誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788503625

感想・レビュー・書評

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  • 前々から気になってた本。
    デザインの世界ではわりと有名、なんですかね。
    確かに名著でした。読んで良かった。

    最新の家電の使い方がよく分からなかったり、
    街中で出会う水道やウォシュレットの使い方に戸惑ったり、
    ドアや鍵の開け方が分からなくて困ったり。
    そういう経験、誰でもあると思います。

    間違う人が悪いのではなく、デザインが良くないから起こるのである。

    本書の中心テーマはこれです。

    人はモノをどのようにして捉えるのか、
    どんな間違いが起こりうるのか、
    それを踏まえてどのようにデザインをするべきなのか。
    などなどが認知心理学の研究結果を元に解説されます。

    ユーザインターフェースをどのように作成すべきなのか。
    どのようなことに気を付けるべきなのか。
    デザインに関わる人は絶対に読むべき。
    そしてデザインに直接関わらない人でも読む価値あり。
    うまいインターフェースをデザインする視点というのは、
    人にうまくものを伝えるということに通じます。
    人に何かを伝えたり、伝えられたりというのは、
    通常社会生活をする上で誰もが関わることだし、
    特に多くの仕事の場面で登場する要素でしょう。

    よくデザインする、ということは使う人を思い遣ること。
    多くの人がよいデザインをする視点で仕事をこなしていくと、
    生活しやすくなる場面は増えていくのでは、
    つまりは良いデザインとは情けは人のためならず的な視点に通じるのでは、と。
    本書を読み終わり、タイトル「誰のためのデザイン?」について、
    そんなことを考えます。


    <メモ>

    ・人はどのように作業するか-行為の七段階理論
     1、ゴールの形成(ゴール)
     2、意図の形成(実行)
     3、行為の詳細化(実行)
     4、行為の実行(実行)
     5、外界の状況の知覚(評価)
     6、外界の状況の解釈(評価)
     7、結果の評価(評価)
     →各段階において利用者に戸惑いを発生させてしまう可能性がある。
      デザインをする段階で、各段階がうまく機能するか確認を行うための質問
     1、装置の機能を見きわめられるか?
     2、どんな操作をすることができるかを知ることができるか?
     3、意図を実際の行為に対応づける関係を見つけられるか?
     4、その行為をすることができるか?
     5、対象システムがどんな状態であるか分かるか?
     6、システムの状態と解釈の間の対応づけが分かるか?
     7、問題になっているシステムが期待通りの状態にあるかどうかを言えるか?

    ⇒この質問を良いデザインの原則としてまとめると、、

    ・利用者のための良いデザイン
     1、可視性
      →目で見ることによって、ユーザは装置の状態とそこでどんな行為を取りうるかを知ることができる
      →また、必要とされる知識は外界においておくこと。必要なものをすべて頭の中に入れておくことを要求してはならない。しかし、ユーザが操作を学習して知識を頭の中に取り込んだときには、より効率的に操作ができる余地を残しておくこと。
     2、よい概念モデル
      →デザイナーは、ユーザにとってのよい概念モデルを提供すること。そのモデルは、操作とその結果の表現に整合性があり、一貫的かつ整合的なシステムイメージを生むものでなくてはならない。
     3、よい対応づけ
      →行為と結果、操作とその効果、システムの状態と目に見えるものの間の対応関係を確定することができること。
     4、フィードバック
      →ユーザは、行為の結果に関する完全なフィードバックを常に受け取ることができる。


    ・エラーにはスリップとミステークがある(P170)
     エラー…適切なゴールを形成できたのに実行するときにめちゃくちゃになってしまった
     ミステーク…間違ったゴールを立ててしまった

    ・よくないデザインをする原則(P292)
     対象となるものを目に見えなくする
     恣意的にする
     一貫性をなくす
     操作を分かりにくいものにする
     無作法にする
     操作を危険なものとする
     

  • ●本の内容●

    UXやUI関係の本を読んでいると、必ずといっていいほどこの本が引用されています。

    ものが使いやすい/使いにくいとはどういうことかを解明し、
    使いやすいもの(水道の蛇口やドアノブなどの物理的な道具から、コンピューターシステムまで)をデザインするにはどうすればいいかを
    認知科学の知見を活かし、解き明かした本。

    ものをデザインする側が注意するべき点にとどまらず、
    ものを使うときの人の知覚や認識の仕組み、間違いを犯すメカニズムにも踏み込んだ考察が見事な一冊です。

    ●感想●

    いやはや。素晴らしい。 ・・・素晴らしいっ!!!!!!!!!!

    こういう見事な本に出会えたときは、地道に本を読んできてよかった! 生きててよかった!! と心から思います。

    「読みやすい本(文章)」 には 二通りあると思います。

    ひとつは、伝えたいメッセージやそれを支える根拠そのものが、そんなに複雑じゃないもの。

    もうひとつは、伝えたいメッセージやそれを支える根拠は複雑なものの、
    書き手がそれを、読み手に伝わりやすいように構造化して、順序や表現方法を工夫しているがゆえに、
    読みやすくなっているもの。

    この本には、後者の読みやすさがありました。

    書かれたのは1990年、まだGUIが市場に普及する前の時代です。
    なので、特にコンピューターシステムに関する使いやすさの考察の章などは、
    あまりにも例えが古くて、「けっ!」と思う人もいるかもしれません。  (←筆者自身も読み返して同じように思ったらしく、増補版が出て、2015年に日本語訳も出ていました。読んだのは増補版じゃない方なのですが、増補版もぜひ読んでみようと思いました。)

    でも、「ユーザーにとって、使いやすいとはどういうことか?」という原理原則を追求したこの本の視点と研究成果は、
    全然古くなっていません。

    内容の面でも、良い文章のお手本としても、
    これは本当にみんなにおすすめしたい、見事な、見事な本でした。

    ●補足●

    この本について話すと、「コレ書いた人って、アップルの幹部になってユーザーインターフェース設計に関わって大失敗したんでしょ」というエピソードを持ち出す人が一定の割合でいます。
    確かにそのエピソードも有名ですが、だからといってこの本を読まないのはあまりにもったいないです。
    ノーマンは学者で、これは「使いやすさ」についての原理を考察した本で、その観点では本当に見事な本です。
    その原理を実際の製品にどう反映させるのか、実務で周りの人にそこをどう納得させていくのか、という観点では、別の能力が必要で、著者自身にそれがなかったからといって、この本の価値を下げることにはならないと思います。

  • 大学の研究室で毎年勉強していた本でした。
    当時は対応づけ、アフォーダンスやフィードバックについての印象が強く残っていました。

    仕事でWebシステム設計に関わるようになり、今一度読み直そうと手に取りました。
    事例紹介は家電や家具などのモノが多いですが、UI設計に当てはめることができる項目がたくさんあり非常によかったです。

    以下その項目と、UI設計に絡めた自分の考えです。

    ・アフォーダンス
    ボタンに見えるからクリックする、というのがアフォーダンスだとすると、押せると思ったのに押せない、またその逆というUIもよく見かけるので意識されるべき。

    ・因果性の心理学
    ある行為のすぐ後に起きた事は、その行為よって引き起こされたように見えてしまうということだが、確かに、トラブルが起きた時、全然関係ないことを原因だと思い込み対応しようとして復旧に時間がかかってしまうことがあった。

    ・操作を間違えてしまって何かエラーが起こっても、ユーザーは、デザインのせいではなく自分を責めてしまう
    改善点を挙げてもらう時には、この点に注目しないとデザインの改善はできないということだろう。また、エラーを最小限にするデザインをあらかじめ入れておく。

    ・初めてなのに苦労なく使えるものは誰かが上手にデザインしている

    ・物理的、文化的な制約があれば、操作の選択肢が減る。
    ・頭の中の知識とが外界にある知識は、常にトレードオフの関係。頭の中の知識でできればはやいけど、学習がいる。書いてあれば検索可能だが、美しくない。

    ・制約とアフォーダンスをデザインに利用すれば、目新しい場面でもユーザーが直ちに適切な行為を行える。
    ラジオボタンとチェックボックスもその一つか?

    ・スイッチが多くなったら、グルーピングをしたり形を変えたりすること。
    webの場合はアイコンを用いるとか?

    ・可視性とフィードバックがないと良いデザインとは言えない。
    反応しているわからず何度もクリックしてしまうようなデザインはダメ

    ・間違いを許さない社会的圧力が強い影響を及ぼす。危険を報告したことが間違いだった時にそれを罰するような社会構造のデザインが問題。
    勇気を出して気になることがあるとユーザーに言われたらきちんと調べ、感謝しよう。会社の風土も大事。

    ・エラーに備えてデザインする
    1.原因を理解し、その原因が最も少なくなるようにデザインすること
    2.行為は元に戻せるようにすること。戻せないならその操作をやりにくくすること。
    3.エラーの発見、訂正をしやすくしておくこと

    ・強制選択法は、非常時とそうじゃない時のトレードオフを考慮。信頼性も高めないと、機能そのものを外されてしまう。


    ・デザイナーはユーザーではない。
    デザイナーは設計している道具に習熟してしまう。ユーザーは、その道具を使って行う作業に習熟している。これはビジネスツールを作る上では常に肝に銘じておかねばならない。

    ・デザイナーが、ユーザの立場に立とうとした時にも、頭の中にある知識を活用してしまう。一方、ユーザが初めて使う時やたまにしか使わない時は、ほとんどすべての情報、外界の知識に依存しなくてはならない。

    ・デザイナーの立場では、ユーザが陥る問題や、思い違い、エラーを予測することができない。

    ・年齢、ハンディキャップなどを考慮すると誰もが使いやすくなるための簡単な解決策はないが、柔軟性を考えてデザインすることは役に立つ。

    ・選択的注意(目の前の問題に注意を払って、それ以外を考えに入れないこと)に気をつける。デザインにおいても、1つの要因に注目するあまりに他の要因に目を配り忘れていないか。
    Webデザインにおいては、美しさを重んじて使いやすさが損われる、つくりやすさを重んじて、美しさが損われるなど。

    ・ユーザーの多くはマニュアルを読まない。その傾向を、デザインする人は考慮に入れるべき。

    ・わざと使いづらくデザインする場合もある。(軍事施設のボタンや、福祉施設のドアなど)
    ただし一つの安全を回避して、また別の安全を脅かす可能性があることは忘れてはいけない。(開けづらいドアは非常時には危険)

  • 人間中心のデザインに関する「原点」ともいうべき一冊。さすがに初版1990年とあっては古く感じる解説もあるが、普遍の要点がおさえられている。「ユーザーの意図とフィードバックの関連性」「エラーは必ず起こる。損害を最小限にすること、元に戻せるようにしておくこと」「人は自分に問題があればその原因を環境に求め、他人に問題があればその人の性格に原因を求める」「良いデザインに必要な要素とは、可視性、概念モデル、対応付け、フィードバック」これらにあてはめて考えると、iPhoneなどが実によくできていることがわかる。

  • 私たちの身の回りにあるものでも、使い方が分からなくなったり、間違えたりすることがある。しかし、原因は自分ではなく「道具のデザイン」にあると筆者は主張している。本書は、そんな道具の心理学の本である。

  • 誰かに何かを提供するという行為はモノづくりに限らず少なからずだれでもやっていることであるけど、そうした人は読むべき良い本だ。事例は古いが、何が分かりやすく使いやすくて、何が分かりにくく使いにくいのがが明確に書かれている。設計やデザインに対する考え方がしっかりする。

    自分の周りを見ても、良くないデザインはたくさんある。京王線の女性専用車両の対象時間帯の案内、テレビのニュース番組の解説パネル、上げれば出るのか下げれば出るのかいつまで経っても間違う実家の蛇口、ツマミをひねると自分がイメージする場所じゃない場所に火がつく家のコンロ、どこを押せばどこが消えるか分からないオフィスの電気、deleteを押そうとして電源を落としてしまうMacBookなどなど。

    ユーザが間違ったとき、人は使い手の習熟不足やミスだと思うが、その考え方は捨てるべきで、一にも百にも設計、デザインが悪いと言える。

    本にはこんなことが書いてある。
    「エラーに対する態度を変えてみるべきだ。それを使っている人は作業をしようと試みているのであって、そのために不完全ながら目標に少しずつ近づいてきているのであると考えてみること。ユーザがエラーを犯していると考えるべきではない。ユーザの行動は望んでいることに少しずつ近づこうとする試みであると考えること。」

    また、1988年に出された本にも関わらず、iPhoneやクラウドを予見したかのような内容は、先見の明というよりも「デザイン」というものを誰よりも正しく理解し、その進む未来を当たり前のごとく捉えたような感じで感嘆と言わざるを得ない。

  • システム屋さんが設計する前に読むべき本。システムはなんであるべきか示されてる。

  • 「ー」

    初めて手に取ったのはいつだろうか。面白いが、重厚な本でした。本日読み終わりました。

    デザインは誰のためにあるのか。デザインの美しさを求めるあまり、どのように使うのか分からなくなってしまった。本書は、そのように実用性を排除した作品について触れ、認知的考察から見て、そういったデザインの作品は使いにくいと言う。あなたが間違えたのは、あなたに原因があるのではなく、そもそものデザインが悪いのだ。

    人間は間違える。だから、いかにデザインで間違えを減らすことができるのかが重要なはずなのに、多くのものは逆に間違いを誘発する。

    いろんな例がでてきて、これは使い方分からないよなー、とか思いながら楽しく読めます。

  • 認知心理学者ドナルドノーマン氏が、身近な例を持って、デザインとはなんたるかを解説してくれる。
    二十年以上前に書かれた本なので、当時ほどひどいデザインのプロダクトは溢れてないのかなとは思うけど、それでも現在のプロダクトのユーザーインターフェイスデザインにもまだまだ足りてない、重要な提言をしている。

    数年前に購入したが、ようやく読破。

    あと、こういう古い本にもAppleさんはよいデザインをしているとして紹介されたり、または認知心理学上の概念を説明されると自然とAppleの戦略や思想を連想させられたりして、さすがだなあと思った。

  • 【デザインを新しい観点から語る】
    原子力発電所の操作ミスや工場の爆発など、一つのミスが多くの人の命を奪ってしまうケースは、過去何度も存在している。また、身近なケースでも、間違ってファイルを保存せずにデータを閉じてしまったり、車のアクセルとブレーキを踏み間違えてしまったり・・・と枚挙に暇がない。

    これらの原因は、殆どヒューマンエラーだとされ、デザインが悪い!デザイナーが悪い!という結論に至ることは殆ど無いのが現状だ。

    しかし、本書によれば、人間が引き起こしてしまうエラーの原因は、デザインにもあるということを指摘している。

    デザインとは、1)ユーザーが何をしたら良いかわかるようにしておくこと2)何が起きているのかをユーザーにわかるようにしておくこと。この2つが必ず必要であるとしている。

    今、自分の身の回りの道具を見たとき、この2つの条件を完璧に満たしているものは、どれだけあるだろうか。

    例えば、最新のテレビ。リモコンには、一生使用しないようなボタンが無数に取り付けられ、メインで使用するボタンを押しにくくすらしている。また、例え勇気を振り絞って、よく分からないボタンを押したとしても、何が起きたのか分からず、結局よく分からずじまいになってしま
    う。

    デザインに興味がある方や、これから商品企画に携わる、もしくは携わりたいという方は、必読の書である。

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