総中流の始まり 団地と生活時間の戦後史 (青弓社ライブラリー)

制作 : 渡邉 大輔  相澤 真一  森 直人  東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター 
  • 青弓社
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感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787234629

作品紹介・あらすじ

高度経済成長期の前夜――労働力が都市に集中していき、核家族が増えていくなかで、日本は「総中流社会」と言われた。では、総中流の基盤になった「人々の普通の生活」は、どのように成立したのだろうか。

サラリーマンとその家族が住む集合住宅=団地に焦点を当てて、1965年におこなわれた「団地居住者生活実態調査」を現代の技術で復元して再分析する。そして、当時の生活文化や団地という社会空間がもつ意味を実証的に浮き彫りにする。

労働者や母親の生活の実態、子どもの遊びや学習の様子、テレビと一家団欒――「普通の生活」の基準ができあがる一方で、男性の長時間労働や遠距離通勤、性別役割の固定化を生む要因にもなった「総中流の時代」のリアルを照射する。

感想・レビュー・書評

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  • 1965年の団地調査から、当時の住民の実態を明らかにしていく本。団地の特性が総中流化や性的役割の固定化を引き起こす要因の一つになった。

    団地は戦後の日本に良質な住宅を供給するために建てられた。特に対象となったのは財産の少ない子育て世代。それを実現するために、規格化された住宅を大量に建造することになる。団地を建てられるような土地は限りがあるため、団地は駅前から離れた場所に作れるようになる。これが均質化と男女の役割分担を進めさせた。

    駅から遠いことで通勤時間が伸びるため、子育てしながら働くのには向かなくなる。また、入居者は核家族であることから、祖父母のサポートは受けられにくい。そのため母親は専業主婦となり、父親は長距離通勤で労働に専念する形となるわけだ。

    住宅政策によって、性的役割の固定化が進む。このような当初意図していなかった方向に影響が出る話は、プチ地政学みたいで読んでいて面白い。

  • 第1章 普通の時間の過ごし方の成立とその変容―高度経済成長期の団地生活での一日のあり方
    第2章 団地での母親の子育て
    第3章 団地のなかの子どもの生活時間
    第4章 団地のなかのテレビと「家族談笑」
    第5章 団地と「総中流」社会―一九六〇年代の団地の意味
    補章 「団地居住者生活実態調査」の概要とデータ復元について

  • 二極化した格差社会、というのが世界的の共通現象になっている今、中間層の消滅が民主主義に大きな影響を与えていると思います。たまたま手にした本書は日本の戦後高度経済成長時代に団地という舞台で「総中流」という意識を育んでいた様子をデータを基に論じています。書かれていることはびっくりするようなことではなく、なんとなくその時代を知るものにとっては体験的に知っていたようなことですが、新しいのはその分析手法です。1965年に実施された「団地居住者生活実態調査」というデータを復元し、最新の手法で分析し直していることに驚きを感じました。これから「データ考古学」(まあ、昭和だと考現学かもしれませんが…)みたいな分野が活性化するかもしれません。「戦後の国家再建プロジェクトのなかで新しい中間層の理念を具体化したものとして団地が構想した」(P145)という論考は、「世界で最も成功した社会主義国 日本」という言い方に繋がると思いました。続けて書かれる「総中流社会の本質とは、格差が存在しないことではない。同じ方向に向かって進む一つの「群れ」が想像され、内部での比較と模倣がおこなわれることのほうが本質的なのである。」という文章は非常に印象深いです。そういう意味では一億総中流社会において、団地という舞台と共に大きな役割を果たしたのはテレビというイメージ共有装置の存在かもしれません。そして、昨今の中流崩壊という現象は、テレビ文化の凋落、つまりデジタルによるフィルター・バブルの生成ということとシンクロしているのかもしれません。

  • 東2法経図・6F開架:365.5A/W46s//K

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著者プロフィール

批評家・映画史研究者。1982年生まれ。現在、跡見学園女子大学文学部准教授。専攻は日本映画史・映像文化論・メディア論。映画史研究の傍ら、映画からアニメ、純文学、本格ミステリ、情報社会論まで幅広く論じる。著作に『イメージの進行形』(人文書院、2012年)、共著に『アニメ制作者たちの方法』(フィルムアート社、2019年)『スクリーン・スタディーズ』(東京大学出版会、2019年)『本格ミステリの本流』(南雲堂、2020年)など多数。

「2021年 『明るい映画、暗い映画 21世紀のスクリーン革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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