- Amazon.co.jp ・本 (804ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788510814
感想・レビュー・書評
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著者は、「社会学思想の出発点をなしたキイ概念」は、「近代性」ないし「近代化」であると述べています。そして、近代性のはじまりとその到達点を示す思想として、サン=シモンの「産業主義」、コントの「実証主義」、スペンサーの「自由主義」、ジンメルの「相互行為主義」、ウェーバーの「理解社会学」および「比較近代化」論、パーソンズの「行為と社会システム」論、シュッツの「現象学的社会学」、そしてルーマンの「社会」の思想がえらび出され、それぞれについての解説がおこなわれています。
本書は、社会学史の主要な理論家たちを通覧した本であり、社会学史の概説書として読むことも可能ですが、通り一遍の解説にとどまらず、たとえばジンメルの立場を「形式社会学」と規定する通俗的な解釈を否定して「相互行為主義」とみなすなど、著者自身によるそれぞれの理論にかんする研究成果が盛り込まれています。
社会学史の概説書には、近年刊行された大澤真幸の『社会学史』(2019年、講談社現代新書)がありますが、これは社会学史をたどりながら「社会学とはなにか」という問題に対する大澤自身の考えが展開されており、大澤社会学に関心のある読者にとっては興味深く読むことのできる内容ではあるものの、社会学史そのものに関心のある読者にとって適切な内容とはいいがたいところがあります。本書は、分量的にも内容的にもかなり敷居の高い本ではありますが、社会学史を学びたいという読者の期待に充分にこたえてくれる本だと感じました。
なお著者は、これまで刊行した著書のなかで、シュッツの現象学的社会学やルーマンのシステム論に対してやや批判的な立場を示していましたが、本書ではむしろパーソンズとのつながりのほうに重点を置いた解説がなされています。とりわけ、ルーマンの専門的研究者の著書に挑戦しては挫折するという経験をくり返してきた読者としては、ルーマンに対して冷淡な著者による解説は、おおまかな理解を得るために有益でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示