岡崎京子論 少女マンガ・都市・メディア

著者 :
  • 新曜社
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本棚登録 : 56
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788513068

作品紹介・あらすじ

◆少女マンガに関する本格的批評書◆

少女マンガは現在では、日本の表象文化において重要な位置を占めています。本書はそのなかでも特異な位置を占め、『ヘルタースケルター』の映画化などで今なお注目を集める岡崎京子を取り上げ、彼女が何をめざし、どのような問題提起をしてきたのかを明らかにします。とりわけ一九八〇年代から九〇年代にかけての岡崎の作品群(『pink』『リバーズ・エッジ』から『ヘルター・スケルター』まで)が、高度消費社会によって生み出され、その社会に反応していく少女・女性像をどのように提示したのかを、郊外・団地、コンビニ、美容整形、性・身体などをキイワードに、背景となる時代状況の再検討とマンガ・テキストの丁寧な分析から照らし出します。著者は筑波大学研究員。

感想・レビュー・書評

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  • 読みながら1番感じたのは、誰でもそうだと思うけど、こんなにほっくり返してバラバラにしてぐしぐしとつつきたおして、果たしてこの人、岡崎京子のマンガ、楽しく読んだんだろうかな。だった。

    例えば124ページ。 作者の力不足でした、回想でないのに意見を書いてしまった、とかにはならないんだろうか。思考の癖とか。

    129ページもね、109ビルが描かれなくなったことを深々と解釈してるけど、単に自分の内面に集中しちゃって周りが見えないだけとか、そんなこと、ないのかな?


    なんて〜。しかもこの人、繰り返しと言い換えが多くて、すごく文章のリズムが悪いです。辛かったわ読みながら。ぶつぶつ。でもまあ、楽しみ方はそれぞれだから、ジャック・ザ・リッパーみたいに切り裂きたい!って御仁もいらっしゃろうし、あるいはバラバラに解体する楽しみ方もあるのかもしれない。うん、古いスマホを分解してキラキラお目々になってたFくんみたいに。


    だからあたしみたいな人が断じちゃ、イケナイのよね。それは烏滸がましいってもんだ。


    そうして思ったのは、そっかマンガを、目でなくココロでなく頭で読むこともできるんだな、あたしはどうかな。ここまで開かれちまったマンガなんて、最初のページに犯人の名前が書かれた推理小説以下だよな、それでも読めんのかなあたし、岡崎作品、だ。

    実際あたし、岡崎作品は一作も読んだことない。あまり好きではないタッチだったから。あと、消耗品としての悲惨な生活なんてみたくないもん。あたしがマンガに求めるものは、日常から数センチだけ、ふわっと浮かぶ推進力。ほんの数センチでいい。足を痛めずに着地するのが前提の。結果、爽快感が得られればいい。遠くに行くことも、逆にマンガに寄り添われたり入り込まれたいなんて、思っちゃいない。

    だからあたしとマンガは付かず離れずの距離感がよい。疲れたくなんかない。基本。笑えるもよい。圧倒的な世界観や造形力に、ジェラシーするんでも、よい。

    だからか。あたしがあまり、少女マンガに惹かれないのは!と、この本を読み終わって少し慰められたのはよかった。自分からはなはだ遠い、宇宙人みたいな感性のやつらはわっからーん。と、合わないからだと思っていたけど、本書の言うようにもしも少女マンガが「(若年)女性が女性のために女性の内面を表現する」メディアとして歴史的に形成され、「(若年)女性のために女性の内面が描かれる少女マンガ」として強化されてきたならば、その教育的な、あるいはワンウエイ的で選択の余地のない世界観にあたしが無意識で合わない、としたのはまあ、あたしらしいと言えなくはない。


    しかし、たいがいどんなメディアも当初は、発信者の才能が換金される現実性がない限りは世に出ることはなかった、すなわち限られた人にのみ許されていた特権であったはずだと思う。その時代の女性マンガは、作り手と読者とをハブアンドスポーク型に結合し、ゆえにあたかも個人に語られたかもように、繰り返しよまれ、テキスト(教本)として愛されたはずだ。幸せな時代だったのだろう。その後より敷居が低くなり、あるいは資本主義の下で皆が豊かになって、求める対象の広がったことで台頭してきた体験談本、さらには情報の受け手と送り手の境界がほどけてソーシャルというニューメディアによって個人が自由に情報を発信できるいま、完全に職業作家の特権は奪われ、作品のカリスマ的パワーが減じているのはもう、仕方ないことなんだろうね。

    そう考えると社会インフラの発展の功罪と言えるのかもしれないな〜なんて、まったく関係ない所に着地した読書ではあった。けれど、うん、勇気を出して、岡崎作品、あたってみてもいいかな。なんて、思ってもいるので、それはそれで良かったのではと思われ。ちゃんちゃん。

  • まんが

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