- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784787272966
作品紹介・あらすじ
日本のクラシック界で独自の評論を展開する宇野功芳。マーラーの寂寥感に魅せられた死生観、マタチッチや朝比奈隆を見いだした芸術への追求心、誰もが評価するカラヤンへの批判など、その直截な筆致の原点を若き日の批評から探り、宇野批評の魅力に迫る。
感想・レビュー・書評
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長年にわたってクラシック批評を続け、今も指揮活動の傍ら執筆を続ける宇野功芳氏の、批評活動の特質を分析する。 合唱指揮者でもある宇野氏の批評の根底には、演奏に対する確固とした理念があること、そしてそれに照らして良いと思えば孤軍奮闘も辞さず、先入観や雰囲気に流されがちな他の批評と一線を画す、そのような姿勢を著者は高く評価している。 あまり目にする機会のない初期の批評から、現在に至る変遷も見渡すことが出来て興味深い。 音楽批評、特に宇野氏の文と芸術観に触れたことがある人には楽しめる。
著者は、宇野氏の批評の特色は、次の点にあると言う (p.44)。 第一に、確かな音楽観に裏付けられているがゆえに明快であること。 第二に、芸術には自己表現意欲が不可欠とすること、その演奏表現手段としては即興を含む実演が本位であり、収録技術も問われるとすること。 第三に、演奏芸術の基調には寂寥感、頽廃感が不可欠であるとすること、それは芸術・人生の無常観と結びついていること、である。 そう言われてみれば納得できる見解である。
以上の分析を、序章「宇野批評の位置」、第1章「人と批評」で展開したあと、第2章「作曲家論」、第3章「演奏家論」で具体例を挙げてゆく。 他の批評家と宇野氏による評価を対照しながら、クラシック批評のありかたを論じ、日本の現状に対する警鐘を鳴らす。 最後は著者と宇野氏との対談で締めくくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示