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Amazon.co.jp ・本 (96ページ) / ISBN・EAN: 9784787724113
作品紹介・あらすじ
マチュピチュ遺跡やナスカの地上絵、あるいはシカン文化のきらびやかな副葬品で有名なアンデス文明。その起源はいまから5000年以上前にさかのぼり、他の文明から影響を受けることなく出現した一次文明だ。アンデス各地に花開いた個性豊かな文化の興亡を遺跡の発掘成果から解説する。
感想・レビュー・書評
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アンデス文明について21の項目をたて、最初の見開きで説明文、次の見開きで写真や地図を載せる。
1.アンデス文明(紀元前3000~1532)の特徴三つ
①第一次文明である。
(他の文明からの影響をうけることなく出現した文明。他にメソポタミア文明、古代エジプト文明、古代中国文明、インダス文明、メソアメリカ~マヤ・アステカなど文明)
②文字、鉄、車輪がない文明(他の文明ではあり、重要。伝達にはキープというひもなど。)
③自然環境の多様性。海岸低地からアンデス高地、熱帯雨林があり環境間で集団の交流があり、その過程で各地にさまざまな文化が興亡した)
3.アンデス文明の時代区分
・形成期(紀元前3000~起源前後)
まず海岸部で、次に山間部で神殿が作られた。
・地方発展期(紀元前後~紀元後600)
アンデス最初の国家モチェ文化。ナスカ文化。
・ワリ期(紀元後600~1000)
広範囲でワリという政体の影響下。チチカカ湖周辺のティワナク文化。
・地方王国期(1000~1400)
ワリ衰退後各地で国家が展開。シカン文化。チムー文化。
・インカ期(1400~1532)
かつてない広範囲な領域。
18.マチュピチュ遺跡とは
マチュピチュがインカ帝国最後の都、あるいは生誕の地である、というある種矛盾した主張は、最近の研究では否定されている。
放射線炭素年代測定では、マチュピチュの建造は15世紀に入ってからで、第9代パチャクティ帝の時代と指摘。
マチュピチュは王の私有地(王領)の一つで、クスコの冬の寒さに対する王の避寒地である。埋葬された人々は主のいない間マピュピチュを守る使用人たちのもの。(イェール大バーガー、サラサール調査)
19.文字なき社会の情報メディア
・キープとは:結縄 結び目が数字を表す。インカ帝国(紀元後1400~1532)に特徴的なものとみなされてきたが、現在ではワリの時代(紀元後600~1000)にさかのぼれると言われている。
キープによってインカ帝国は資源の管理と徴税が可能になった。
項目
01 アンデス文明とは
02 アンデスという環境
03 アンデス文明の展開と時代区分
04 先土器時代の神殿
05 神殿を造りつづけた人々
06 チャビン・デ・ワンタル遺跡
07 北高地の巨大神殿、クントゥル・ワシとパコパンパ
08 神殿を造ることで社会が変わる
09 モチェ:アンデス最初の国家
10 ナスカ:地上絵を造った人々
11 ワリ:インカに先立つ帝国
12 宗教都市ティワナク
13 シカン:北海岸の黄金文化
14 チムー王国の首都チャン・チャン
15 インカ帝国の実態1:文書資料と考古学
16 インカ帝国の実態2:政治経済システム
17 インカ帝国の実態3:地方支配と帝国の終焉
18 マチュピチュはどのような遺跡なのか
19 文字なき社会の情報メディア
20 日本のアンデス研究1:その歴史と現状
21 日本のアンデス研究2:考古学者と現地社会
関連本、現地の博物館を多数紹介。
松本雄一:1976茨城県生まれ。イェール大学大学院人類学部博士課程修了。Ph.D(人類学)。2013年より、山形大学ナスカプロジェクトに国際共同チームの一員として参加・・このナスカ研究はNHKBSでみたことがあった。現在国立民族学博物館人類文明史研究部准教授。
新泉社 本紹介
https://www.shinsensha.com/books/6804/
2025.1.10第1版 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図版が豊富で、視覚的にも理解できる。文章は平易で読みやすい。初学者向けにアンデス文明の全体像を具体例を交えながら解説しているという印象。
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写真付きでアンデス文明の歴史が書かれていて非常にわかりやすい。
大筋を掴むにはとてもよい。おすすめ。 -
図書館の新刊にて見つけて読了。
内容の約半分は様々な写真、もう半分は時代ごとの解説で楽しめる本です。 -
概要
本書では、アンデス文明の歴史とその多様な文化の発展について詳述されており、特にインカ帝国やその前の時代の社会構造、宗教的儀礼、記録手段などが強調されています。文字を持たない文明がどのように情報を伝達し、社会を構築していったのかを考察しています。
アンデス文明の定義
- アンデス文明は、南アメリカ大陸のアンデス山脈およびその周辺地域で成立した多様な文化を含む。
- インカ帝国(15世紀後半から1532年までの約100年間)はその一部であり、インカ以前にも4000年以上にわたって多くの文化が存在した。
文化の特徴
1. 文字の不在: アンデス文明は文字を持たなかったが、神殿や土器、織物などを通じて宗教的信仰や社会的メッセージを伝達した。
2. 神殿の役割: 神殿は社会の中心として、宗教儀式や公共の祭祀が行われ、社会の統合に寄与した。
3. 地域間の交流: 自然環境の多様性を背景に、各地域で異なる文化が興隆し、相互に影響を与えた。
形成期の社会構造
- 先土器時代においても、公共祭祀建造物(神殿)が存在していたことが明らかとなり、早期から高度な社会構造が形成されていた。
- 神殿は宗教的な目的だけでなく、社会の協力を促進し、労働の分担を必要とする大規模な建築物であった。
インカ帝国の政治経済システム
1. 王権の特徴: インカの王は、征服を指揮する戦士の長であり、政治的権力と同時に聖性を持つ存在であった。
2. 労働税の重要性: インカ帝国の経済は、労働税を基盤としており、征服地からの生産物は再分配され、公共の利益に使用された。
3. 地方支配の戦略: インカ帝国は、征服した民族との良好な関係を維持するため、言語教育や婚姻を通じて統治を行った。
社会の変遷と衰退
- インカ帝国はスペイン人による侵略を受け、内部の王位継承争いや伝染病の影響などが重なり、急速に衰退した。
- 帝国の崩壊は単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合った結果である。
文字なき社会の情報メディア
- アンデス文明における情報伝達は、神殿や土器、キープ(結縄)などの記録手段を通じて行われた。
- キープは、数字や情報を記録するための道具であり、インカ帝国においては重要な役割を果たした。
まとめ
本書は、アンデス文明の歴史的意義や社会構造、文化的特徴を詳細に探求しており、特に文字を持たない社会がどのように複雑な情報伝達を行い、持続可能な社会を築いたのかに焦点を当てています。この知見は、他の文明との比較においても重要な学びを提供するものです。
著者プロフィール
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