ディスカウンティング (チェーンストアの新・政策シリーズ)

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  • 実務教育出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788906273

作品紹介・あらすじ

名目だけの廉価や劣質品の"激安"でない本当の安さを、常時提供するための対策を、チェーンストア経営システムとして詳細に解説し提案する"価格破壊"指導書。

感想・レビュー・書評

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  • ペガサスクラブのコンサルタント、渥美俊一氏の著書です。
    チェーンストアの新・政策シリーズです。

    ディスカウンティングというのは、アメリカのチェーンストア業界では、エブリデイ・セイム・ロー・プライス作戦のための技術やシステムのことです。
    それは、①日常の”暮らし”用品の領域で、②誰もが確実に安いと思える価格で、③毎日同じように売り続けるという意味です。

    気になったのは以下です。

    ・製造業も流通業も、国民の豊かで便利な消費生活を実現するために存在する。そのためには、まず売価の低いことが絶対条件である。
    ・チェーンストアが提供すべき商品の品質が”ハイクオリティ”であるべきだというのは、選ぶ立場、使う立場、食べる立場から実際の昏しに必要不可欠な性質を十分に持つということである。
    ・しかし、大手筋ほど、サプライヤーの意向のままに、作る立場からの高品質を使う側にとってもハイクオリティと錯覚しがちなのだ。つまり過剰品質と過大機能で、いわゆる日本の百貨店的商品を追いかけてしまっている。

    ・パーティカル・マーチャンダイジングの本質は、入手価格の1つずつを問題にすることだ。最後に材料段階から所有権をもつことだ。これは、それ以降の製品加工・運搬・保管の全段階に対して、みずから仕様書を作ることを意味している。

    ・決定的な政治変化は、輸入の拡大と関税率低下の進行だ。それは、製品と材料との調達範囲が地球規模に拡大することを意味している。世界の中で最も有利なところで商品を開発し、どんどん輸入できる時代、つまり、グローバル・マーチャンダイジング時代、「開発輸入」の時代がやってきたのだ。

    ・4つの差別化、他社とどれだけ差をつけられるかという差別化の徹底。①値入れ技術による差別化、②集荷体制づくりの差別化、③パーティカル・マチャンダイジング活動の差別化、④サプライ・システムづくりの差別化 である。

    ・この店を必需品ばかりを扱って、しかもむちゃくちゃに安いことが特徴と受け止めた。しかも急所はあらゆる客層、貴族階級から革命家、職人、主婦、そして僧侶や尼僧までもが共通に使う必需品、エブリディグッズを扱っていることだ。

    ・DS商品の開発、納品は一括で行われるわけではない。5~7回に分けて分納され、買取が行われることだ。商品のリスクは当然すべて、DSチェーン側の負担である。さらに、DSチェーンが開発指導した同様条件の製品を生産者側が、他社へ出荷する場合は、ライセンス料として5~10%のマージンを上乗せして、DSチェーンがとることになっている。

    ・日本のDH(ディスカウント・ハウス)の従業員一人当たり面積がいずれも狭い原因の一つは一店舗当たり面積が小さすぎることである。
    ・ワンフロア、1000坪を超えるとすくなくとも、4つの核売場が必要になる。
    ・日本のDHでは確かに、店に入ったらぱっと目に飛び込む重点的な大量陳列商品がある。しかしそれはもともと高価な、非必需品が大部分だ。それに必ず扱い商品の中のごく一部のみが安いだけで、生確にはオトリ商法というべきことが多い。

    ・新しくビジネスを展開したければ、まず既存店のスクラップである。この場合に大切なことは、リストラとは失敗の反省でないと理解することだ。それは過去を否定することではない。かつては、役に立ったが今は老朽化し、老廃物化しているものを取り除く、というだけの意味である。

    ・従来からの特価特売での以外な弱点は、作業量が急増することだ。人時生産性もさがってしまう。二つめに、特価品が売れれば売れるほど死に筋商品の在庫量も増える。したがって、さらに値下げ関連作業が必要となり、結果として費用がかかるうえに、さらに粗利益率も減ってしまう。特価特売をやめることで総人時数は二割も削減できるのだ。さらにチラシ代も減る。

    ・日本で、おかしな例がある。それはわが社の扱い商品の平均売価より、チラシに乗せられた商品の品金売価のほうが高いという。

    ・日本人には流通部分にたくさんの段階があると考えている人がいるが実は加工の最終段階と小売業・飲食業との間には普通は一段階、多くても三段階の卸売しかないのである。

    ・日本の場合、あまた必要な製品加工段階ごとに問屋、卸売業が介在するのは、これまではすべてが、見込生産体制だったからである。欧米ではチェーンストアによる受注生産だから中間の問屋・卸売業の介在は不要なのである。

    ・日本の現状での弊害は、生産者の発売当初の掛け値が多すぎることである。夏物の衣料は、6月ぐらいから値崩れを起こすことが特異現象となっている。最初に購入した客はあまりにもばからしいではないか。

    ・アメリカのチェーンストアのいう買取は、2週間ないし、4週間分づつの量を買い取るものものだ。

    ・日本では、良いものは高いが原則なので、着物も普段着がなくなって、高級品しか市場にのこっていない。

    ・日本では、製品は多目的、多用途であることだ。その結果製造コストが高くなる。

    ・マーチャンダイジングとは、ずばり「商品開発」のことだ。

    ・パーティカル・マーチャンダイジングの特徴は、①材料段階から所有権を発生させる ②製品加工の各段階は加工手数料を払うだけ、③全加工段階を1つのシステムとしてプロデュースする

    ・ベンダーが本当にこまるのは、多頻度少量配送や、無駄な梱包、店内作業の一部分担、度重なる特価品の提供、無条件返品の要求だ。

    ・ベンダーへの協力として、バイヤーにできることは、①配送コストの削減、トラックを満杯で走れるよう配慮すること、クーポン割引をゼロとすること、無駄な広告や販売費用を抑えること、こうした努力で、入手原価は、2~3割も低くなる

    ・ディスカウント製品は、製造原価の約3倍が売価であるが、日本の小売り業では通常の仕入れ品は、製造原価の約10倍になっている。

    目次は次の通りです。

    はじめに

    ”価格破壊”時代の意味するもの

    1 ”廉価”の現状分析
      1 安さのなくなった原因
      2 疾駆の時代
      3 環境の大変化
      4 競争的廉価時代の始まり
      5 ディスカウンティングの意味

    2 ディスカウンティングの小売業
      1 フォーマットの区分
      2 アメリカのディスカウント・ストアの発展
      3 ディスカウント・ストアの商品
      4 フォーマットの種類

    3 ディスカウント・ハウスからディスカウント・ストアへ
      1 ディスカウント・ハウスの限界
      2 パワー・センター
      3 NSCとCSCへの出店対策

    4 ディスカウンティングのための経営施策
      1 ディスカウンティングの軌跡
      2 ESLP
      3 グッド・バリューとベーシック・アイテム
      4 マス商品とは

    5 ディスカウンティングの商品施策
      1 マーチャンダイズ・ミックス
      2 商品構成グラフ
      3 コモディティ・グッズ
      4 カテゴリー・キラー

    6 製品開発(Ⅰ)
      1 暮らしの貧しさの発見
      2 パーティカル・マーチャンダイジング
      3 メーカーの原価

    7 製品開発(Ⅱ)
      1 自社ブランド開発
      2 ソーシング
      3 集荷システム

    8 ディスカウンティングの経営
      1 ローコスト・オペレーションの前提
      2 作業システム改革
      3 ニュー・フォーマットへ

    用語解説

    用語索引

  • 同僚が「間違えて2冊買ってしまったから1冊やる、読め」とくれた本。

    んな本読んでられっかよ、それでなくても渥美さんの本ムツカシーのによ、としばらく積んどいたんだが、いやいやながら手に取ってみると一気に引き込まれた。エキサイティングで、なまら勉強になった。

    マーケティングとマーケットが違うように、ディスカウンティングとは単なるディスカウント(値引き販売)のことではない。ディスカウンティングはいわば戦略的・能動的な安値実現であり、チャネルの再構築やヴァーティカルMDなどを目標とする企業戦略や事業システムの構築を伴った、利益の出る継続的な価格相場破壊を意味している。

    ベンダーに踊らされているだけのバイヤーや、目先の安さだけに心を奪われているマネージャー、21世紀に本当に伸びる業態へ考察が足りない経営者らの喉元に切っ先を突きつけるような迫力と説得力がある。

    チェーンストアの定義や各種フォーマットの説明も網羅されているし、大店法の改正(この本は1994年刊)や女性の社会進出がなにをもたらすかなど、単に小売りの“技術論”だけでなく透徹した社会観察ともなっている。

    論はチェーンストア先進国アメリカの視察を軸に進むのだが、アメリカ人と日本人の気質の違いについてどう考えるか、日本の客自体がディスカウント(日替り特売)を求めているのではないかなど、質問してみたいことがいろいろ出て来たが、著者は今年故人となってしまった。

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