- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788506794
作品紹介・あらすじ
アメとムチはもう利かない! 人の意欲と能力を伸ばす力は何か? アメとムチというのが従来の常識ですが、近年の心理学の研究はこの常識を否定し、課題に自発的にとりくむ「内発的動機づけ」と、自分が自分の行動の主人公となる「自律性」の重要性を実証しています。では内発的動機づけと自律性はどうしたら伸びるか、その成長をたすける方法は何か。説得的な事例に富み、研究成果への柔軟で深い洞察、現代社会の鋭敏な観察から書かれた本書は、自己の成長を願う人々はもとより、成長をたすける立場にある親や教師、カウンセラー、管理者にとって、人間観がひっくりかえされるような読書経験となるでしょう。
WHY WE DO WHAT WE DO,The dynamics of personal autonomy,1995.First Published by G.P.Putnum's Sons,New York
感想・レビュー・書評
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紹介されて読んだ本。紹介してくれた人に感謝したい。これは、本当に読んでよかった。
とは言っても、わかりやすい本というわけではない。心理学の本で、作者はずいぶんかみ砕いてくれているのだと思うけれど、ぼけっと読んでいるとなかなか頭に入ってこない。研究書なのだ。
うんと簡単に言うと、なんでやる気のない人っているんだろうってことだ。知的好奇心とか意欲とか、そういう大事なものをどっかに置き忘れてしまうようなことがどうして起きるんだろうという話。それを、長い長い時間をかけて実証的に検証した記録である。説得力がある。
たとえば、「外的報酬は内発的な動機付けを阻害する」、つまり「ちゃっとできたらご褒美をあげるよ」というのは、かえってやる気をそぐってことだ。意外な気がするけど、確かにそうかもしれない。
人間には、「自律性への欲求」「有能さへの欲求」「関係性への欲求」があって、そういうものがやる気を支えているという。その中でも特に「自律性」、つまり他人から押しつけられたのではなく、自分の意志で行動しているのだという思いが、人の意欲に大きく影響しているというのだ。
いろんな側面で人を抑圧する環境の中では、人はやる気をもって生きることが難しい。教育だって、(やり方よっては)もうどうしようもないくらい抑圧してしまうわけで、どんどんどんどん、元々持っていた意欲のようなものを奪い去ってしまっている面が確かにあるかもしれないと思う。
今までいろんな場で感じていたことを、きちんと整理して提示してくれたような気がした。それとは別に、目からウロコが落ちるような気持ちになった部分もたくさんあった。
紹介してくれた人が言っていたように、特に教育関係の仕事に携わる人にとっては、必読書のひとつなのではないかと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私たちが行動するときの要因を、「自律」と「統制」に分け、自律的な生き方の優位性を強調する。
もっとも、自律的に行動することは大変困難だ。私たちは集団生活の中を生きており、その中には様々な規範があり、関係性があり、また金・地位・名声・娯楽といった誘惑がある。
そのような環境下で、自律的に生きるために重要なのが、「自分の内的世界に関心を持つこと」である。そして、偽りのない自分として、選択し、目標を定め、物事を受容することである。
真の自分として生きること。そのことが、自分自身にとって、ひいては周りの人にとっていかに幸福に繋がるかを実感する素晴らしい本である。 -
内発的動機づけ、自律性、有能感、関係性への欲求、統制や報酬のデメリット、等々、自分自身について振り返ったり、あるいは、スポーツのチーム、職場、家庭でかかわった(かかわっている)選手、若人、子供のことを考えると、腑に落ちる。ただ、成果主義とか、公正な評価とか、そういうことが意識の上でも組織体制の上でも流行っている世の中や組織だと、なかなか受け入れられず、「きれいごと」に思われがちかな。人間の本質をついていると思うんだけど。しかも米国人がこういう本を書いているんだけどな。小生が世間知らずであまっちょろいだけなのか。
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人はみな学ぶ意欲をもっているがいつのまにか失っている。その原因のひとつに環境があるだろう。
人が学びたいと思える内発的動機は自律性に関係がある。人から統制されると自律性はなく、興味や関心が次第になくなる。
ではどのように内発的に動機付けるべきか。内発的動機付けには「できる」という体験と有能感が必要である。自分にとって価値のある体験かどうかが関係している。しかし、それは統制されるものではダメである。自分で選択できている状況だとしても、外部の圧力がかかっている場面では自律的に選択した場面とは言えない。
人を伸ばすということは自律的な人、すなわち人を思いやり自分の感情を調整できる人にそのような圧力をかけず、経験を選択できる場面を作ってあげることが大事なのではないかと考えさせられた。 -
・ほめことば、報酬、制限は、内発的動機づけを低下させることなくそれらを用いるためには、統制の要素を含むことば(「期待に応える」「すべきことをする」等)、相手を統制するようなふるまい、相手を統制しようとするもくろみを極力排除する努力が必要(義務や期待に触れず、社会的に比較する情報をいっさい含まず、ただ「とてもよくできた」などと言う)
・有能さ自律性の両方の感覚を感じることができるような挑戦の機会を提供することによって、生命力、動機付け、満足感を促進することになる
・自律性とは、自己選択の感覚や柔軟さ、自由さを感じながら、意思をもって何らかの行為を行うということである
・効果的に自律性の支援を行う管理職や教師は、部下や学生に意思決定をする役割を与える。仕事の内容について選択させるのが容易でなければ、仕事のやり方を選択させる。部下にどのように仕事を進めるかを決めさせる
・権威ある地位の人が管理的であると、支援されるはずの人たちからやる気を奪う
・生きていることの本当の意味は、単に幸福を感じることではなく、さまざまな人間の感情を経験することである
・真の自己は自律性と関係性の両傾向をそなえているため、他社を受容し、その環境を尊重する
・内発的動機づけのみなもとは「自律性への欲求」「有能さへの欲求」「関係性への欲求」。自律的でありたい、有能でありたい、周囲の人と暖かい人間関係を持ちたい
・大切なことは「相手の立場になって、自律性を援助すること」 -
最近読んだ100冊の中でトップレベルの良書。上司、親、そして先生と呼ばれる全ての職業の人に読んでほしい。
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素晴らしい一冊。
部下や生徒、子どもなどの支援の対象者をどのように動機づけたらいいのか。このような問いのたて方では、この重要な問いに答えることはできない。正しい問いは「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」と問わなければならない。
内発的動機づけとは、その活動自体の楽しさ、魅力によって好奇心、集中力、意欲がかきたてられる状態を指す。
デシは内発的動機づけのための3つの条件として、自律性、有能感、関係性(社会、他者との絆)の3つをあげている。金銭的な報酬は、その与え方によっては自律性の感覚をそこなう危険性がある。ただし、意欲やその活動自体の楽しさに対し悪影響を及ぼしかねないものとして、本書は単に金銭的な報酬のことだけを言っているのではない。
金銭的な報酬のみでなく、「外的な報酬」をさらに拡大し、圧力、統制、賞賛、競争心、名誉などの危険性についても述べている。それらは自律性だけでなく、有能感もそこなう危険がある。それらにより人の内面にはこだわりが形成され、服従、反抗、内的圧力等を引き起こす。競争や賞賛によって強化された「随伴的な自尊感情」は、人間として健全な「真の自尊感情」とは異なる。「随伴的な自尊感情」は大きな代償を伴うという。
また、社会規範等を含む価値観の内在化の二つの形態として「取り入れ」と「統合」をあげている。真に統合されたのではなく、「取り入れ」によってよく噛まずに飲み込まれたような場合には、その「取り入れ」られた価値観が内的圧力となり、自我関与を引き起こして「完全に機能する人間」「偽りのない真の自分」であることを妨げるという。
内発的な動機づけをつきつめていくと、「完全に機能する人間」「機械ではなく能動的な生命体である人間」にたどりつく。「人が真にあるがままにいきることができ自分の可能性を開花させることができるようになれば人は偽りのない自分を生きることができる」
真の自分自身、偽りのない自分自身であろうと求め尽くすこと、自分の可能性を完全に開花させること、それを内的圧力によってでなく、自分の内面をみつめ対話することで追求すること、幸福を求めるだけでなく様々な人間の感情を体験することが生きていることの本来の意味であるという見方。それらは仏教や禅の思想にも通じるものだと感じた。
本書には、「上の地位にいる人が自分自身の自律性を支援されなければ、彼らの生徒や子どもや部下の自律性を効果的に支援できない」とある。わたしの仕事は、支援すること、ファシリテートすることである。その私自身は本当に自律的であるか?内発的に動機づけられているか?生命体として、人間として完全に機能しているか? そういう問いをもって読み始めた本だったが、まさに私の問いに対しての示唆やヒントが満載されていた。特に「取り入れ」、「自我関与」、「随伴的自尊感情」に関するところでは、読みながら何度もどきっとした。
この本から派生して次に読みたい本として注文したのは「カールロジャーズ入門ー自分が自分になるということ」(諸富祥彦 コスモスライブラリー)
<トリガーワード>
プレッシャー ストレス 統制 自律的
反抗と服従は統制にたいする補償的反応
偽りのない自分 内的プレッシャー 上下の関係
正しい問いはどのように動機づけるかではなく、「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」
有能感 報酬 ソマパズル
自分自身の行為の源泉 自己原因性 選択の機会
報酬を与える人の態度 プレッシャーと統制 競争
他者の自律性を支える
活力 フロー 外的な統制との対極
行動と結果を結びつける仕組み 有効な随伴性
有能感 最適な挑戦 肯定的なフィードバック
生命的な統合 絆
心理的に自由な完全に機能する人間
取り入れと統合
自律性への支援と自由放任
自我関与 自尊感情 外発的意欲
外発的価値の統合 自律性の支援
許容範囲 報酬と表彰
人間の自由とは真に自律的であることを意味する
真の自由とは環境をかえることに前向きであることと環境に敬意を表すことのあいだにバランスを見いだすこと
人間の自由の中心にあるものは選択するという経験である。
<活性化質問>
1)目標をもって達成にむけて努力することと内発的動機づけはどのように共存できるのか?
2)私の中で自我関与が内発的動機づけを妨げていないか?
3)完全に機能する人間、心理的に自由な人間になるためにはどうしたらいいか?
4)内発的自己を探求するためにどうしたらいいか? -
この本には希望がある。なぜなら、自分たちのために、子どもたちのために、学生のために何ができるのか、社会のために何ができるのかを提示しているからである。
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この本にある内発的動機づけの概念を知ったことで、人材開発の面白さに目覚めました