となりのツキノワグマ (Deep Nature Photo Book)

著者 :
  • 新樹社
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本棚登録 : 78
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787586056

作品紹介・あらすじ

斬新奇抜な発想と卓越した撮影技術で、知られざるツキノワグマの実態を痛快に照らしだした衝撃の写真集。一歩山へ入ればクマはいる、あなたの隣に。

感想・レビュー・書評

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  • 『羆嵐』からの『熊が人を襲うとき』からの、この本。
    前の2冊は熊の恐ろしさを伝える本だったので、今回は、シンプルに生態についてわかる本。

    ハチミツ好きなイメージがあるけれど、好みは十熊十色。ハチミツ好きは1割程度しかいないらしい。糞の様子からは、植物もよく食べていることがわかる。ニジマスの養殖場で排水溝にひっかかっている死んだものや弱ったものを取ったり、果樹園で廃棄された果物を拾ったり、人間の生活に熊が便乗(?)しているケースも。別荘にブルーベリーなどを植えて、熊を寄せてしまうことも……。

    熊が本能的に冬眠用に木のウロを作る(樹の一部を意図的に傷つけて腐らせる。ウロができるのは100年くらい先)行為をするのも興味深い。ヒノキの樹皮をはぐ「クマハギ」の写真や木に登って実を食べた時にできる「クマ棚」の写真も豊富で、熊出没地の参考になるのでは。

    熊の足の裏の肉球がふわふわで足音はほとんど立てないというのは、ちょっと厄介。山菜取りに夢中でうっかり遭遇するケースの原因の一つなのかもしれない。

    著者が毛集めに用いた、鳥の巣箱を仕掛けてシジュウカラなどが集めた獣毛を分析する方法は、無理なく観察できて良さそう。獣毛に精通していないと、見分けるのは難しそうだけど、きっとワクワクするだろうな。

    写真家である著者が観察し続けた熊の姿は、特別に凶悪でも凶暴でもなく、フラットに自然の生き物の一種としての姿。鳥の巣箱の巨大版のようなものを森の中に置いた「クマの巣箱」の写真には、お家の中を思案気にのぞき込んでいる熊の姿があり、絵本のワンシーンのようにかわいい。襲ってくるととんでもなく恐ろしいことになると思えない。可愛いけど正しく恐れながら共存したい……。

  • 面白かった。動物園でしか見たことの無いツキノワグマだったが、写真の三脚と対比すると想像していたより大きかった事に驚愕。その攻撃力の高さ(頚動脈を~のくだり)にも驚く。羆は恐いと思っていたが、ツキノワグマを舐めていた。そして、その行動範囲が人間の生活圏と重なってる部分が多い事もはじめて知った。山道の遊歩道を朝9時におさんぽしているツキノワグマ親子…もし人間と出会っていたらと思うと、怖い。
    しかし、写真に写されるツキノワグマたちの姿は、とても愛嬌があってかわいらしい。写真で見るからだろう。はたして対面した時にそう思えるだろうか?

    共存について、もっとちゃんと考えるべきではないかと思わせてくれる良書だった。
    田舎で、クマ棚、見たことがあるような気がする…

  • となりのツキノワグマ (Deep Nature Photo Book) 単行本 – 2010/7/1

    内容(「BOOK」データベースより)
    斬新奇抜な発想と卓越した撮影技術で、知られざるツキノワグマの実態を痛快に照らしだした衝撃の写真集。一歩山へ入ればクマはいる、あなたの隣に。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    宮崎/学
    1949年、長野県に生まれる。精密機械会社勤務を経て、1972年、独学でプロ写真家として独立。中央アルプスを拠点に動物写真を撮り続け、「けもの道」を中心にした哺乳類および猛禽類の撮影では、独自の分野を開拓。現在、「自然と人間」をテーマに、社会的視点に立った「自然界の報道写真家」として精力的に活動している。自身のウェブサイト「森の365日」では、切り株や樹洞に来る動物たちを24時間ライブカメラで中継するなど、ユニークな試みを展開中


    熊の生態以外にも多くのことがわかる
    2011年12月2日記述

    写真報道家の宮崎学さんの本。
    長野県中央アルプスでのツキノワグマの生態を探った内容だ。
    まずここ20年ほどで実はくまは増加しているようだという事に驚いた。
    宮崎さん自身が多くのくまを撮影できるようになったことからも事実のようだ。
    (学者が調べたわけではないが信用できる)
    他にも熊の本能として木が将来の子孫が住めるように傷をあえて付けると言った数百年単位の時間感覚を持つ木と一部の時間軸を共有していることにも驚いた。

    写真と文章の解説が程よくなっており良い。
    熊の解体や身体部位の説明もあって興味深い。
    日本の各地でこの長野県のようなことが起こっているとすればもしかすると熊が増加しているかもしれない。

  • クマが好む木の実、季節ごとの糞、熊棚など、写真付きで説明されている。カメラマンによる、熊を追った軌跡。

  • 2013.6.16
    まさかツキノワグマが増えているなんて。そして、人との近さ。こんな大きな動物がいっぱいいるなんて日本も捨てたもんじゃない。

  • 一冊まるごとツキノワグマ。カメラをかじってみたり、いろんな糞の写真があったり、餌を食べている姿、いろんな月齢のクマ、解体されるクマの内臓・骨・・・ ツキノワグマ堪能。

  • 中央アルプス付近のクマたちの生態を調査した本。
    写真がたくさん。
    写真のクマたちの生き生きとしていること感激しました。
    三脚で立てたカメラに興味を示すクマの仕草は、人の子どもと同じ。好奇心のかたまりです。

    人とクマの生活圏が重なり合っていることには驚いた。
    クマと隣り合って暮らしている人たちは、ほとんどそのことに気が付いていないようである。驚きです。

    著者は、生態系を理解する視点で写真を撮り続けている。
    一方、「クマは稀少動物」というのは既成概念ではないか」と主張する。
    長野県のツキノワグマ推定生息数は1300~2500頭。著者は自らの調査の結果から「そんなに少ないはずはない」と考えている(「一桁違う」かも、というくらい、研究者と著者の間に推定数の開きがある)。
    少ない推定生息数は、研究者が意図的に低く見積もった数字をクマの保護を叫ぶ人たちが利用しているだけではないか、と推測している。
    僕は著者の「こういう姿勢が自然の実態から目をそらし、都合のいい概念論をはびこらせてしまう原因だ。見るべきものはきちんと見ていくことが、何より必要なのに」という意見に納得した。

    クマの性識別も難しいらしく、カメラのセッティングを工夫した「タマミール」という撮影装置で、性器を撮影することに成功している。「タマミール」のネーミングに笑いつつも、「ここまで追求することは自分にはできないなぁ」と感服しました。

    著者の宮崎氏は『カラスのお宅拝見!』という本も出している。
    これも、たまらない!
    北海道から沖縄まで、カラスの巣の中を撮影している。そこから、カラスと人の暮らす環境が見えてくる。
    宮崎氏、すごい人です。

  • 10/08/15 フィールドワークの見本。「手段にとらわれず、とにか     く探ってみようという好奇心と行動力・・・」「いな      い」から「いる」への発想転換力。

  • おもしろすぎて目が離せなかった。ブログでも紹介しています。http://ikimonotachi.blog10.fc2.com/blog-entry-1019.html

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著者プロフィール

写真家。1949年長野県生まれ。精密機械会社勤務を経て、1972年、プロ写真家として独立。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会賞年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。2013年IZU PHOTO MUSEUMにて「宮崎学 自然の鉛筆」展を開催。2016年パリ・カルティエ現代美術財団に招かれ、グループ展に参加。著書に『アニマルアイズ・動物の目で環境を見る』(全5巻)『カラスのお宅拝見!』『となりのツキノワグマ』『イマドキの野生動物』他多数。

「2021年 『【新装版】森の探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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