ワーキングメモリ―脳のメモ帳

著者 :
  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788508156

作品紹介・あらすじ

行動をみちびく記憶ワーキングメモリ。その概念の成立背景、モデル、機能、測定法、言語との関連、脳における神経基盤まで、ワーキングメモリのA to Z。

感想・レビュー・書評

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  • 人間の記憶の分類のうちで最もよく知られているものは,「長期記憶」と「短期記憶」であろう.これは,アトキンソンとシフリン(Atkinson & Shiffrin,1971)によって提唱された記憶の二重貯蔵モデルに由来するものである(さらにさかのぼると,ウィリアム・ジェームズ(James,1890)の一次記憶(primary memory)と二次記憶(secondary memory)という区別に行きつく).
    二重貯蔵モデルでは,短期記憶の情報をリハーサルすることによって,その内容を長期記憶に保持することができると考えられた.すなわち,短期記憶は長期記憶への情報の経路に位置しているとみなされたわけである.ところが,脳損傷患者で,短期記憶と長期記憶のどちらか一方にのみ障害をもつ症例が見られたことから,人間の記憶の構造を再度問い直す必要が生まれた.
    そこで考えられたのが,ワーキングメモリ(working memory)という概念である(Baddeley,1986).このモデルでは,言語化できない情報,つまり視覚的,空間的情報を視覚イメージを用いて保持する機能を有する視空間スケッチパッド(visuo-spatial sketchpad),しばらくの間だけ保持しておかなければならない情報を内的な言語の反復によるリハーサルを用いてそこにとどめておく音韻ループ(phonological loop)という2つのサブシステムが想定されており(これらは従来のモデルにおける短期記憶の部分に相当する),さらに,課題を遂行するのに必要な処理資源を確保したり,2つのサブシステムを調整したりすることにかかわる制御機構として中央実行系(central executive)が設定されている.
    二重課題実験を用いて,脳のどの部位がワーキングメモリの働きに関わっているのかが検討されているが,まだ完全に明らかになっているわけではない.しかし,たとえば中央実行系の働きには,前頭前野の上側にあたる領域の背外側部 (dorsolateral prefrontal cortex, DLPFC)が関わっていることが確認されている.ここはブロードマンの領野では46野,9野に相当するところである.
    神経基盤に言及している7章以降はやや難しいが,ワーキングメモリについて基本的なところを勉強したい人にはオススメの1冊である.

  • ワーキングメモリとは何かということが前半に分かりやすく説明されているので、導入本として良かった。

  •  内容は興味深いが、前置きが長く結論が最後に書かれている文章は非常に読みにくかった。2002年当時では結論を断定できるほど実験が進んでいなかったとも推測できるが。

  • リーディングスパンテストなどの成績の因子についての考察が主。神経基盤については幾らか機能局在を調べているのみで内部機構までは踏み入っていないが、これは 2002 年刊の為か。

  • 同じ学年担当の
    同じ出身大学の
    同じ年齢の先生が

    私がこの本を読んでいるのを見て

    「え~、僕もその本持ってる~。でも読んでないから、読む~。」
    と一言。


    彼は特別支援コーディネーターのお仕事をしてくれています。

    人とのつながりが読書をつなげてくれるって素敵ですね。


    読もう、読もう。
    本を読もう。

  • 専門書なので、難しい。
    何度も読み直さないと理解できない。

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著者プロフィール

国立研究開発法人情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター主任研究員

「2020年 『高齢者のもの忘れを測る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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