〈サラリーマン〉の文化史 あるいは「家族」と「安定」の近現代史

  • 青弓社 (2022年8月25日発売)
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本 ・本 (474ページ) / ISBN・EAN: 9784787235091

作品紹介・あらすじ

各時代の文学作品や漫画、映画、労働組合の文化活動はサラリーマンをどのように描いてきたのか。史・資料を精読し、小市民・インテリと称された「ありふれた一般人」の集合体が一億総中流の象徴として「安定と平凡な家庭生活」を求めた実態を分析する労作。

感想・レビュー・書評

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  • 面白く読める学術書も増えているが、こちらはタイトルはキャッチーなものの、中身は学術書。研究者には役立つことが多いと思われる。

  • 東2法経図・6F開架:361.84A/Su96s//K

  • 谷原吏『〈サラリーマン〉のメディア史』の中で、近々出版される、と言及されていた本です。朝日新聞の書評でも、同時に取り上げられていました。同じテーマのシンクロニシティだとしても「メディア史」と「文化史」の違いを感じました。「メディア史」の方はサラリーマンという存在が社会からどう「まなざされて」来たか、の歴史ですし、「文化史」の方は副題に『あるいは「家族」と「安定」の近現代史』とあるようにサラリーマンの心はどう揺れ動いて来たか、の歴史です。「文化史」は士族という身分制度の崩壊から始まる「月給取り」という存在の出現を源流とする中間層の浮き沈みの物語なのです。だからタイムラインは近代産業史であり、舞台は都市(それも東京)成立史であります。朝日書評には「サラリーマン」のレクイエム、という言葉を両書共通に見出していますが、「文化史」が指摘している社会最下層への転落を恐れる存在としての「サラリーマン」という発見は、鎮魂歌というより現在進行形の問題かと感じました。また、それぞれの本がページを割いている映画についての違いが興味深いと思いました。源氏鶏太の「三等重役」を原作とする「社長シリーズ」は共通として、「メディア史」は植木等の「無責任シリーズ」、「文化史」は「江分利満氏の優雅な生活」というのがそれぞれの本の論点を象徴しているようです。つまり社会からどう「まなざされ」るか?が平均。自分の中の「恥ずかしい」とどう折り合いつけるか?が江分利満。テーマの違いだけではなく1986年生まれと1976年生まれという違いもあるかもしれません。それにしても岡本喜八特集で「江分利満氏の優雅な生活」見ておいてよかった。

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得満期退学(学術博士)。東邦大学准教授。専攻は日本近代文学、日本モダニズム研究、戦後日本社会論。編著に『社会主義リアリズムの系譜』(ゆまに書房)、共著に『高度経済成長の時代』(臨川書店)、『よくわかる都市社会学』(ミネルヴァ書房)、論文に「屋上からの眺め――あるいは『立花隆の書棚』から見える風景」(「ユリイカ」2021年9月号)、翻訳にサラ・スナイダー「あるアーカイブの遍歴――「プランゲ文庫」成立まで」(「Intelligence」第20号)など。

「2022年 『〈サラリーマン〉の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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