ハイジの生みの親ヨハンナ・シュピーリ

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  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787292766

作品紹介・あらすじ

世界中で読み継がれている児童文学の古典的名作『ハイジ』。高畑勲演出のテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』をはじめ、映画、テレビドラマ、漫画や絵本など、多彩なメディアへの翻案を提供している『ハイジ』は、これらの氾濫するイメージに追いやられ、19世紀スイスに生きた原作者ヨハンナ・シュピーリその人に光が当たることはきわめてまれだ。

本書では、近代ヨーロッパ社会のさまざまな問題が織り込まれたシュピーリ文学の諸相を検証し、女性の自己実現、自然と教育のせめぎ合い、キリスト教信仰への思い、また社会運動へのまなざしなどのテーマが彼女の作品群でどのように変奏されていったのかを明らかにする。そして、その道筋の半ばに現れた傑作『ハイジ』の到達点をあらためて考察する。

爆発的な売れ行きをみせた『ハイジ』はまた、第三者による非公式の続篇の跋扈、数えきれないほどの映像化作品、そして日本でも多様なバリエーションの翻訳を生み出している。こうした「ハイジ現象」のうねりを鳥瞰しながら、スイスという国のイメージを規定する国民神話にまで上り詰めた「アルプスの少女」の魅力の正体を探る。

【目次】

はじめに

第1部 ヨハンナ・シュピーリの文学世界

第1章 ヨハンナ・シュピーリの修業時代と遍歴時代
 1 ドクトルハウスの人々
 2 村の学校、牧師館、女子寄宿学校
 3 結婚とチューリヒ移住
 4 どん底の日々
 5 作家デビューまで

第2章 匿名作家J・Sの歩み――『フローニ』ほか初期作品
 1 生きる苦しみ、死ぬ喜び――敬虔主義の土壌
 2 信仰と懐疑――『フローニの墓に捧げる一葉』
 3 自己処罰と自己実現
 4 女性同士の連帯の可能性
 5 女性教育の可能性――『失踪しても忘れない』

第3章 自然と教育のせめぎ合い――『ハイジ』:1
 1 「自然に還れ」
 2 男女のパートナーシップ
 3 教育論争
 4 近代的教育の袋小路
 5 ルソーvsペスタロッツィ
 6 教育の限界と精神医学
 7 ABCの歌――ペーターの教育

第4章 キリスト教の複雑な役割――『ハイジ』:2
 1 『ハイジ』=「有害図書」?
 2 異教徒のインディアン/放蕩息子
 3 ハイジの信仰と懐疑
 4 放蕩息子の帰還
 5 パウル・ゲルハルト『朝の祝福』――賛美歌:1
 6 パウル・ゲルハルト『汝の道を委ねよ』――賛美歌:2
 7 フィリップ・シュピッタとダニエル・ヘルンシュミット――賛美歌:3・4

第5章 女性の大学教育と職業――『ジーナ』
 1 女性解放運動の周縁で
 2 『ハイジ』続篇としての『ジーナ』
 3 大学で学ぶ女性たち
 4 ちぎり取られた足

第6章 社会運動へのまなざし――『コルネリ』ほか後期作品
 1 貧困と労働運動と文学
 2 シュピーリを取り巻く社会と労働問題
 3 反革命小説――『コルネリは教育される』
 4 労働運動と言論活動――『ゴルトハルデの消息』

第2部 「ハイジ現象」の射程

第7章 「アルプスの少女」神話の系譜――ミミリ、アデライーデ、ハイジ
 1 アデライーデとアーデルハイト
 2 クラウレンの『ミミリ』――「アルプスの少女」の偶像化
 3 カンプの『アデライーデ』――「アルプスの少女」の脱性愛化
 4 シュピーリの『ハイジ』――「アルプスの少女」の脱構築と再構築

第8章 シャルル・トリッテンのフランス語『ハイジ』続篇
 1 トリッテン訳『ハイジ』の特徴
 2 『ハイジは成長する』――転倒されるハイジ
 3 『若き娘ハイジ』――ツギハギ細工の物語
 4 『ハイジと子どもたち』――第一次世界大戦とスイス国内ツアー
 5 『ハイジおばあさん』――博覧会と第二次世界大戦
 6 英訳版『ハイジは成長する』『ハイジの子どもたち』――偽物の偽物

第9章 少女のための物語――日本の『ハイジ』受容の始まり
 1 野上弥生子訳『ハイヂ』(一九二〇年)――最初の日本語訳
 2 近代日本の少女雑誌とその読者
 3 深水正策訳『アルプスの少女』(一九二四/二五年)――少女のための物語
 4 岩下恵美子訳『ハイヂ』(一九三五年)――少女同士の絆
 5 吉田絃二郎訳『アルプスの少女』(一九四七/四八年)――大胆な改変
 6 「少女小説」から「世界名作」へ

第10章 『ハイジ』映像化の百年
 1 アメリカ映画『ハイディ』(一九三七年)
 2 スイス映画『アルプスの少女』(一九五二年)
 3 日本製アニメ『アルプスの少女ハイジ』(一九七四年)
 4 『アルプスの少女ハイジ』ドイツ語吹替版(一九七七/七八年)

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  • 【書誌情報】
    『ハイジの生みの親 ヨハンナ・シュピーリ 』
    著者:川島 隆(ドイツ文学)
    判型:A5判  290ページ 並製
    定価 3400円+税
    ISBN 978-4-7872-9276-6 C0098
    発売日 2024年07月25日

     世界中で読み継がれている児童文学の古典的名作『ハイジ』。高畑勲演出のテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』をはじめ、映画、テレビドラマ、漫画や絵本など、多彩なメディアへの翻案を提供している『ハイジ』は、これらの氾濫するイメージに追いやられ、19世紀スイスに生きた原作者ヨハンナ・シュピーリその人に光が当たることはきわめてまれだ。
     本書では、近代ヨーロッパ社会のさまざまな問題が織り込まれたシュピーリ文学の諸相を検証し、女性の自己実現、自然と教育のせめぎ合い、キリスト教信仰への思い、また社会運動へのまなざしなどのテーマが彼女の作品群でどのように変奏されていったのかを明らかにする。そして、その道筋の半ばに現れた傑作『ハイジ』の到達点をあらためて考察する。
     爆発的な売れ行きをみせた『ハイジ』はまた、第三者による非公式の続篇の跋扈、数えきれないほどの映像化作品、そして日本でも多様なバリエーションの翻訳を生み出している。こうした「ハイジ現象」のうねりを鳥瞰しながら、スイスという国のイメージを規定する国民神話にまで上り詰めた「アルプスの少女」の魅力の正体を探る。
    https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787292766/

    【目次】
    はじめに

      第1部 ヨハンナ・シュピーリの文学世界
    第1章 ヨハンナ・シュピーリの修業時代と遍歴時代
     1 ドクトルハウスの人々
     2 村の学校、牧師館、女子寄宿学校
     3 結婚とチューリヒ移住
     4 どん底の日々
     5 作家デビューまで

    第2章 匿名作家J・Sの歩み――『フローニ』ほか初期作品
     1 生きる苦しみ、死ぬ喜び――敬虔主義の土壌
     2 信仰と懐疑――『フローニの墓に捧げる一葉』
     3 自己処罰と自己実現
     4 女性同士の連帯の可能性
     5 女性教育の可能性――『失踪しても忘れない』

    第3章 自然と教育のせめぎ合い――『ハイジ』:1
     1 「自然に還れ」
     2 男女のパートナーシップ
     3 教育論争
     4 近代的教育の袋小路
     5 ルソーvsペスタロッツィ
     6 教育の限界と精神医学
     7 ABCの歌――ペーターの教育

    第4章 キリスト教の複雑な役割――『ハイジ』:2
     1 『ハイジ』=「有害図書」?
     2 異教徒のインディアン/放蕩息子
     3 ハイジの信仰と懐疑
     4 放蕩息子の帰還
     5 パウル・ゲルハルト『朝の祝福』――賛美歌:1
     6 パウル・ゲルハルト『汝の道を委ねよ』――賛美歌:2
     7 フィリップ・シュピッタとダニエル・ヘルンシュミット――賛美歌:3・4

    第5章 女性の大学教育と職業――『ジーナ』
     1 女性解放運動の周縁で
     2 『ハイジ』続篇としての『ジーナ』
     3 大学で学ぶ女性たち
     4 ちぎり取られた足

    第6章 社会運動へのまなざし――『コルネリ』ほか後期作品
     1 貧困と労働運動と文学
     2 シュピーリを取り巻く社会と労働問題
     3 反革命小説――『コルネリは教育される』
     4 労働運動と言論活動――『ゴルトハルデの消息』

      第2部 「ハイジ現象」の射程
    第7章 「アルプスの少女」神話の系譜――ミミリ、アデライーデ、ハイジ
     1 アデライーデとアーデルハイト
     2 クラウレンの『ミミリ』――「アルプスの少女」の偶像化
     3 カンプの『アデライーデ』――「アルプスの少女」の脱性愛化
     4 シュピーリの『ハイジ』――「アルプスの少女」の脱構築と再構築

    第8章 シャルル・トリッテンのフランス語『ハイジ』続篇
     1 トリッテン訳『ハイジ』の特徴
     2 『ハイジは成長する』――転倒されるハイジ
     3 『若き娘ハイジ』――ツギハギ細工の物語
     4 『ハイジと子どもたち』――第一次世界大戦とスイス国内ツアー
     5 『ハイジおばあさん』――博覧会と第二次世界大戦
     6 英訳版『ハイジは成長する』『ハイジの子どもたち』――偽物の偽物

    第9章 少女のための物語――日本の『ハイジ』受容の始まり
     1 野上弥生子訳『ハイヂ』(一九二〇年)――最初の日本語訳
     2 近代日本の少女雑誌とその読者
     3 深水正策訳『アルプスの少女』(一九二四/二五年)――少女のための物語
     4 岩下恵美子訳『ハイヂ』(一九三五年)――少女同士の絆
     5 吉田絃二郎訳『アルプスの少女』(一九四七/四八年)――大胆な改変
     6 「少女小説」から「世界名作」へ

    第10章 『ハイジ』映像化の百年
     1 アメリカ映画『ハイディ』(一九三七年)
     2 スイス映画『アルプスの少女』(一九五二年)
     3 日本製アニメ『アルプスの少女ハイジ』(一九七四年)
     4 『アルプスの少女ハイジ』ドイツ語吹替版(一九七七/七八年)

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著者プロフィール

1976年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科教授。専攻はドイツ文学。著書に『NHK「100分de名著」ブックス カフカ 変身――「弱さ」という巨大な力』(NHK出版)、『カフカの〈中国〉と同時代言説――黄禍・ユダヤ人・男性同盟』(彩流社)、共編著に『ドイツ語と向き合う』(ひつじ書房)、『図説 アルプスの少女ハイジ――『ハイジ』でよみとく19世紀スイス』(河出書房新社)、訳書にフランツ・カフカ『変身』(KADOKAWA)、ジャン=ミシェル・ヴィスメール『ハイジ神話――世界を征服した「アルプスの少女」』(晃洋書房)、ペーター・ビュトナー『ハイジの原点――アルプスの少女アデライーデ』(郁文堂)など。

「2024年 『ハイジの生みの親ヨハンナ・シュピーリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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