「日本人」の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで

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  • 新曜社
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (778ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788506480

作品紹介・あらすじ

話題作『単一民族神話の起源』から三年。琉球処分より台湾・朝鮮統治をヘて沖縄復帰まで、近代日本の100年にわたる「植民地」政策の言説をつぶさに検証し、「日本人」の境界とその揺らぎを探究する。

感想・レビュー・書評

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  • 161208-170111

  • ◆〈日本人〉とは何か
     沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮という,近代日本が時に日本人とし時に非日本人としてきた人々をめぐる政策と言説の揺らぎを詳細に検討して,この問いを追求する。国家とは何か,国民とは何かを真剣に考えようとする人々に必読の書。
    http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0648-3.htm

    【目次】
    序章 
    「日本人」の境界変動/「日本」と「植民地」、そして「欧米」/「包摂」と「排除」/「政治の言葉」と「表現されえないもの」


    第1章 琉球処分―「日本人」への編入
    「国内に人類」への統合と排除/外国人顧問の提言/「日本人」としての琉球人/歴史をめぐる争い
    第2章 沖縄教育と「日本人」化―同化教育の論理
    旧慣維持と忠誠心育成/「文明化」と「日本化」/歴史観の改造
    第3章 「帝国の北門」の人びと―アイヌ教育と北海道旧土人保護法
    国境紛争から「日本人」へ/〈日本人の住む土地〉/宣教師の脅威/「漸化」という論理/北海道旧土人保護法の成立
    第4章 台湾領有―同化教育をめぐる葛藤
    台湾統治の混迷/外国人顧問の同化反対論/「殖民地」か「非殖民地」か/国防重視論と対欧米意識/「日本人」化教育の開始/巻き返す非同化論/「漸進」という折衷形態
    第5章 総督府王国の誕生―台湾「六三法問題」と旧慣調査
    〈事実上の立法権〉/〈台湾自治王国〉構想/折衷としての「法律でない法律」/議会側の反発/「日本人」の意味/後藤新平の台湾王国化/根拠不明の独裁支配
    第6章 韓国人たりし日本人―日韓併合と「新日本人」の戸籍
    踏襲された折衷案/「漸進主義」の教育/国籍における排除と包摂/同化言説の完成


    第7章 差別即平等―植民地政策学と人種主義
    フランス同化主義と啓蒙思想/ル・ボンと同化主義批判の台頭/「生物学の原則」/「自治」と「離隔」/「自主」のジレンマ/二つの差別の間
    第8章 「民権」と「一視同仁」-植民地と通婚問題
    「一視同仁」の高唱/「植民者民権」の出現/通婚と「日本人」
    第9章 柳は翠、花は紅―日経移民問題と朝鮮統治論
    錯綜する論壇の統治批判/デモクラットの文明的同化主義/大アジア主義者の分化多元主義/自由主義者の分離主義/「民族問題」隘路
    第10章 内地延長主義―原敬と台湾
    文明化としての「日本人」/「日本」編入のモデル/総督府の抵抗と「漸進」/頓挫した統治改革
    第11章 統治改革の挫折―朝鮮参政権問題
    総督府による統治改革/自治か参政権か/〈総督府の自治〉の浮上


    第12章 沖縄ナショナリズムの創造―伊波晋猷と沖縄学
    沖縄にとっての同化/二重のマイノリティ/防壁としての同祖論/沖縄ナショナリズムと同祖/排除と同かの連鎖/啓蒙知識人として/挫折した沖縄ナショナリズム
    第13章 「異身同体」の夢―台湾自治議会設置請願運動
    権利獲得としての「同化」/多様性への願望/植民政策学の読み換え/キリスト教徒とアジア主義者/多元的な日本、多元的な台湾/「憲法違反」の限界/引き裂かれた請願運動
    第14章 「朝鮮生まれの日本人」-唯一の朝鮮人衆議院議員・朴春琴
    「日本人」としての権利/内地在住朝鮮人の参政権/「我等の国家」への屈折/「一視同仁」の壁/虚像の「日本人」
    第15章 オリエンタリズムの屈折―柳宗悦と沖縄言語論争
    オリエンタリズムとしての「民芸」/沖縄側の猛反発/「西洋人」としての方言擁護/「日本人」の強調/沖縄同化の最終段階
    第16章 皇民化と「日本人」-総力戦体制と「民族」
    「朝鮮」の否定/民族概念の相対化/平等と近代化の期待
    第17章 最後の改革―敗戦直前の参政権付与
    境界を揺るがす三要因/遺跡問題の浮上/超えられなかった臨界/「日本人」という牢獄


    第18章 境界上の島々―「外国」になった沖縄
    「少数民族」としての沖縄人/「琉球総督府」の誕生/「アメリカ人」からの排除/「日本人」であって「日本人」でない存在
    第19章 独立論から復帰論へ―敗戦直後の沖縄帰属論争
    沖縄独立論とアメリカ観/保守系運動としての復帰/帰属論議の急浮上/揺らぎの中の帰属論
    第20章 「祖国日本」の意味―一九五〇年代の復帰運動
    人権の代名詞としての「日本人」/親米反共を掲げた復帰運動/日本ナショナリズムの言葉
    第21章 革新ナショナリズムの思想―戦後知識人の「日本人」像と沖縄
    「アジアの植民地」としての日本/「健全なナショナリズムの臨界」/単一民族史観の台頭/「植民地支配」から「民族統一」へ/民族統一としての琉球処分/非難用語となった「琉球独立論」
    第22章 一九六〇年代の方言札―戦後沖縄教育と復帰運動
    復興活動としての復帰/方言札の復活/「日の丸」「君が代」の奨励/憧れと拒絶の同居/「祖国は日本か」/政治変動と転換と
    第23章 反復帰―一九七二年復帰と反復帰論
    琉球独立論の系譜/復帰の現実化/「仮面」への嫌悪/独立論との距離/「否」の思想

    結論
    後発帝国主義としての特徴/国民国家における包摂/公定ナショナリズム/「脱亜」と「興亜」/分類外の曖昧さ/被支配者の反応/有色の帝国

    あとがき

  • 沖縄、北海道、台湾、朝鮮の統治の状況を言説から分析した本。北海道と沖縄の併合からわずか10年後に台湾統治が、そしてそのすぐあとに朝鮮併合があり、当時の日本にとっては沖縄と北海道併合の延長線上に台湾、朝鮮併合を捉えていたことがわかる。その結果、台湾、朝鮮併合の正当性について大きく悩むことはなく、一方で沖縄、北海道であったことと同様、大和民族とそれ以外のエリアの民族との間で権利として平等運用は行わなかったことが描かれている。対外的には主権国家として同一民族(出自は同じ。もしくはアジア人論を創造)を主張しつつ、民主主義としては二級民族認定し、戸籍の別途運用、選挙権非付与を貫いた。差別については、「民度」が低いという文明的発想と、ナショナリズムが混在している。台湾、朝鮮統治においては、総督府が内閣ではなく、天皇に直結した組織だったことが、のちの陸軍の暴走につながったと、法制面の分析から、太平洋戦争の政治的背景を推測する上でも役に立つ。

  • 若いながらなかなか素晴らしい著者です。著者の博士論文が出版されたものです。日本人であって日本人でない人たち。戦前の朝鮮・台湾人がそうでした。日本帝国の勝手な理屈により、都合が良い場面では「日本人」とされながら参政権が与えられなかった人たちと、逆に日本に同化しようと努力し、完全に日本人になった琉球人(沖縄人)との差を生んだ理由は?戦前の在日朝鮮人が選挙権を獲得するに至った歴史、また在日唯一の衆議院議員になった人物のアンビバレントな悩みを書いた章も複雑な気持ちにさせられます。彼は完全な日本人になろうとして逆に不幸な最後を迎えます。沖縄復帰を巡る沖縄県民の複雑な心理の動き(薩摩藩による琉球処分以来の日本帰属は短期間であり、しかも20世紀までは通常の参政権もなかったのにも関わらず、また戦中の沖縄戦の悲惨な経験もありながらなぜ日本に復帰したいという運動があれほどまでに盛り上がったのか)にも詳しく、ちょうど沖縄戦役終了60周年の記念日(6/23)に相応しい読書になりました。これまた790㌻の長大論文で読むのに1週間を要してしまいすっかり疲れましたが、靖国問題が焦眉の急を告げていることもあり、そういう観点からも大変興味深く読むことができます。アイヌ問題は沖縄と異なり、完全に日本に取り込まれてしまった歴史ということもあり残念ながら詳しくありません。

  • 風船に息を吹き込んで膨らましたりそれがへこんだりってのににていると思った。

  • だってウチナンチュだもの

  • 『「日本人」とはどこまでの範囲を人々を指す言葉であったのか。』,『その「日本人」の境界はどのような要因によって設定されてきたのか」』ということが本書の主題であり,近代日本の境界領域にあたる沖縄,アイヌ,台湾,朝鮮などに関する政策論を検証することにより,「日本人」のナショナル・アイデンティティの問題を考察したものである。

  • 実は全部読んでいません…時間ができたら再チャレンジします。

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著者プロフィール

1962年東京生まれ。東京大学農学部卒。出版社勤務を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。学術博士。主な著書に『単一民族神話の起源』(サントリー学芸賞)、『<民主>と<愛国>』(大仏次郎論壇賞、毎日出版文化賞、日本社会学会奨励賞)、『1968』(角川財団学芸賞)、『社会を変えるには』(新書大賞)、『生きて帰ってきた男』(小林秀雄賞)、A Genealogy of ‘Japanese’ Self-Imagesなど。

「2019年 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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