対話の回路―小熊英二対談集

著者 :
  • 新曜社
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本棚登録 : 89
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788509580

作品紹介・あらすじ

『「民主」と「愛国」』その他の著書で知られる著者が、文学者、歴史学者、民俗学者、社会学者などさまざまなジャンルの人びとと、国家・「日本」・アジア・歴史・民俗などをめぐって討論する。真摯でスリリングな対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!それぞれの対談もボリュームがあって読み応えがあったし、対談相手の人たちの本も気になった。でも学者さんたちって、かなり突っ込んだところでお互い批評しあうんだなぁ・・・そのあたりの緊張感も面白かった。そして小熊さん気になる!

  • ▼日本の“協調性”

    『シカトがいちばん高度ないじめだというのは、すごくよく分かりますね。一神教の伝統がなく、おまけに宗教があまり大きな意味をもっていない、現代の日本では、アイデンティティの確認が、他者から認めてもらうという形態で行われている。“誰も認めてくれなくても、神様が私を見ていて下さる”という回路が成立していないわけですから、“他人様”や“世間様”が“神様”にちかくなる。そうなると、“他人に認めてもらえない”ことは“神に見捨てられる”というにも等しい。』(小熊英二×村上龍:著 / 対話の回路 / P45)

    『日本の企業では、企業の創業者を神社に祭っていたり、朝礼時に神棚を社員に拝ませるところがある。インドの学生たちに、諸君が日本企業に入ったら、場合によってはこういう神社に参拝に行くことを命じられ、拒むと“協調性がない”などと非難されることもありうると言ったら、さすがに気持ちのよい顔はしていなかった(ちなみに、日本語の“協調性”を英語ではどう翻訳するか議論になったが、“同化 assimilation”が一番適切だという結論をインド側の人々は下した)』(小熊英二:著 / インド日記〜牛とコンピューターの国から〜 /P155)

    私は特定の宗教を信仰している人を否定する気は全くないけど、宗教って『自分がどう考え、どのように生き、何を拾って、何を捨て、何を禁じ、何を守るか』ってことではないかと思い、それはひとりひとりが悩んだり感じたりしながら、その都度考えていけば良いと思っていて、個々が自分宗教というか信念みたいのを一生かけて作っていけばよいのでは?と今のところ思っています。(←記事とズレたコメントだ…)あと、こうやってわざわざ『日本の協調性に関するワード』をひっぱってきてるのは、私が協調性のない人間だからでしょう…と自己分析。

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    ▼学問はだれのもの

    『(江戸時代→明治維新の身分制度の廃止と義務教育開始などは)身分の低い人たちにも、平等にチャンスを与えるという“理想”があったからなのだろうか。』(小熊英二:著 / 日本という国 /P24)

    『明治政府が身分制度を解消し、代わりに国民共通の義務教育を導入したのは、要するに国家の強化のためである。政府は、サムライだけに教育を与え、サムライだけを兵士にするという方針ではなく、国民教育を行って徴兵制を導入し、読み書きのできる兵員と労働力を大量に獲得することなしには、西洋による植民地化から逃れられないことをよく知っていた。』(小熊英二:著 / インド日記〜牛とコンピューターの国から〜 / P189)

    『まるで、自動車教習所で教わる“ボールの後には子供が飛び出す”といったマニュアルをそのまんま一般道路で実体験するように、社会学で習った通りの言葉のトリックのマニュアルに、人がいかに簡単にひっかかるかを実社会で体験し、冷や汗とともに感心したこともやびたびです。それはおもしろいくらいに、人は社会学どおりに言動する生き物でした』(遥洋子:著 / 東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ / P320)

    『一番上野さんのフェミニズムを貪るようにして学んだ人たりが、有閑専業主婦だったという悲しい現実です』『介護をやったり、パートをしたりして、ほとんど自分の時間がないような主婦にこそ、フェミニズムは手が届かなければならない。なのに、そういう人は(公民館でやる講演会などに)来ない。』『それはほんとに日本の女性政策のひずみそのまんまの表れです。』(上野千鶴子×小倉千加子:著 / ザ・フェミニズム / P82、154)

    『東大は学問の宝庫だ。そこで、いったい、どれほどの学問が“使われて”いるのだろうか?使われることなく、ただ生産されている学問があるのではないか?それとも誰かそれを使う権利を独占しているのだろうか?』『すくなくとも、それらの“知”が、一般に放出していないのはわかる。“知”の供給なしに“知”の需要もない。どちらが先かは分からないが、“知”がある特権的エリアに集中していることは確かなようだ。なぜ、こうなったのだろう?誰が何のためにしているのだろう?使用価値のある“知”の分配。その必要と責任をいったいどれほどの人がこの大学でわかっているのだろう』『知の分配を獲得できないまま、考える時間すら持てずに労働を余儀なくされるある層の人間を固定することで、得をしているのは誰か、と考えるとやっぱり、ここでも出てくるのが、支配・被支配の相関図だ』(遥洋子:著 / 東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ / P269、278)

    『個人が救済されれば一応満足してしまう現代の知識人(などと一般化されたら不満な人も多かろうが)と、社会運動を広げねばならないインドの知識人の違いが出るように感じた』(小熊英二:著 / インド日記〜牛とコンピューターの国から〜 / P150)

    『学者とか作家は会社に行ってないから、考える時間がりますよね。そういう人間がやるべきことって、やっぱりあると思うんです。忙しいから簡単な物語を求める人びとがいるのはしかたないとして、時間は与えられて考えることが仕事になっている人間は、人より丁寧に考えることで役割を果たしてゆくしかない』(小熊英二×村上龍:対談 / 対話の回路 / P60)

    『だいたい、歴史を“物語”としてとらえることは、自分の都合のよい事実しか認めず、もっとも怠慢な道だと思います。…学問は決して歴史家だけの専売特許ではないのですから。まだまだ無限といってよいほど未知の問題がたくさんあること、歴史の専門家には全然見えていない(一般人の視点や歴史や環境観でしか見えてこないこと)があることをはっきりさせれば、たくさんの人たちがそうした問題に関わりを持つきっかけになると思いますね。そういう探究の意欲が、社会全体にひろがって、多くの人々が参加するようになれば、あるいは夢のような話かもしれませんが、学問の質も根本的に変わると思います。そうした道以外に人類社会の壮年期を生き抜く知恵を生かす道はないと思うのです。』『なるほど。それは人類史的転換期において期待されることになりますか』『そうですね。それがほんとうに学問が“民衆のもの”になることでしょう。そしてそれは“学問”であって、“物語”などではありません。これは十分可能なことであり、学問の明るい未来がそこにあるだろうと考えています。実際、そうした動きは最近、現実に起こっていると思いますよ』(小熊英二×網野善彦:著 / 対話の回路 / P199)

    ああっ。せめて高校の時で出会っていたかった言葉の数々。…まあ、私の頭では大学無理だったと思うけど…。私たちが日々の生活でわからない!と悶々としてたり、色んな社会の矛盾にイライラしていることも、ちゃんと理由とか他の人の思惑があったりする。それを知るだけでも、世の中が全然違ってみえてくる。私の頭では、『すでに分かっている人』のおこぼれをもらうくらいしか出来ないけど、色んな言葉をもらってドキドキする興奮は確かなものだから、無理のない程度でこれからも“おすそわけ”してもらおうと思う。そして実社会でチャンスがあれば、『使って』みようと思う。デザイン、日常、会話、趣味、対人、全てにつながってくることだから。

  • さまざまな角度からの対談で楽しめた。印象に残ったのは網野さんとの対談。歴史学の内部で「日本」の取扱いについていろいろな立場があるらしいというのは、知っていたけれどずっと続いているんだなあと。あとはやはり、アカデミズム内と一般的な歴史認識のズレがますます気になる。ニュアンスが違うかもしれないけれど「国家のことをアンタに負ってくれと頼んだ覚えはないのになぜそこまで」と男性批評家に対して思ってしまうところがあるという上野さんの意見がおもしろかった。頭鍛えなきゃな。と思った。

  • ★よく練りこまれてるとは思うものの、ちと強引さも目立つ。対談というより一方的なインタビューや反駁になっちゃってるのもあるし。
     『単一民族神話〜』はけっこう良かったんだけど、ここに来て筆者の持つ些か粗い面が露呈してしまった感じ。刺激的で面白いとは思うものの、ひっかかる部分も多かった。

  • 網野善彦との対談が一番面白かった。

  • さすがもと編集者です。

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著者プロフィール

小熊英二(おぐま・えいじ)1962年生まれ。慶応義塾大学教授。専攻は歴史社会学。著作に『社会を変えるには』『1968』『平成史』など。

「2015年 『ゴーストタウンから死者は出ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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