本を生みだす力

  • 新曜社
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788512214

作品紹介・あらすじ

市場規模という点では極小の出版産業から生み出された本が、時には社会を変革し、歴史を動かす原動力ともなってきました。本にははかり知れない可能性がありますが、ここ十数年、特に学術書をはじめとする「堅い本」は、深刻な出版不況にさらされています。この危機は、出版だけでなく学術コミュニケーション全体の危機ともつながっています。本書は、ハーベスト社、新曜社、有斐閣、東京大学出版会という、規模・形態を異にする4つの出版社の事例研究の成果です。学術書の刊行に関わる組織的意思決定の背景と編集プロセスの諸相を丹念に追いつつ、学術出版社が学術知についての品質管理をおこなう上で果たしてきた「ゲートキーパー」としての役割とは何か、そこで育まれる出版社、編集者の組織アイデンティティはどのようなものかを明らかにしました。電子本と「ファスト新書」の時代、学術的知の未来に関心のあるすべての読者・著者・出版者にお届けします。

感想・レビュー・書評

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  • 【目次】
    まえがき [i-iii]
    目次 [v-x]

    序章 学術コミュニケーションの危機 001
    一 「出版不況」の一〇年 001
    二 出版事業者の経営危機 003
    三 ベストセラーと書店の賑わい 005
    四 利益無き繁忙と「一輪車操業」 007
    五 出版不況と学術コミュニケーションの危機 009
    六 出版社における刊行意思決定をめぐる問題――ゲートキーパーとしての出版社 011
    七 本書の構成 013


    第I部 キーコンセプト――ゲートキーパー・複合ポートフォリオ戦略・組織アイデンティティ

    第1章 知のゲートキーパーとしての出版社 020
    一 文化産業と「ゲートキーパー」(キーコンセプト①) 020
    二 学術知のゲートキーパーとしての出版社 023
    三 組織的意思決定としての刊行企画の決定 026
    四 「複合ポートフォリオ戦略」(キーコンセプト②) 029
    五 「組織アイデンティティ」と二つの対立軸キーコンセプト③ 036
    【用語法についての付記】 042


    第II部 事例研究――三つのキーコンセプトを通して見る四社の事例

    第2章 ハーベスト社――新たなるポートフォリオ戦略へ 054
    はじめに 054
    一 ハーベスト社の歴史 056
    二 現代的変化の背後にあるもの 072
    三 小規模学術出版社に特有の事情 087

    第3章 新曜社――「一編集者一事業部」 101
    はじめに 101
    一 創業から経済的自立まで 102
    二 新曜社における刊行ラインナップの特徴 108
    三 新曜社における刊行意思決定プロセスの特徴――編集会議を無くした出版社 124
    四 刊行ラインナップと「人脈資産」 130
    五 新曜社が持つ組織アイデンティティと四つの「顔」 140

    第4章 有斐閣――組織アイデンティティの変容過程 150
    はじめに 150
    一 法律書中心のラインナップ 151
    二 分野拡大の功罪 154
    三 コア戦略への回帰 159
    四 テキスト革命の進行 164
    五 標準化された構造と過程 177
    六 強力なテキスト志向市場への敏感さ 182
    七 編集職の自律性 188
    八 組織アイデンティティの多元性・流動性・構築性 199

    第5章 東京大学出版会――自分探しの旅から「第三タイプの大学出版部」へ 203
    はじめに 203
    一 成長の歴史 205
    二 出版会と出版部のあいだ 208
    三 東大出版会の誕生 211
    四 組織アイデンティティをめぐる未知の冒険 216
    五 「理想と現実」――二つのタイプの大学出版 246
    六 内部補助型の大学出版部におけるゲートキーピング・プロセス 253


    第III部 概念構築――四社の事例を通して見る三つのキーコンセプト

    第6章 ゲートキーパーとしての編集者 275
    一 編集者という仕事 276
    二 編集者の専門技能とそのディレンマ 287
    三 「ゲートキーパー」としての編集者像再考 298
    四 編集者の動機をめぐる現代的危機 310

    第7章 複合ポートフォリオ戦略の創発性 319
    一 刊行目録と複合ポートフォリオ戦略 320
    二 刊行計画とタイトル・ミックス 323
    三 「包括型戦略」としての複合ポートフォリオ戦略 329
    四 複合ポートフォリオ戦略の創発性 341
    五 複合ポートフォリオ戦略と組織アイデンティティ 349
    【補論 複合ポートフォリオ戦略の創発性をめぐる技術的条件と制度的条件】 352

    第8章 組織アイデンティティのダイナミクス 359
    一 文化生産における聖と俗 360
    二 組織アイデンティティの多元性と流動性 362
    三 職人技をめぐって 365
    四 協働の仕方と成果 369
    五 学術出版組織の四つの顔 372
    六 四社の事例のプロフィール 384


    第IV部 制度分析――文化生産のエコロジーとその変貌

    第9章 ファスト新書の時代――学術出版をめぐる文化生産のエコロジー 400
    一 学術書の刊行と文化生産のエコロジー(生態系) 401
    二 教養新書ブームの概要 404
    三 ファスト新書誕生の背景 414
    四 学術出版をめぐる文化生産のエコロジー ――日本の場合 421
    五 「ピアレビュー」と学術出版をめぐる文化生産のエコロジー ――米国のケース 435
    六 ギルドの功罪 442

    第10章 学術界の集合的アイデンティティと複合ポートフォリオ戦略 453
    一 大学出版部のアイデンティティ・クライシス米国のケース 454
    二 RAE(研究評価作業)と学術界の集合的アイデンティティ――英国のケース 459
    三 「ニュー・パブリック・マネジメント」と学術界の自律性――日本の場合 462

    あとがき 473

    付録1 事例研究の方法 494
    付録2 全米大学出版部協会(AAUP)加盟出版部のプロフィール 484
    注 532
    文献 548
    事項索引 561
    人名索引 568

  • 資料ID:21100802
    請求記号:

  • あれ、これおもしろい。

    学術出版社のやり方やら編集者の仕事やら組織アイデンティティやら。アカデミックな世界の人は一読の価値あり。

  • 2011 7/4読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りて読んだ。
    学術出版においてどのような本を出版するかの選択、というゲートキーピング機能がどう働いているのか・・・という点を興味の中心に、日本の学術出版社4社を対象とするケーススタディをまとめて考察した本。
    学術出版といえば論文メイン、電子ジャーナル全盛の世界の話ばかり聞いていて、国内・図書メインの話をあまりフォローしていないので、その補完として手にとった。
    以下、面白かった点/興味のあった点のメモ

    ◯まえがき~序章「学術コミュニケーションの危機」
     ・学術書が専らなのが当然、という人社系に偏った視点は性格上仕方が無いか?
     ・出版不況、というSTMにはさほど関わってこない話(「学術の危機」と言われたらSerials Crisisのことかとか考えちゃうよね)が関連してくるのは新鮮

    ◯1章「知のゲートキーパーとしての出版社」
     ・製品ポートフォリオ/タイトルミックス:
      売れる教科書類と売れ行きは望めそうにないが出版に値する
      =象徴資本となる本のミックス(が、行われている?)

    ◯2章「ハーベスト社」・・・ひとり出版社
     ・p.94に学術書を1冊つくるのにかかるコストの内訳あり。面白い。

    ◯3章「新曜社」・・・中堅学術出版社
     ・教科書の位置づけ・・・
      ×金のなる木
      ◯学術的知を広めていく媒体

    ◯4章「有斐閣」・・・学術出版大手
     ・テキスト出版・・・「大学の先生に採用して貰える本しか売らない」

    ◯5章「東京大学出版会」・・・大学出版部
     ・米国とは異なる日本の大学出版状況(×助成 ◯内部補助)

    ◯6章「ゲートキーパーとしての編集者」
     ・ゲートキーパー・・・米国のイメージ?
      日本にはそのままではそぐわない
     ⇔・多様な編集者像
      ・スカウト/パトロン
      ・仲間/同志
      ・プロデューサー
      ⇒・これに狭義のゲートキーパーを足して「広義のゲートキーパー」的役割を成す

    ◯7章「複合ポートフォリオ戦略の創発性」
     ・全社的なポートフォリオはない?
      ・編集者を軸とするポートフォリオ
      ・著者を軸とするポートフォリオ

    ◯8章「組織アイデンティティのダイナミクス」
     ・飛ばした

    ◯9章「ファスト新書の時代」
     ・新書バブル⇔アカデミズム
     ・米国のモノグラフの多くは査読がある
      ⇔・日本はない
       ⇒・ここまでで見た日本の学術出版の特性の反映

    ◯10章「学術界の集合的アイデンティティと複合ポートフォリオ戦略」
     ・RAEなどの評価制度が出版活動に与える影響と日本への直輸入の危険性の指摘

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著者プロフィール

佐藤 郁哉
佐藤郁哉:一橋大学大学院商学研究科教授

「2015年 『社会調査の考え方 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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