- 本 ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788720152
作品紹介・あらすじ
二〇二二年四月の開店以来、早いもので三年という時間が経過した。毎日、決めた時間に店を開けて、夜が訪れると店を閉める。単純な日々の繰り返しのようでいて、実際はそうではなく、毎日何かが発生する。バタバタするときもしょっちゅうある。
店を開けたあとはお客さんを待つ。基本的にはただ待つ。考えれば出版社に勤務していたときも待つ仕事が多かった。著者から原稿を、カメラマンから写真を、外に撮影に行けば、雲に隠れた太陽がふたたび顔を出すまで待つこともあった。だからなのか、待つことは嫌いではない。
二十五年の会社員生活を経て開業した葉々社は、本屋と出版社を兼務している。本を売りながら、本を作ってもいる。ふたつの出版社に所属していた頃は、仕事が忙しすぎて、自分自身がどんな仕事に向いているのか、真剣に考えたことはなかったように思う。これまでずっと雑誌や書籍の編集に携わってきたのだが、営業の仕事にはいちども就いてこなかった。本屋の仕事を始めてみて、自分はもしかすると営業に向いていたのではないかと感じている。リアルな場所としての本屋、イベント出店、オンラインストアをはじめ、毎日いろんなお客さんとのやりとりがある。本の話を聞いたり、仕事上の悩みについて相談を受けたり、日々、さまざまな年代のお客さんの人生に少しだけ触れている。まだ、三年程度しか本屋の仕事をしていないけれど、五十歳にしてたどり着いたこの職業は、天職なのかもしれない。いまはそう思っている。それほどまでに本屋は楽しいし、やりがいもある。
本書は、私が葉々社を開業するまでと、開業してからの記録である。毎日、どんなことを考えながら本屋の仕事を継続してきたのか、また、目の前に立ちふさがる課題に対して、どう向き合ってきたのかについて、具体的な数字を示しつつ振り返っている。
本屋が好きな人、本がないと生きていけない人たちのことを想像しながら原稿を書いた。本書をきっかけにして、全国各地に小さな本屋がもっと増えていくことを願っている。
感想・レビュー・書評
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東京にある独立型書店 葉々社の誕生したきっかけや開店してからのことが記される。独立型書店の始めたいと思っている人におすすめで、私も少し興味がある。
この本にはお金事情(売上や費用、粗利)が詳細に書かれていて大変参考になる。参考になると同時に、本屋を生業とすることの大変さが分かる。実際に葉々社は最初の2年は赤字とのこと(個人経営の書店で黒字にするのは恐らくかなり大変)。本が薄利多売な商材ということを痛感する。
それでも私は独立型書店が好きで、自分の家の近くにあったら良いのにと思うし、自分で開けたらなんて素敵なんだろうと思う。
大きい書店も好きだけど、情報量の多さに疲れてしまう。小さなスペースに店主が選び抜いた作品が並ぶ独立型書店だとそんなことは起きない。そんな所が好きだ。 -
葉々社の店主の日々の仕事を綴ったエッセイ