〈サラリーマン〉の文化史 あるいは「家族」と「安定」の近現代史

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  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787235091

作品紹介・あらすじ

明治維新から西欧にならって殖産興業を急ぎ、新しい組織=株式会社が次々にできたことで生まれたサラリーマンはどのように「成長」してきたのか。現在では「ありふれた一般人」の総称とされるサラリーマンは、いつ社会に登場したのか。また、サラリーマン層を「安定」の表象とする社会意識の浸透には、どのような歴史的・社会的背景があるのか。

「ありふれた一般人」という集合体としてだけ語られがちなサラリーマンに焦点を当て、彼らが生きた各時代の社会のなかで、彼らのどのような心情が様々な文化表象に反映されてきたかを明らかにする。具体的には写真、漫画、映画、そして文学作品、とりわけ文学作品という虚構の背後にそびえる社会状況をサラリーマンの視点から読み解いていく。

立身出世、小市民、インテリ、労働組合――。かつて「一億総中流」といわれ、その象徴として「安定と平凡な家庭生活」の代償に働き続けたサラリーマンたちのさまざまな表情を、各時代を生きたリアリティとともに浮き彫りにする労作。

【目次】
はじめに
序 章 〈サラリーマン〉をめぐる言説――あるいは、彼らはどこから来たのか
第1章 〈サラリーマン〉前史としての一八七〇年代から一九一〇年代――士族、立身出世主義、そして煩悶青年
第2章 ベル・エポックあるいは小市民のユートピア――「文化住宅」という装置と大正時代のサラリーマン
第3章 蒼白きインテリたち――モダンボーイ、マルクスボーイ、サラリーマン
第4章 戦後民主主義の恋愛――敗戦後のサラリーマンたち
第5章 家庭と組合のはざまで――銀行の労組活動と文化運動
第6章 漂泊への決別、あるいは「平凡なサラリーマン」として生きることの覚悟――山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』論

感想・レビュー・書評

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  • 面白く読める学術書も増えているが、こちらはタイトルはキャッチーなものの、中身は学術書。研究者には役立つことが多いと思われる。

  • 東2法経図・6F開架:361.84A/Su96s//K

  • 谷原吏『〈サラリーマン〉のメディア史』の中で、近々出版される、と言及されていた本です。朝日新聞の書評でも、同時に取り上げられていました。同じテーマのシンクロニシティだとしても「メディア史」と「文化史」の違いを感じました。「メディア史」の方はサラリーマンという存在が社会からどう「まなざされて」来たか、の歴史ですし、「文化史」の方は副題に『あるいは「家族」と「安定」の近現代史』とあるようにサラリーマンの心はどう揺れ動いて来たか、の歴史です。「文化史」は士族という身分制度の崩壊から始まる「月給取り」という存在の出現を源流とする中間層の浮き沈みの物語なのです。だからタイムラインは近代産業史であり、舞台は都市(それも東京)成立史であります。朝日書評には「サラリーマン」のレクイエム、という言葉を両書共通に見出していますが、「文化史」が指摘している社会最下層への転落を恐れる存在としての「サラリーマン」という発見は、鎮魂歌というより現在進行形の問題かと感じました。また、それぞれの本がページを割いている映画についての違いが興味深いと思いました。源氏鶏太の「三等重役」を原作とする「社長シリーズ」は共通として、「メディア史」は植木等の「無責任シリーズ」、「文化史」は「江分利満氏の優雅な生活」というのがそれぞれの本の論点を象徴しているようです。つまり社会からどう「まなざされ」るか?が平均。自分の中の「恥ずかしい」とどう折り合いつけるか?が江分利満。テーマの違いだけではなく1986年生まれと1976年生まれという違いもあるかもしれません。それにしても岡本喜八特集で「江分利満氏の優雅な生活」見ておいてよかった。

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得満期退学(学術博士)。東邦大学准教授。専攻は日本近代文学、日本モダニズム研究、戦後日本社会論。編著に『社会主義リアリズムの系譜』(ゆまに書房)、共著に『高度経済成長の時代』(臨川書店)、『よくわかる都市社会学』(ミネルヴァ書房)、論文に「屋上からの眺め――あるいは『立花隆の書棚』から見える風景」(「ユリイカ」2021年9月号)、翻訳にサラ・スナイダー「あるアーカイブの遍歴――「プランゲ文庫」成立まで」(「Intelligence」第20号)など。

「2022年 『〈サラリーマン〉の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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