戦争が遺したもの

  • 新曜社
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本棚登録 : 220
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788508873

作品紹介・あらすじ

アメリカでの投獄、戦時下の捕虜虐殺と慰安所運営、60年安保とベトナム反戦、丸山真男や吉本隆明との交流…。戦争から戦後を生き抜いた知識人が、戦後60年を前にすべてを語る。

感想・レビュー・書評

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  • あくまで読者の視点ですが、対談の空気感が伝わるような構成はいいなって思いました。
    たとえば、あまりにきれいに纏まりすぎてる(1つの結論に皆で必死に向かっているような雰囲気の)ものや、対談者の裏の上下関係がうっすら窺えるような対談本もありますが、そういう胡散臭さがないなって。相手に敬意を持って、真剣に正直にぶつかってる感じが好きです。

  •  黒川創が「鶴見俊輔伝」を書きあげた今となっては、鶴見俊輔に関する一次資料のような位置になったのかなあ、そんな感慨を持ちますが、小熊と上野という、鶴見にとって次世代の論客(?)による、その時あなたはどうしたのかとでもいう感じの、鋭いツッコミに満ちたインタビュー?いや鼎談集。
     「ほんとうのこと」を言おうとしている哲学者と、「ほんとうのこと」を聞こうとしている、三人の掛け合いが、なかなか、絶妙。一気読み本ですよ。

  • 目次
     1日目
    原点としての生立ち
    ジャワでの捕虜殺害
    「従軍慰安婦」の問題
    雑談1 1日目夜

     2日目
    8月15日の経験
    占領改革と憲法
    『思想の科学』の創刊
    丸山眞男と竹内好
    50年代の葛藤
    戦争責任と「転向」研究
    雑談2 2日目夜

     3日目
    60年安保
    藤田省三の査問と女性史の評価
    吉本隆明という人
    アジアの問題と鶴見良行
    全共闘・三島由起夫・連合赤軍
    ベ平連と脱走兵援助
    雑談3 3日目

    http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0887-7.htm

  • 鶴見俊輔を囲んでの座談形式の記録。
    米国から戦時交換船で帰国することを選んだ動機、そして国家や性についての話題、60年安保…。
    上野千鶴子や小熊英二の話の引き出しもいい。

  • ただ鼎談を記録しているだけなんだけど、なぜこのような深い読後感がもたらされるのか。
    例えば父母との相克と和解の経緯、丸山政男への複雑な距離感、戦後世代である聞き手が慰安婦問題や「少年兵世代」への鶴見の思いを鋭くただす時に訪れたであろう沈黙。
    そして何度もリフレインする「ぼくは悪人なんだ」「やくざの仁義として」といった台詞にみられる生き方・世界観が最終版、ハーバード時代のホワイトヘッドの最終講義の最後のことばに収束していく、計算された構成ではこうはならない。
    鶴見自身のおそろしく細かいことまで覚えている記憶力とエピソードの再現力が一人の人間の生を歴史として読ませることに成功させている。

  • 小熊氏の著書は若手ながら、いつも戦後の文化人たちの深いレベルでの思想を体系的に追って説明してくれており、テーマの難解さにも関わらず、分かり易く理解しながら読むことができます。この本では、上野という1世代上の編集者と2人で、更にその上の世代の鶴見俊輔へのインタビューによる3者鼎談ですが、鶴見という人の個性が大変ヴィヴィッドに語られて素晴らしく楽しい本でした。鶴見が不良少年で、小学校しか出ずにハーバード大を出たというところまでの、何でも一番病だったという父・祐輔への反発がずっと成功してからも続くというのは、この人のべ平連などのバックボーンにつながっていることが良く分かりました。兎に角、この人は破天荒で面白いエピソードだらけ。15歳までに女性との放蕩をし尽くして、米国に渡ってからは全く女性を見ても反応しないように自分を創ってしまったというのは凄い話です。尊敬していた竹内好が東京工大を退職したことを知り、翌日追って東京都立大に辞表を提出したという逸話も楽しいです。鬱病になりながら桑原武夫によって京都大に留まることが出来たということも。その他、姉・和子、羽仁進、丸山眞男、清水徹太郎、西部邁、吉本隆明らの行動レベルから見た人間性と思想の説明も楽しいです。15年戦争が彼らの思想にいかに影響を与えているのか、そして60年安保も僅か15年後だった。そして70年前後の全共闘などの背景に迫る説明はその時代を生きた私にとっては大変新鮮です。

  • 戦後の激動期を生きた人々のリアルな思想を知ることが出来たと感じる。人生をいかに生きるべきかを知るための教科書になるような本。
    鶴見俊輔は、「やくざ的な仁義」を重んじ、思想や所属は関係なく、「信頼できる人間」を探し当てていた。

  • いっぱい 心に引っかかる「言葉」があった。
    イヤー。久しぶりにいい本に出会った。

    戦争から戦後の思想史が 鳥瞰 できる。
    こうやって ひとりの鶴見俊輔の人生を浮き彫りにするだけで
    時代がはっきりと見えるというのがすばらしい。
    上野千鶴子、小熊英二は 質問者 として優れている。

    原点としての成り立ちについて
    鶴見俊輔は 1922年(大正11生まれ)
    私の父親は 4歳年下なので 私から見ると父親世代である。
    そんな鶴見俊輔が 生い立ちにさかのぼって 自分のhistory を語ろうとする。

    鶴見俊輔には 母親という存在が大きな意味を持っている。
    過大なる期待を持った 母親が 
    鶴見俊輔を折檻をし続けて トラウマになるほどに。
    そのため 女性との付き合い方に 苦労したようだ。

    鶴見俊輔は 母親に 「悪い子」といい続けられて
    自分は 悪い子だと思って 生き続けた。
    そのことは 懐疑主義 という立場になる原因とした。

    伊藤俊輔の父親は 総理大臣であった伊藤博文の前の名前が 
    伊藤俊輔という名前だったので・・・
    その「俊輔」を 自分の子供 鶴見俊輔に付けた。 
    日本で1番になるように期待を込めた。
    父親は 1番病にとりつかれ 自らも 総理大臣になりたいと思っていた。
    鶴見俊輔は 自分の名前が重荷だった。その名前を返上したいと思った。
    彼は 自分で 名前を 「狸男」と呼ぶ。
    彼にとっては タヌキ が気楽らしい。
    今風に言えば 鶴見タヌキ俊輔という名前がいいだろう。

    生い立ちとは その後の人生にどれだけの影響を与えるのだろう?
    鶴見俊輔は言う 
    『私の生い立ちについて話しておきたいんだ。
     これは私の思想や行動の方法以前の方法につながるものなんだ。
     原点というか、制約といってもいい。』

  • 私は学生の頃全く本当に勉強をしなかったので、今の政治というものをよく理解しておらず、ちゃんと理解してニュースとかちゃんと見たいなあと漠然と思っていた。…でも仕事でもなんでもそうだけど、私は『話を途中から理解する』という頭の賢さを持っていないので、今の政治を理解するには戦後の様子から知らないと、きちんと理解できないのでは?と思い最近超スローペースで、自分が気になった戦後に関する本を読んでいる。この本もその中のひとつ。内容はというと、戦後世代で、団塊世代にあたる上野千鶴子氏(昭和23年生まれ、フェミニスト)、物心がついたときには高度成長の最中だった(ファミコンブームが20歳の頃)ベイタウン世代の小熊英二氏(昭和37年生まれ、歴史社会学者)の2人が聞き手となって、大正11年生まれで戦争を実体験している鶴見俊輔氏(哲学者)自身の戦中からの話を聞くというもの。鶴見氏を含め、3人共いわゆる『エリート』な人たちなので、戦中、戦後ともに政治家や学者、思想家などの『知識人』の思想や事件を中心に話は展開されていく。

    …ので、ハッキリ言ってついていけない話だらけ!とほ。でも最近ちょこちょこ本を読んでいるおかげか、この本自体が堅苦しい&難しい文面ではなかったせいか、ぼんやりと理解できたように思う。…でもぼんやりでも自分の中で「おおっ」と思う話やフレーズがたくさんあったので、すごくよかったし、これから勉強する上の知識としてもすごく参考になった。ちょっと賢くなったような気もするし(笑)。

    まずこの本でよく出てきた言葉が『一番病』。学校でも政治でも“一番を目標”をするため、自分のオリジナルの意見を持っていない、考えを0から組み立てられない人が、日本にはすごく多いということ。その上、世の中やまわりを見ながら自分が上手に立ち回る賢さを持っているから、意見がころころ変わり易い。そういう人が世の中を動かしていることが多く、それは戦前も戦中も戦後もあまり変わらないらしい。戦争がはじまる前は『戦争反対派』として戦っていた人が、戦争がはじまった途端『戦争大賛成!』とか言ってたりするし、戦後から今までのなかでも『左の人』があっさり『右の人』になってたりする。それは、無知ゆえに『その場に雰囲気』だけで流され、あまり深く考えないままコロコロと意見を変え易い私たち“世論、民意”も同じ仕組みだな、と思った。考えがあって、意見を変えることは悪くないけれど、個々の中身がからっぽで、それに無自覚な意見ほど罪なものはないのかもしれない、と思った。

    『朝鮮人』と『女性』に対する感覚。戦中からの鶴見氏の考えや行動はとても誠実というか実のある人ってカンジだけど、この『朝鮮人』と『女性』の感覚だけぽろり、と抜けているような印象。そこは聞き手の2人がいろいろツッコミを入れているけど、話が宙ぶらりんになるようなかんじ。鶴見氏はいろいろ正直に話をしていて、ある時期まで朝鮮人に対する自分の感覚が『差別』であると認めていて、これだけイロイロ視野広く物事を見たり判断できる人でも、『世代』というものはそういう感覚も染み付かせてしまうんだなあと思った。ある時期から著者を含め、朝鮮人への差別感覚が取り除かれてきているのだけれど、それを聞き手の小熊さんは“高度成長で日本が金を持つようになったので、差別で自尊心を支える必要がなくなった(金のない日本人がさらに金のない朝鮮人を馬鹿にして自尊心を支える)”と表現していて、ああ、差別の仕組みってそういうものなんだ、と改めて突き付けられたカンジで軽い衝撃だった。人の思考が出来上がる過程で、環境や家族や時代や経済状況がすごく関係しているし、そのなかで出来上がった感覚や思考は人に染み付いて、そこから離れるのはなかなか難しい。鶴見氏の女性に対する感覚も、誠実ではあるけれど、そういう『世代』の感覚での仕方なさ、みたいなものを感じたかも。

    鶴見氏の長い人生のなかで、表現や発言や思考で筋が通っていないところ、矛盾している感覚も正直に、曖昧なところは曖昧のままで、すごく誠実に答えていた。他にも『エリートの特権の自覚のなさの罪』とか、『ヤクザの仁義的感覚』や、『どんなジャンルや考えの人でも、筋の通った人、純粋な人を赦してしまう、申し訳く思う罪悪感からの感覚』などなど、新しい視点をいろいろもらった本になって、すごく嬉しい。図書館で借りたやつだけど、また自分で購入しようと思う。

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著者プロフィール

1922年東京生まれ。哲学者。15歳で渡米、ハーヴァード大学でプラグマティズムを学ぶ。アナキスト容疑で逮捕されたが、留置場で論文を書きあげ卒業。交換船で帰国、海外バタビア在勤部官府に軍属として勤務。戦後、渡辺慧、都留重人、丸山眞男、武谷三男、武田清子、鶴見和子と『思想の科学』を創刊。アメリカ哲学の紹介や大衆文化研究などのサークル活動を行う。京都大学、東京工業大学、同志社大学で教鞭をとる。60年安保改定に反対、市民グループ「声なき声の会」をつくる。六五年、ベ平連に参加。アメリカの脱走兵を支援する運動に加わる。70年、警官隊導入に反対して同志社大学教授を辞任。著書に『鶴見俊輔集』(全17巻、筑摩書房)『鶴見俊輔座談』(全10巻、晶文社)『鶴見俊輔書評集成』(全3巻、みすず書房)『戦後日本の大衆文化史』『戦後日本の精神史』(岩波書店)『アメノウズメ伝』(平凡社)ほか。

「2015年 『昭和を語る 鶴見俊輔座談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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