単一民族神話の起源―「日本人」の自画像の系譜

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  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788505285

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通りの内容です。
    「歴史」は「神話」と親和性を持つことを物語る内容は、とても興味深いです。聞くところに寄ると、この本は著者の博士論文がベースとなっているようです。そのためか、ガツガツと歴史資料が並べ立てられ、取っつきにくい印象があります。ただ、たたみかけるような後半の考察は、とても面白く読めました。なるほど、と。
    近現代日本史、または歴史そのものに興味ある方、どうぞ。

  • 日本は大昔から続く単一民族の国家である、というようなことは、つい数十年前の戦前戦中戦後しばらくの間でも、まったくいろんな意見があって、ちゃんとした結論が今に至っても存在しないことがよくわかる。「結論」でとてもよくまとまめられているので、それだけでも読んでみるとよいです。そのうえで歴史的な流れや詳細を知るために本編を読む、というのもあり、な気もします。いろいろ知らないこと、発見が多かった。

  • 非常に面白く、民族に関する諸説がまさに「神話」であることを納得させられる。
    これが修士論文とは…すごい。

  • だーっ
    読み終えた
    かなり、時間がかかった
    電車移動中に読むにはきつい本だった
    しかし、これは素晴らしい読書だった
    良心だ
    結論が凄い
    この400ページのあとに、こういう結論を出せるかと思った
    だとすると、この人は凄いことを考えてる
    と、思ったら、あとがきにそう書いてあった

    感動の結論を極端にして要約して書くと、
    「単一民族神話も混合民族説も、言ってたことは全部、ロールシャッハだ、だから神話なんだ」
    と。
    思わずジムジャームッシュのパーマネントバケーションの冒頭の星座の話を思い出したら、そのあとに、星座だって書いてあって我が意を得たりってやつでした
    名著

  • そもそも第二次世界大戦前までは単一民族論は少数派であったこと、差別解消を目的とする良心から生まれた混合民族論が大日本帝国の「侵略(あえていおう)」の論理になってしまったこと、いずれもこれまで描いていた主流とされる日本人論のイメージとは異なり、いかに自分の「常識」が時代の主流に知らず知らず組み込まれているかがよく理解できた。英語文献のアーティクルにも多数引用されており読みたかった本がやっと読めました。

  • 『単一民族神話の起源 ――「日本人」の自画像の系譜』
     The myth of the Homogeneous nation
     小熊英二(1962-)
     新曜社 1995年07月


     【メモ】
    ・出版社のページ
     <http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0528-2.htm
    ・1996年に社会・風俗部門でサントリー学芸賞受賞。(青木保 評)
     <http://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/1996sf2.html
    ・せいごー評。
     <http://1000ya.isis.ne.jp/0774.html
    ・異端的考察
     <http://critical-thinking.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-79eb.html

     【メモ 2】
    ・誤植(@出版社HPに掲載された目次)
    9章4節 :「全部」→「前部」


     【目次】
    序章
    問いの設定/「単一民族神話」の定義/社会学と歴史学

    第一部 「開国」の思想
    第1章 日本民族論の発生――モース・シーボルト・小野梓ほか
    欧米人学者の日本民族論/日本の人類学と欧米人学者への反発/ナショナリズムの二つのかたち
    第2章 内地雑居論争――田口卯吉・井上哲次郎
    モデルとしてのアメリカ合衆国/海外進出は不可能/「日本国民の同化力」
    第3章 国体論とキリスト教――穂積八束・加藤弘之・内村鑑三・高山樗牛ほか
    国体論の隆盛/キリスト教系知識人の反論/同化政策か純血維持か/追いつめられる国体論
    第4章 人類学者たち――坪井正五郎ほか
    純血論への批判/世界への進出
    第5章 日鮮同祖論――久米邦武・竹越与三郎・山路愛山・徳富蘇峰・大隈重信ほか
    天皇家朝鮮渡来説/「島国根性」と「南種北種」/「故郷」への進出
    第6章 日韓併合
    新聞での論調/主要雑誌の論調/国体論者の転向

    第二部 「帝国」の思想
    第7章 「差別解消」の歴史学――喜田貞吉
    被差別者への共感/差別解消としての同化/「四方の海は皆同胞である」
    第8章 国体論への再編成――国体論者の民族論
    国体論の混乱/混合民族論のとりこみ/「養子」としての異民族/「開かれた血族団体」
    第9章 民族自決と境界――鳥居龍三・北一輝・国定教科書ほか
    民族自決論の中和/鳥居龍蔵の日本民族起源論/教科書の変遷/「朝鮮人の名を全部日本名に変ずべし」
    第10章 日本民族白人説――ギリシア起源説・ユダヤ起源説ほか
    「落胤」としての日本民族/あるボランティア
    第11章 「血の帰一」――高群逸枝
    詩人から古代史へ/母系性と異民族同化/「世界の家族化」

    第三部 「島国」の思想
    第12章 島国民俗学の誕生――柳田国男
    先住異民族としての「山人」/「山国」から「島国」へ/国民統合としての民俗学/「有りもせぬ全体」
    第13章 皇民化対優生学――朝鮮総督府・日本民族衛生協会・厚生研究所ほか
    純血な島国/皇民化政策を支える混合民族論/厚生省と優生学系勢力/純血と総動員の矛
    盾/単一民族人類説の台頭/「混血ニ対スル処置ヲ講ズベシ」
    第14章 記紀神話の蘇生――白鳥庫吉・津田左右吉
    大陸の分裂・島国の団結/記紀は史実ではない/単一民族の記紀解釈/権力支配としての中国/権力無き天皇国家
    第15章 「血」から「風土」へ――和辻哲郎
    北種と南種の総合/自然児の世界/複合的な単一風土/国境をこえない天皇制
    第16章 帝国の崩壊――大川周明・津田裁判ほか
    戦時期の混合民族論/純血論の台頭/ダブルバインド状態
    第17章 神話の定着――象徴天皇制論・明石原人説ほか
    農業民の世界/国民統合の象徴/明石原人説/単一民族論に傾く戦後歴史学/受容されなかった騎馬民族渡来説/忘却された混合民族論

    結論
    社会学における同化主義と人種主義/「日本人」概念について/近接地域・同人種内の接触/家族制度の反映/保守系論者の単一民族論批判/神話からの脱却

    あとがき 

  • この著者の史料集めには毎回のことながら脱帽しているが、著者の修論においてもその努力が極まっていて、その一つのことを論じるために多くのことを調べることに努力を惜しまない能力はもはや才能であるとさへ感じた。うらやましい限りである。

    内容に関しては、現代の日本においては日本は単一民族国家であるという固定観念が膾炙している一方で、戦前においてはむしろ日本は混合民族国家であるという説が流布していたということにまず驚いた。そのことについて歴史学や人類学、民俗学からそれぞれ論じられているが、最も気になったのは喜田氏による日本人論である。部落や朝鮮人を「日本人」と同化させることで差別を彼なりに解消しようとした「純真」な心とその自己矛盾については歴史の限界と皮肉を感じざるを得なかった。

    結論部に表れているように、著者はすべての物事に対して神話的要素や思考停止を認めず、一貫して批判的である。その姿勢は見習うべきものである。最後の言葉である「異なるものと共存するのに、神話は必要ない。必要なものは、少しばかりの強さと、叡智である」という言葉には素直に感動した。

    著者はその鋭いテーマを選びの眼力とその努力の才能をもって多くの分野で活躍してもらいたい。

  • 「日本は単一民族だから・・・」というフレーズを良く聞く。

    本当に日本は単一民族なのか、また単一民族であるという認識は古来より持っていたものなのか。

    最高に面白い。

  • 「日本は古来から単一民族によって形成されてきた」という「神話」はいかにして生まれたのか?大日本帝国による統合理論とは?

著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:歴史社会学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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