単一民族神話の起源―「日本人」の自画像の系譜

著者 :
  • 新曜社
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レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788505285

感想・レビュー・書評

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  • 未だに、思想史や社会史の世界で過小評価されているように思える一冊。
    明治から戦後初期までの日本民族起源論を検討し、通史的にまとめた論文。文学とマルクス主義を除いた知識人の言説を網羅的に目配りし、政治利用された民族起源論と無批判に用いられる単一日本民族論の不毛さを明らかにする。
    これが修士論文だというのだからすごい。彼は岩波の編集者だったから、多分出発点は和辻と『世界』なのだろう。このような、実証的かつ大きな見取り図をもった研究が、もっと出てきてほしいと思う。

  • この著者の史料集めには毎回のことながら脱帽しているが、著者の修論においてもその努力が極まっていて、その一つのことを論じるために多くのことを調べることに努力を惜しまない能力はもはや才能であるとさへ感じた。うらやましい限りである。

    内容に関しては、現代の日本においては日本は単一民族国家であるという固定観念が膾炙している一方で、戦前においてはむしろ日本は混合民族国家であるという説が流布していたということにまず驚いた。そのことについて歴史学や人類学、民俗学からそれぞれ論じられているが、最も気になったのは喜田氏による日本人論である。部落や朝鮮人を「日本人」と同化させることで差別を彼なりに解消しようとした「純真」な心とその自己矛盾については歴史の限界と皮肉を感じざるを得なかった。

    結論部に表れているように、著者はすべての物事に対して神話的要素や思考停止を認めず、一貫して批判的である。その姿勢は見習うべきものである。最後の言葉である「異なるものと共存するのに、神話は必要ない。必要なものは、少しばかりの強さと、叡智である」という言葉には素直に感動した。

    著者はその鋭いテーマを選びの眼力とその努力の才能をもって多くの分野で活躍してもらいたい。

  • 内容としては、副題の「日本人の自画像の系譜」の方が合っている気がする。販促効果を狙って、キャッチーなタイトルにしたのだろうか。
    単一民族論だけを神話と呼ぶのは、中立的な立場に立ちつつも、筆者の真の意図は単一民族神話の批判にあるからなのだろう。ただ、中身は至極全うで面白い。
    単一民族論の形成に和辻哲郎が大きな役割を果たしたというのは、本書で初めて知った。現代日本で彼の評価が高い気がするのは、単一民族論が今なお幅広く支持されているからなのか。

  • 単一民族神話の起源―<日本人>の自画像― 小熊英二 新曜社
    「日本は単一民族の国家である」というのはいくたびか「統治者側」によって口走られた言葉である。そして、それは
    多くの「日本人」の持つ自負を含む幻想である。しかし、「単一民族」に限らず、こうした幻想は根深く私たちの中に巣
    食っている。「もういい加減にしたい」という思いを、本学科の学生とこそ共有したいという思いから、最後にこの著作を
    推薦図書として挙げておきたい。(2010:清水均先生推薦)

  • 774夜

  • ゼミ

  • 「日本は単一民族だから・・・」というフレーズを良く聞く。

    本当に日本は単一民族なのか、また単一民族であるという認識は古来より持っていたものなのか。

    最高に面白い。

  • 高校生のとき読んだからね
    本をさかさまにしてよんでやっと解ったかんじかね

  • 本書は,大日本帝国時代から戦後にかけて,「日本人」の支配的な自画像といわれる単一民族神話が,いつ,どのように発生したかを歴史学的に調べ,その機能を社会学的に分析したものである。最後の『結論』の『神話からの脱却』についての一節の「異なる者と共存するのに,神話は必要ない。必要なものは,少しばかりの強さと叡智である」の部分が読み終えたあと印象に残った。

  • 修士論文にしてこの分野の標準的な文献となっている著者の力量に脱帽。日本は単一民族であるという「神話」が近代日本においてどのように形成されていったかを、さまざまな人物に商店を当てて描いている。キリスト者の内村鑑三なども扱っており、著者の理解の正確さに驚いた。

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著者プロフィール

1962年東京生まれ。東京大学農学部卒。出版社勤務を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。学術博士。主な著書に『単一民族神話の起源』(サントリー学芸賞)、『<民主>と<愛国>』(大仏次郎論壇賞、毎日出版文化賞、日本社会学会奨励賞)、『1968』(角川財団学芸賞)、『社会を変えるには』(新書大賞)、『生きて帰ってきた男』(小林秀雄賞)、A Genealogy of ‘Japanese’ Self-Imagesなど。

「2019年 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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