アフォーダンスの心理学―生態心理学への道

  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788507432

作品紹介・あらすじ

ゾウリムシからヒトまで、有機体が世界と切り結ぶ広大な「サイコロジカルなこと」の総体を、生態と進化の視点から論じ切った初の体系的な心理学教科書。

感想・レビュー・書評

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  • 生態学と心理学、哲学などの分野をかなり大掛かりに縦断しながらアフォーダンスについて解説してある。

    アフォーダンスではおなじみのダーウィンによるミミズの行動の研究から始まり、「意味」や「行動」を掘り下げつつ、意識をアフォーダンスの視点から定義づける、とするとかなり大雑把な捉え方になるが、自然とのかかわりとしての人間という意味での意識や行動について新たな知識を得られたと思う。

    動機付けと感情の関係、価値、意味とはなにかについて考えることを試される一冊。

  • 5月新着

  • 私の生態心理学をカタチづくった書。伝統的心理学を飛び越えて、進化論、考古学的な検証にまで話を展開していく、間違いなく難解だけれども読んでいて心躍る一冊。細田氏の「ぼく」訳が素晴らしい。すぐ読み直したくなる佐々木氏による後書も必読。

  • ギブソンの考え方の重大な革新は、<情報>を生態学的なものとして捉えたこと―つまり、(生体内ではなく)環境内のエネルギー場の特別なパターンとして捉えたことにある。p10

    エコロジカルな<情報>を利用することによってぼくらは、自己の周囲と切り結ぶことができ、その切り結びを調整することができ、生きた世界における自己の活動を意識することができる。p11

    心理学は―ジェームズ・ギブソンがかつてそう看破したように―心でも、脳でも、行動でもなく、運動するものと運動しないものとの区別にはじまると考えられるべきなのだ。p35

    アフォーダンス群、そして、その相対的な利用可能性(または、利用不可能性)こそが動物個体の行動にかかる選択圧をつくりだす。ゆえに、行動は、ある動物の環境のアフォーダンス群との関係において調整される。p37

    アフォーダンスは行為の機会であって、原因や刺激ではない。アフォーダンスは利用可能であり、生物個体の行為を動機づけることもできるが、行動を引き起こすわけではないし、そんなことはできない。p39

    生態心理学は、他の科学的心理学の「原因」還元主義は捨て去るが、実験と経験的説明を重視する態度まで捨て去ることはしない。生態心理学のゴールは<エージェンシー>を説明不可能にすることでも、それについてただ語ることでもなく、それを科学的に解明することである。p39

    機械論的な隠喩は、行動の理解のためには著しく不適当なものである。それにかえて、ぼくが提案するのは、<調整>という有機的な隠喩である。行動と意識は、有機体が環境との切り結びを調整する道である。この調整を組織化する環境の諸側面がアフォーダンスである。アフォーダンスは、ある動物種の基本ニッチの一部である―つまり、アフォーダンスは環境がその動物種のすべての個体に提供する資源である。だから、アフォーダンスは行動を引き起こすのではなく、行動を可能にするのである。あるアフォーダンスを利用するには、有機体は環境のある部分と特定の関係を結ばなくてはならない。このように環境と特定の関係を結ぶことを、ぼくらは行動と呼ぶ。生態心理学は、運動力と知覚力の研究である。すなわち、有機体がみずから検知したアフォーダンスとの関係のなかでどのように行動を調整するのかを研究するということである。p60

    この生態学的アプローチのもっともラディカルなところは、動物をフィジカルなメカニズムとサイコロジカルな状態とに切断することの拒否である。これまでのあらゆる心理学それをしてしまいにっちもさっちもいかない状況に陥っていた。それらは価値と意味という重要な問題をあつかう限り、非自然的、あるいは非科学的なものでしかない。p200

    ヒトは、自分の生息場所を改変する方向へと特殊化してきた。ある生息場所に自分たちの欲しい、あるいは必要とするアフォーダンスがない場合、ヒトはしばしばその場所を改変し、そのアフォーダンスが利用できるようにするのである。p235

    変らないもの―それはそうした活動の生態学的基盤、すなわち、物質表面であり、物・場所・事象である。ヒトはそれらを発見し、組み合わせることによって、みずからが利用する必要のあるアフォーダンスあるいは利用したいアフォーダンスをつくりだすことができる。p246

    言語とは、観念あるいは表象の伝達手段ではない。それは情報を他者に利用可能にするための手段であり、それによって自身およびその集団の活動調整に寄与するものである。p326

    言語がこれほど強力な調整者である理由の一つは、人々に現在の環境状況だけではなく、過去や未来の環境状況を意識させるためにも利用できるからだ―これは変容され、集団化された一種の予期的制御である。ヒトのあらゆる発見のうちでも、これはひょっとするともっとも根底的な変化をヒトという種に引き起こしてきたのかもしれない。ヒトは自己の目的に合わせて、また直接的環境に依存しない新しい情報形式をつくるために、エコロジカルな情報を選択、改変、変形することができる。このため言語はしばしば、可能的、仮説的、虚構的な状態さえ他者に意識させるために使われる。p326

    自分の思考をいかに他者に知らせるかを学習することよりも、それをいかに他者から隠すかを学習することのほうがおそらくは難しいのである。p326

    生態学的な観点から見ると、言語は情報を選択し、他者に利用可能にする高度に特殊化された手段として役立っている。p327

    生態学的アプローチをとる場合、心理学は<動物個体とその周囲の切り結び>を解明すべき根本現象と見なさなければならない。だから、あらゆる主観主義は―経験的・解釈的であれ、生理学的・還元主義的であれ―斥けられる。

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