 歴史修正主義をめぐるメディア市場

    第2章 「歴史」を「ディベート」する──教育学と自己啓発メディア
     1 「自由主義史観」と「ディベート」
     2 「歴史」を「ディベート」する
     3 メディアでのディベート表現の展開

    第3章 「保守論壇」の変容と読者の教育──顕在化する論壇への参加者
     1 「論壇」の輪郭と「論壇」の問い直し
     2 読者の「教育」――読者コーナーのメディア論

    第4章 「慰安婦」問題とマンガ──『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論
     1 これまで小林よしのりはどう語られてきたか――先行研究と本書のアプローチの違い
     2 「慰安婦」問題を否定する保守言説の構築とそのメディア特性
     3 「読者」の扱いと言説空間の構築

    第5章 メディア間対立を作る形式──〈性奴隷〉と新聞言説をめぐって
     1 〈性奴隷〉の初出をめぐって
     2 主要新聞報道で〈sex slaves〉はどのように用いられたか
     3 批判の「形式」へのこだわり

    終章 コンバージェンス文化の萌芽と現代──アマチュアリズムの行方
     1 コンバージェンス文化の萌芽
     2 コンバージェンス文化の現在

    おわりに

  • 歴史修正主義のメカニズムについて、90年代の日本のメディア状況から論じている。
    歴史修正主義の構成要素はアマチュアリズムと市場原理である。事実より説得力による論破、雑誌においての読者参加形式の普及、などの複合的要因により、歴史修正主義が広まっていったことをコンバージェンス文化=消費が各プラットフォームを横断し、消費者も参加する状況、というキーワードでまとめている。
    学術的で、しっかりとした方法論をとっている社会分析だが、題材的にも文書的にも非常に読みやすい。

  • メディアに表れる保守言説を、「何が語られたか」ではなく「どこで/どのようにして語られたか」に注目して分析した書物。90年代に焦点をあて、雑誌による読者を巻き込む仕掛け、「ディベート」や漫画の使われ方、新聞報道分析とイメージの定着(「朝日の捏造報道」など)を図る手法などを通して、コンバージェンス文化(複数メディアの収斂、人々の参加、集合的な知の形成)が立ち上がる過程を描く。

    「アマチュアリズム」と「参加」が、商品化したメディアとの相互作用により、特定の知が総合的に立ち上がる様を描いた、見事な現代メディア論。

  • サブカルに主義・思想を持ち込んだのは、確かに小林よしのりの功績であろう。
    しかし、昨今は商売で保守もどきをやっている、自称保守派という文化人?が多すぎる。
    安倍(的)なものを称賛し、ニッチな箇所から金を吸い上げているのが、個人ではギルバートやテキサスなどの河原乞食外人グループ(嘆かわしいことに、特に保守派思想の持ち主に欧米人の言説を持ち上げる人間多し)、WillとかHanada等の太鼓もち雑誌、あと無闇に日本礼賛するムック本等々である。
    私自身、それなりに愛国者だと自認しているのだが、この風潮は気持ち悪いとしか言えない。

  •  一貫して見落とされてきたことは、「どこで語られたか」「どのような方法を用いて語られたか」である。政治研究が「内容」に。歴史研究が「事実」に関する分析や批判であるとするならば、メディア研究はまず「形式」を分析する。この点に着目することで、ある思想が「どのように存在・構築・普及(媒介)されてきたか」という本書を貫通する全体の問いに答えらえると考えている。そして、その結果、学問とは異なる「ゲーム」のあり方を解明できるはずだ。(p.27)

     なぜ彼らの主張が「論破マニュアル」へと先鋭化していくのか。より踏み込んでいえば、なぜ「論破」や「説得性」が重要な証拠や証言の重みを無視して、イデオロギー闘争の恍惚感を与えるのか。おそらく、その理由は、第1章で指摘した「アマチュアリズム」にある。アマチュアは、専門家ではないからこそ、適切な歴史資料を調査する責任(や労力)を負わなくても「専門家ではない」と言えば免責される。アマチュアであるかぎりは、論戦に必要な知識だけあればよく、対抗するイデオロギーの「論破」さえできればいいからだ。(pp.110-111)

  • 本書は歴史修正主義の「知」のあり方をメディア文化論の観点から実証的に考察している。保守/右派を取り上げる学術研究は日本ではまだまだ少ない。本書は「メディア」に着目していることで様々な興味深い知見を提示し得ていると言える。対象時期を90年代に限定しているためインターネットについての言及はほとんどないが、今後の研究に期待したい。

  • 倉橋耕平『歴史修正主義とサブカルチャー』読了。今日に蔓延る歴史修正主義者の源流を90年代の保守言説とそれが語られたメディア文化に着目して読み解く。歴史修正主義者やネトウヨ諸氏との対話不可能性の分析の説得力を感じた。「相対主義」の絶対化をいかに乗り越えるが、それを考えていきたい。

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著者プロフィール

倉橋 耕平(くらはし・こうへい)/1982年生まれ。関西大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。創価大学文学部准教授。『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』(青弓社)、『教養としての歴史問題』(共著、東洋経済新報社)など。

「2021年 『反日 東アジアにおける感情の政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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