- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784787720191
作品紹介・あらすじ
ボクシンググローブを干せ五月晴れ
記憶には蛙を踏んだ匂いとか
台湾の蜜柑を食べる種やさし
冬の雨ツァイ・ミンリャンが降らすよに
驟雨打つカフェの女が目を覚ます
俳句がいいところは、読み返すと(出来不出来はともかくとして)そのときの風景がすうっと思い浮かぶことだ。それは現実よりもずっとリアルで、写真より抽象的で、前後の時間が断片的に重なりあうような記憶の総合体だ。
——天野健太郎
人間には風景に惹かれる自由がある。なぜ惹かれたのかわからないこともある。わからないままにそこに立って、風景を見ている自由。わかるまで人と会いつづける自由。わからないかもしれないけれど、言葉を追い続ける自由。
——斎藤真理子
2018年に亡くなった台湾文学翻訳家・天野健太郎。陳浩基『13・67』、龍應台『台湾海峡一九四九』など中国語文学の話題作を日本に紹介し、多くの読者がその訳文を賞賛した。著者が死の直前まで詠み続けた俳句と、台湾エッセイを集成。韓国文学の翻訳者・斎藤真理子の解説を付す。
感想・レビュー・書評
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初めて読んだ台湾の作家さんの小説は呉明益さんの「歩道橋の魔術師」でした。
ストーリーのおもしろさはもちろん、翻訳者である天野健太郎さんの文章がとても素敵で、大好きになりました。
これからもっともっと天野健太郎さんの訳の台湾小説が読みたいと思ったら2年前に亡くなられていたと知りとてもショックでした。
今日は天野健太郎さんのご命日だそうです。
ちょうど今日TAIWAN BOOK FAIRで訪れた本屋さんで、天野さんのこの本に出会えてよかったです。
俳句はそんなに好きではないかな‥と思っていたのですが、翻訳家でもあり俳人であった天野さんの俳句には、天野さんが見た情景、景色が私にも見えるほど、その時の気持ちが伝わってくるほどリアルで素晴らしくて、くすっと笑ったり涙が出たりしながら読みました。
五七五の中にこんなに天野さん自身が詰まっていて、心に響いてくるなんて本当にすごい。
俳句の力を、天野さんの言葉の力を感じました。
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2012年から18年の7年間で12冊の台湾・香港関連の翻訳書を出した台湾文学翻訳者にして俳人である著者の唯一の句文集。季語と風景を読むオーソドックスな形式。17音に切り取られた言葉から、遠くまで見渡すことができるような透明感がある。筆者が訳してきた多くの著書で紡いできた言葉の源がこれらの俳句にあったことを改めて知る。だからこそ、もっと生きてもらって多くの本を訳してもらいたかったし、読んでいきたかった…。