フィールドワーク―書を持って街へ出よう (ワードマップ)

著者 :
  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788510302

作品紹介・あらすじ

フィールドワークの背景にある考え方から方法・技法・機動力を高める情報処理テクノロジーまで、その全体像を精選のキーワードで生き生きと解説。現場調査の質を高めるための手がかり・ヒントを満載。フィールドワークを目指す人が最初に読む定評ある入門書、全項目大幅増補・改訂。

感想・レビュー・書評

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  • 平易な言葉でフィールドワークの歴史からツールまで網羅的に記述されている。この技法に対する著者の深い愛情を感じる。取り組んでいる定量調査が技術力の勝負だとすると、フィールドワークは人間力の勝負だ。

  • 本書では、量的調査と理論検証型の実験VS質的調査(例えば庭や建築の形態や、住民の周辺環境に対する保全の意識etc数値になりづらいもの)と理論生成型のフィールドワークという従来の二者択一的な議論を乗り越えて、それぞれのメリット、デメリットを踏まえた研究計画、実践の必要性を説いている。
     特に参考になる点は、参与観察、サーベイ、実験等のそれぞれの研究のスタンスが持つ、強みと弱みを理解した上で、このような独自の研究方法論を持つ他分野の研究者が、協力しあう『トライアンギュレーション/マルチメソッド』の必要性を指摘している点である。
     このような視点は、文系、理系、実験系、フィールド系を問わず、決まった答えなどほとんどない実際の社会に出る準備と、卒論、修士論文にも取り組む必要がある多くの学生が読むべき内容と思われる。 
     また、内容的には筆者に比べてフィールド・ワーク側よりではあるが、『書を捨てて街にでよう』と学生を指導したロバート・パークの言葉もとても魅力的である。
     『君たちはこれまで・・・こんなことを言われてきただろう−「図書館へ行って本を漁って山のようなメモをとり、体全体に埃をつけてくるように」・・・たとえそれが、疲れはてた役人が作った面白くもなんともない質問表に何らかの補助が欲しい人がしぶしぶ答えたような記録の山だとしても」』『でも、もう1つどうしても必要なものがあるんだ。自分の目でみることだよ。・・・要するに、諸君、街に出ていって諸君のズボンの尻を「実際の」そして「本当の」調査で汚してみなさい。』

  • 大学院の先輩に薦められて読みました。比較教育学ゼミの文献購読でもたびたび取り上げられていて、とても気になっていた本です。実際、研究で現地調査(つまりフィールドワーク)に出ることも多くなると思うので、結構参考になりました。

    本書は、フィールドワークの理念や方法・技法についてまとめらている、ほど良い入門書です。「書を持って街へ出よう」というサブタイトルが素敵じゃないですか。フィールドワーカーは「よそ者」であることを稼業とする人であり、「プロの異人」であり、カルチャー・ショックの達人だそうな。中途半端に難しい立場の中で、研究者としての真価が問われますね。

    佐藤郁哉先生の他の著作(例えば「フィールドワークの技法:問いを育てる、仮説をきたえる」や「実践フィールドワーク入門:組織と経営について知るための」等)も読んでみたい今日このごろです。

  • 文化人類学者がよく利用する「フィールドワーク」という調査手法についての本。学術目的の調査を意識した内容だが、それ以外の領域でも役に立つ内容。自分にとって未知の領域をどのように理解していくか、量的調査と質的調査をどのように組み合わせていくか、課題発見から整理までの道筋の付け方などの技術を学び、内容を一段メタな視線で読み自分の専門分野に適用する材料として良質な本。

    プロダクト開発の現場では、ユーザーのニーズを理解してプロダクトを作り上げ進化させていくためにはユーザーを正確に理解することが重要。そのためにユーザーがどのように1日を過ごしているか、何を価値と捉えているか、アクションや問題の分類をどのようにしているか、様々な側面から理解し生き生きとしたユーザー像を自分の中に作る。それは文化人類学者が集団の特性を理解するアプローチととても似ている。対象にするのがプロダクトのターゲットなのか、民族・社会的集団であるか、調査の目的が経済活動か学術目的かの違いはあっても過程は似ている。

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 守本さんより紹介

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/62200

  • 361.9/Sa85
    【CBL実習Ⅱ/CBL Field EexerciseⅡ】

  • 「フィールドワーク初心者に読んでもらいたい!」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=094513

  • p92
    ここで注意しておかなければならないのは、フィールドワークすなわち理論の「生成」であり、サーベイすなわち理論の「検証」という単純な図式ではない、ということです

    p97 ■操作的定義の限界と「感受概念」 しかし、本当にそうでしょうか。たしかに、「誰にでも同じように測れる」ような手続きを使えば、言葉をめぐる不毛な議論を防ぐことはできるかもしれません。しかし、誰にでも測れるというのは、裏を返してみれば、誰にでも測れる程度のことでしかないのではないでしょうか

    p107 逆の意味で言えば、理論やデータの裏づけに乏しいものは、単なる「思いつき」や「当て推量」にしかすぎない。学生の卒論に出てくるいわゆる「仮説」には、この手のものが多い。
    →論文として仮説を提示するには、それなりのデータのサポートが必要

    p108 「問題を発見し明確な形に整理していくことは問題を解くこと以上に難しい」

    p110 フィールドワーカーの仕事は、何といっても「書く」ことです。


    p113 フィールドワークの一つの目標は、徐々に現地の生活になじんでいくことによって、その土地の社会生活の文脈を理解し、一つ一つの出来事や行為の意味を分厚い記述として書きとめていくことにある

    p126 一人のひとから人づてに広がっていく手法のことを、雪玉式サンプリングという

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著者プロフィール

同志社大学商学部教授,一橋大学名誉教授
東京大学文学部卒業,東北大学大学院文学研究科博士後期課程中退,米国シカゴ大学
Ph. D.(社会学).
専攻は組織社会学,社会調査方法論.
東北大学助手(文学部),茨城大学助教授(人文学部),一橋大学助教授・同教授(商学部)
(2000–01 年プリンストン大学客員研究員,2013年オックスフォード大学ニッサン現代日本
研究所客員研究員)2016年4月より現職.
主な著書にKamikaze Biker(University of Chicago Press, 1991),『現代演劇のフィールド
ワーク』(東京大学出版会,1999 日経・経済図書文化賞受賞,AICT 演劇評論賞),『本を
生み出す力』(共著,新曜社,2011),『組織エスノグラフィー』(共著,有斐閣,2011 経
営行動科学学会優秀研究賞),『社会調査の考え方[上][下]』(東京大学出版会,2015)など.

「2018年 『50年目の「大学解体」 20年後の大学再生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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