はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)

著者 :
  • 新曜社
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感想 : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788515628

作品紹介・あらすじ

はじめて沖縄に出会い沖縄病になって、勝手なイメージを沖縄に当てはめ、押しつけていた20代。本書はそんな著者の、やむにやまれぬ思考が出発点になって書かれた、切実な「沖縄論」です。この本には、初めて沖縄に行く人のための基本的な情報、その歴史や文化、そして観光名所の解説はありません。社会学者として沖縄をテーマにし、沖縄の人びとの話を聞き取りながらも、「ナイチャー」である自身が「沖縄」について語りうる言葉を探し続けて右往左往するのはなぜなのでしょうか。芥川賞・三島賞候補になった著者が描く、個人的かつ普遍的な、沖縄への終わることのない旅。著者による写真も多数収録。「よりみちパン!セ」新刊第一弾です!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから想像させられるガイド本、解説本のような内容ではない。若い頃から沖縄の魅力にはまり、現在は社会学者としても深く関わる著者による十篇のエッセイ。当地への個人的な思いやエピソード、凄惨な戦時中の話からタクシー運転手との何気ないやり取りまでを含めた聞き取り、沖縄の歴史への考察などが絡み合っている。約250Pのうち60Pほどは著者によるものらしい、観光的ではない現地の写真が掲載されている。このうち一部は、元沖縄県知事の大田昌秀さんと撮影したものなど、本文に沿った写真が添えられている。

    現在の沖縄社会の出発点には沖縄戦の経験があり、戦後から本土復帰までは景気が良かったこと、そして「戦後の沖縄の経済成長と社会変化は米軍がなくても成し遂げられた」とし、このことが沖縄の人々の「家族規範」「自治の感覚」「お上に頼らない生き方」と繋がるという考察が興味深かった。読書中は常に沖縄の多様性、「沖縄を語るとはどういうことか」を意識させられる。また、以下のような著者の沖縄への思いの一端を示す言葉も印象に残った。

    「私たちは沖縄を心から愛している。なぜかというと、それが日本の内部にあって日本とは異なる、内なる他者だからだ」
    「右だろうが左だろうが、ナイチャーはナイチャーなのだ」

  • 沖縄については学生の頃、社会科の教科書で勉強したつもりだった。琉球文化、戦争時のつらい過去、本土復帰、アメリカ軍基地問題。重要な用語を暗記して、知っているような気分のまま大人になってしまった。

    もちろん沖縄の歴史は、教科書のなかにあるわけではない。ウチナンチュ(沖縄で暮らしてきた人たち)が積み重ねてきた生活の記憶が、歴史になっている。すなわち、沖縄の歴史はウチナンチュの暮らしの歴史といえる。
    この本はナイチャー(内地、沖縄以外の都道府県のひと)である岸先生がウチナンチュの話を聞いたり、過去の出来事を調べて、そのときに何を思い、どう感じたか、ということがつづられたものだ。エッセイなのか、文化社会学の本なのかはよくわからない。そもそも区別なんて必要ないのかもしれない。
    知ったようなつもりでいて、まったく何もわかっていなかったということはとても多い。もっと色んなことを知りたい。

    私たち(ナイチャー)が沖縄を考えるときのことについて、とても印象的だった文章を引用する。

    ”私たちが沖縄をもてはやすとき、無意識に必ず私たちは日本をけなしている。沖縄を批判するとき、無意識に必ず日本を基準にしている。つまり私たちは誰も、沖縄のことなど語ってはいないのだ。私たちはひたすら、日本のことを、自分たちのことを語り続けているのである。沖縄は素晴らしい場所だ――日本に比べて。(P175から引用)”

    ひとつの対象について話したり、評価するときに別の何かと比較する方法はとても容易だ。話しやすくなるし、聞き手側もわかりやすい。
    ただ、沖縄と日本をナイチャーの立場から比較した場合、それが褒めている場合であれ、けなしている場合であれ、沖縄に対する差別意識のようなものが存在するのではないだろうか。

    現在も沖縄の基地問題は続いている。
    観光に頼っている産業面も新型コロナウイルスの影響で深刻なダメージを受けているはずだ。

    沖縄らしさ、を求めるナイチャーは沖縄のために何もできない。旅行でお金を使ってくることはできるが、基地を無くすことはできない。
    戦争で破壊され、アメリカ軍に占領され、日本に復帰して、沖縄は姿を変え続けている。建物は新しくなり、チェーン店も出店を続けている。
    ウチナンチュの生活も変わるが、彼らの毎日、日々の生活こそが沖縄の歴史なんだと思う。

  • 観光で沖縄を訪れた時、地元の方から「辺野古基地建設反対運動をやっているのは地元以外の人がほとんどで日当をもらってるんだ」などという話を聞いた。「日当をもらって基地反対運動に参加」というのはネトウヨのデマだと思っていた私は地元の人からそんな話を聞いたことに驚き、沖縄の人は本当はどう思っているんだろう、というのが気になり、この本を読んでみることにした。

    そしてこの本を読んでわかったことは…まあシンプルな話ではない、ということだ。

    私の疑問に関しては、著者は「教員や公務員や組合活動家が『日当』をもらって社会運動に参加する、というデマ」(p.224)と書いておられるから、それがデマであると確信しておられるようだ。
    ただ、「沖縄の指導層の人々の、左右の政治的対立を超えた結びつき」(p.209)の例が語られているように、政治的立場が違うからといって日常の生活のうえで対立しているわけでもないのだ。
    私が沖縄で話を聞いた方も、「日当をもらって反対運動をしている人と飲んで…」なんて話していて、「立場が違う人からも話を聞くんだよ」ということを言っていた。
    「戦争を否定した平和憲法のもとへ復帰するのだという期待が、基地をそのまま残した復帰という現実に裏切られ」(p.65)た沖縄。「 存在してはいけなかったものたちと長い間、沖縄の人々は共に生きてきた。」(p.89) そんななかで基地も必要なのだ、という声も生まれてくる…

    「腐れナイチャー」(p.217)という言葉がつらい。著者は「社会というものの本質は『交換できない』ということにある」のではないか、と言う(p.245)。他者の感じることを言葉で理解しても他者になることはできないのだ。沖縄と「日本」とはそういう関係なのでは…と。
    「沖縄」と「日本」の間には確かに壁はある気がする。うちなんちゅという言葉が象徴するように、沖縄人であることの矜持を感じる。沖縄の自然や音楽や食べ物。独特の味わいに惹かれるナイチャーの私が「辺野古の海を守りたい」と言ったとしても、それは必ずしも沖縄の人々の思いと一致しないのか…

    もやもやは残ったままだ…

  • 借りたもの。
    沖縄県外(ナイチャー)の著者が沖縄の魅力にハマり、社会学である著者がないちゃーに向けて等身大の沖縄を描写しようと試みた意欲作。これは果たして沖縄入門なのか?
    全体的にノスタルジー、哀愁に偏っている気がした。
    もちろん、明るい沖縄、今の沖縄が全てではないけれど…

    読んでいて沖縄の二面性を映し出していると言うより、どうしても越えられないないジレンマを感じさせる……
    それは著者がナイチャー(よそ者)であるという事が大きいのかもしれない。何度訪れても越えられない壁のような……

    「なんくるないさー」「沖縄あるある」な素朴で大らかな南国の島国、楽園感は無い。
    本からにじみ出る、沖縄という土地の、「翻弄され虐げられた」という思いに溢れている。
    本州への憧れと反発があることを明文化している。

    あまりにもディープで書ききれないので、箇条書き。
    ・沖縄の景気が良かったのはアメリカ統治下(50~60年代。米軍需要と復興需要と都市部への人口集中による開発。)
    ・「ほんとうの沖縄」「沖縄らしさ」とは何か?人々が貧しくとも助け合う“文化”らしい。沖縄独特のものはあるが、日本統治関連や先の大戦で失われた?(私見。そもそも琉球・沖縄は大衆文化も宮廷?文化も大して発達していなかったんじゃ…)

    戦争の時の話も取材している。紋切型な非戦闘員が巻き込まれた悲壮感ではなく、その中でもしたたかに生き抜いた人の視点が書かれているのは新鮮。
    …この辺を語りだすと、どうしても色々言いたくなってしまう訳だが。著者は基地に対して無くなった方が良いという姿勢の模様。

    米軍基地問題。基地反対運動。
    ならば米軍追い出した後は?多くの話で“自衛”について何も言及されていない。この本も然り。
    「先の大戦で本土襲撃の足止めにされた」というのなら、どう防衛すれば良かったのか公に議論されない。(沖縄限らず本州自体も然り)
    自衛手段を持っていないからこそ、島津藩に征服され、アメリカにも占領されたという事実に対して、ずっと被害者意識が根強いだけで何も議論していない。と穿った見方までしてしまう……
    そういう点では、私もまた腐れナイチャーのひとりに過ぎないのかもしれない……

    私自身、色々、本などにも目を通して思うこと……
    良くも悪くも、沖縄は沖縄の人たちの場所であり、誰も外に出ない、出さない体質だろう。地元愛、地元民の結束、自治感…文化的にも、信仰的にも…それが前述の“壁”でもあると思う。

  • 『はじめての沖縄』 問い直す「沖縄らしさ」 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
    https://ryukyushimpo.jp/news/entry-740369.html

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    「よりみちパン!セ」新刊第一弾です!
     はじめて沖縄に出会い沖縄病になって、勝手なイメージを沖縄に当てはめ、押しつけていた20代。本書はそんな著者の、やむにやまれぬ思考が出発点になって書かれた、切実な「沖縄論」です。この本には、初めて沖縄に行く人のための基本的な情報、その歴史や文化、そして観光名所の解説はありません。社会学者として沖縄をテーマにし、沖縄の人びとの話を聞き取りながらも、「ナイチャー」である自身が「沖縄」について語りうる言葉を探し続けて右往左往するのはなぜなのでしょうか。芥川賞・三島賞候補になった著者が描く、個人的かつ普遍的な、沖縄への終わることのない旅。著者による写真も多数収録。
    https://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1562-8.htm

  • 沖縄について継続的に研究する筆者が語る、自らの目線で見た時の沖縄。

    飛躍するようだが、本書で語られる主題は、沖縄ではない。

    『俺はこんな風に生きている。あなたが生きていることも認めたい。でも、なんでこんなにも分かり合うこと、ステレオタイプではなく語り合うことは難しいんだ!!』
    という魂の叫びを感じた。

    そういう矛盾する想いが、日本で最も分かりやすく色濃く示されるのが沖縄なんだと思う。

    本書で何かが解決することはないが、分かりやすく一刀両断してしまう、スピードアップした待てない現代に疑問を持つ方は、ほっとした気持ちなれるのでは、と感じた。

  • 学生時代から沖縄が大好きになり、沖縄病になって沖縄に通いつめ、社会学者になって沖縄を研究する岸さんが沖縄について思うところをつらつらと書き綴ったエッセイ。沖縄とはこういうものだとラベリングして決めつけず、断定せず、複雑な、ありのままの状況を丁寧に見て、沖縄を語らなければならないことが繰り返し書かれている。街中の風景を写した写真が、ふだんの沖縄を捉えていて、雰囲気が伝わってくる。ちゃんとした結論があるようで、なさそうで、なんとも言い切れない感じの著者の謙虚さがよかった。

  • 個人的にかなり面白かった「断片的なものの社会学」の作家・岸政彦さんの作品。

    マイノリティと呼ばれる存在に耳を傾け、押しつけがましくなく考えさせてくれる岸さん。

    どこから読んでもいいし、どこで読まなくなってもいい。
    憂いや儚さを含んだ岸さんの文章や写真は沖縄という土地と非常にマッチしていて、たいして知りもしない沖縄のことを無性に想像してしまう。

  • タイトル通り、期待通り。読み終わるのが惜しくてちびちび読んだ。生きることに勇気が湧き、人と出会うことが楽しみになる。

  • よりみちパン!セっぽくない本。中学生にはかなり難しいと思う。

    先日、初めて沖縄に行った。特に現地の人(いわゆる「ウチナンチュ」)と飲みながら話をしたのが非常に楽しかったのだが、その「楽しみ」は沖縄の表面的な部分だったのかなあ、と思わされた。まだまだ自分自身が沖縄の歴史についての理解が深くなかったので、この本を読んで考えさせられた。今度また沖縄に行った時は色々な場所に行き、多くの人と話をして、色々なことを感じて帰ってきたい。そしてやはり人も気候も温かな沖縄が好きだし、自分自身の物語の中の一つとして、沖縄を感じられるようななりたいと強く思った。

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著者プロフィール

岸 政彦(きし・まさひこ)
一九六七年生まれ。社会学者・作家。立命館大学教授。主な著作に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版、二〇一三年)、『街の人生』(勁草書房、二〇一四年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、二〇一五年、紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞)、『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、二〇一六年)、『ビニール傘』(新潮社、二〇一七年、第一五六回芥川賞候補、第三〇回三島賞候補)、『マンゴーと手榴弾──生活史の理論』(勁草書房、二〇一八年)、『図書室』(新潮社、二〇一九年、第三二回三島賞候補)、『地元を生きる──沖縄的共同性の社会学』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、二〇二〇年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、二〇二一年)、『リリアン』(新潮社、二〇二一年、第三四回三島賞候補)など。

「2021年 『東京の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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