性格とはなんだったのか―心理学と日常概念

著者 :
  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788511880

作品紹介・あらすじ

「私の性格は……」「あいつは性格悪いから……」私たちは、日常的に「性格」ということばを用いて、自分や他者の行動を理解したり説明したりします。そして心理学は、性格テストまで作っていて、まさに性格研究の総本山と言えるでしょう。しかし意外にも、心理学では、「性格とはなにか」ということすらまったく明確でなく、はたして性格は個人の一貫した特性なのかについて、カンカンガクガクの論争が繰り広げられてきたのです。なぜ? その答えは本書を読んでのお楽しみですが、日常的な概念を研究することの問題について、一般の人にも研究者にも面白く読め、深く考えることのできる本です。著者は、帯広畜産大学教育センター教授。

感想・レビュー・書評

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  • 性格を近代学問のフレームワークの中で測定し分析してきた学史についての本です。

    自然科学的な考え方において、ある性格がある行動を引き起こす(強い)傾向があると仮定して、ある人がその性格を持ち合わせていれば、その行動を引き起こすことが期待されます。この本では、その性格を「性格概念」、その行動を「性格関連行動」と呼びます。

    本の中心的な話題は、性格の「通状況的一貫性」の評価にあります。すなわち、「あの人は〇〇な性格だ」「私は〇〇な性格だ」と記述するとき、そこでは素朴に文脈的な要素が捨象されます。実際には、性格概念を直接観察する手法が(今のところ)ないため、性格関連行動から性格概念を規定せざるを得ないこと、学問的に調査をする際にインタビューにしろ調査票調査にしろ被調査者は調査されていることを意識して行動してしまうためそれが調査結果に影響されてしまう(二人称的視点)こと(もちろん自問自答する一人称的視点も同じく意識が調査結果に影響する)など、術語の定義を厳密にしていくと、「一貫性論争」自体が擬似問題であり、結局は性格は属人的な特性と外的刺激の組み合わせであると考えるのが現代では主流の理解となっています。また、属人的な特性には、遺伝し変わらない部分もあれば人生の中で変わる部分もあります。

    とはいえ、こうした理解が心理学の中で進む一方、例えば就職時の性格適性検査は性格の(少なくとも職場内での)通状況的一貫性を仮定することを前提に成り立っていますし、より俗っぽいところでは、血液型性格診断のような類型論も受け入れられます。これは認知的フレームワークとして(ある程度の)通状況的一貫性のある性格を実運用的に見出されていることに起因すると考えられます。

    このような学史を踏まえ、これまで進められてきた量的研究(統計学的手法)はこれからも発展していくと思われる一方で、質的研究(ナラティブ(発話)の分析、ライフストーリー研究など)から性格を記述分析する意義を著者は指摘しています。質的研究は、「パーソナリティ研究に『個人』や『時間の流れ』を取り戻す方法」であると著者は述べており、「個人」と「性格」の関係の探求がこれから進んでいくものと思われます。

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