紙葉の家

制作 : Mark Z. Danielewski  嶋田 洋一 
  • ソニーマガジンズ
3.76
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本棚登録 : 279
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (805ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789719681

作品紹介・あらすじ

この紙葉をめくる者、すべての希望を捨てよ。現代アメリカ文学の最先端にして最高峰。

感想・レビュー・書評

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  • こんなに本が怖いと思ったことはない。部屋の片隅に存在しているということだけで背筋に冷たいものが走る。
    ページの空白が怖くてめくれない。
    自ら行間にミッチリ言葉を押し込め、字が揺れないようにしながら前に進む。
    暗闇を僅かなヘッドライトの灯りを頼りに。
    なんのために執拗に註釈があるのか、何かの手がかりかもとのめり込むよいに食い入る。

    だけど、読み終えてしまうとふつっと感情が落ち着く。まるで暗闇の探検からリビングに這い出したように。

    数日のち、目があの本を探す。結局、暗闇の探検へと降りて行ってしまう。更に下へと。

  • 合ってるなら超ネタバレ。誰か確かめて!

    ********

    ある手紙を信じたせいでトラウマを捏造してしまった主人公ジョニー[1]が、ある怪文書を読んだせいでトラウマと手紙を疑い始める[2]。しかしトラウマをアイデンティティにしているので手紙を疑いたくないジョニーは、怪文書を肯定すれば手紙も肯定できそうだから[3]と、文書を必死で読み込んだり、文書を信じてるフリをしたり[4]、出版しようとしたり[5]、元ネタ探しの旅に出たり[6]するも失敗。そして最後にトラウマを否定する記憶を取り戻してトラウマ消滅、アイデンティティ崩壊、再構成、ハッピーエンド[7]。

    ********

    [1] 433頁、ジョニーは「私はあなたを殺そうとした」と書かれた母の手紙を信じてる。721頁に手紙の本文。

    [2] 363頁、まるで怪物のように書かれてる「そいつ」は「おれを呼びつづけ、子供みたいにおれを必要として、歳の割におれに頼りきってる」とあるけどこれは母の手紙の特徴だから「そいつ」は母の手紙。

    364頁、ザンパノの作品と関連する恐ろしい感覚がほのめかしているありえないこととは、母の手紙が「おれ」を作ったのではないか、母の手紙のせいで自分のものと思えない経歴(母親に殺されかけたという経歴)に乗っ取られ操られているのではないか、全てはでっち上げなんじゃないか……ということ。つまりジョニーはザンパノの作品を読んで母の告白→トラウマ→「おれ」がでっち上げなんじゃないかと疑い始めた。

    [3] 433頁、証拠はないけど傷があったからジョニーは手紙を信じた。596頁、証拠はないけど傷を負った男がいるんだからネイヴィッドソン記録は(ザンパノ作品世界では)本当だと言わんばかりのオチ。「傷があるから本当だ」という同じロジックを使っているので、手紙を信じたいなら記録は真実だというオチに納得できなければならないし、納得できないなら手紙を信じるのはおかしい。手紙を信じたいジョニーはザンパノ作品のあのゆるいオチを深読みして補完しようとする。さらに、同じロジックで、ザンパノの部屋にあった謎の傷跡からザンパノ作品自体を信じなければならなくなり、ジョニーはどんどんおかしくなっていく。

    [4] ジョニーは182頁で鍵をたくさん買うことを決心し、364頁で銃を買っている。ザンパノ作品に登場する怪物を恐れているように読めるが違う。363頁で怪物を閉めだしているようでいて怪物と同じ部屋に閉じこもっているとジョニーは自嘲しているが、そこで怪物扱いされてるのは母の手紙にすぎないのだから、ジョニーが恐れているのは本物の怪物ではない。ジョニーは辛い現実「手紙が疑わしい」から目を背けるために、辛い虚構「本物の怪物がいる」を信じたがっている。24頁「人はみんな自分を守るために話をこしらえてるんだ」ということ。

    [5] 序文のXX頁。ザンパノの遺書には「出版してもいいが読者を虜にできないならこの本はウソでありそれは君にとって喜びだ」と書いてある。24頁で出版を断られたり「老人の言葉を読みたがるのはお前だけ」と言われて凹んでるあたり、ジョニーは「読者を虜にできたら本当」とザンパノの示した救いの道とは逆に進もうとしている。そしてジョニーが本当に証明したいのは「おれ」なので自分のことも書いている。

    [6] 471頁。「現実の断片みたいなものでも見つけられればと思う」。まずジョニーはザンパノ作品の元ネタを探しにヴァージニア州へ。そして568頁でついに母の問題と向き合うことを決意。

    実家跡を訪れたジョニーは573頁で「怪物に殺されそうになったときの記憶」を思い出す。ただ、次の頁から始まる願望に満ちたウソ日記に「怪物を倒した」とか「怪物はいなかった」と書かずに「母のことはもう頭に浮かんでこない」と書いているあたり、ここでも母を怪物扱いしていただけだろう。つまりジョニーが思い出したのは「母親に殺されそうになったときの記憶」だが、これは直前の572頁「自分では思い出だと思ってるものが、実はあとから聞かされた話を覚えてるだけだってことさえあるかもしれない」の通り手紙の産物。

    [7] 585頁。ジョニーは真の記憶を取り戻す。手紙は愛ゆえのウソと確信。「母に殺されそうになった息子」から「母に愛されていた息子」へと生まれ変わる。辛い虚構「最悪のママが自殺した」から最も辛い現実「最愛のママが自殺した」を受け入れたジョニーは泣く。

    タイトルのHouse of Leaves。leaveの語源には愛を意味するleubhがある。つまりleaves(紙葉=例の手紙)は母のleubh(愛)から生まれたとか、leubhはloveの語源でもあるのでleaveされた(捨てられた)ジョニーが記憶をさかのぼり母のleubh(愛)に気づいてloveされていた(愛されていた)ジョニーに生まれ変わったとか、色々な読み方ができる。598頁、ザンパノ作品のラストの取ってつけたようなウンチク「passionとpatienceは語源が同じ」はここに繋がる。

  • 次第に拡大していく内側は何の暗喩なんでしょう。果てしなく広がる暗闇に怪物が生まれたのか、それとも怪物の存在が際限なく増殖する暗闇を生んだのか。内側の物語と外側の物語が平行して語られ、やがてメビウスの輪のように繋がり、いつまでも循環し続け、終わりは訪れない。

  • 奇書。かの有名な「ネイヴィッドソン記録」の話。知らない人は先に調べておいてもいいのかも。
    初めの100ページくらいまでよくわからなかったけれども、段々と加速していくホラー感が良かった。
    この値段はどうなの、と思ったけど訳の大変さを考えると仕方ないな……と。
    本当に自信のある人は買って、興味本位の人はまずは図書館で借りることをお勧めします。そもそも流通数が少ないし。

  • 怖いよ~。

    パラノイア的。ペダンティック。メタホラー・・・一言じゃあとても言い表せない。まさに「奇書」・・・なんだけど、やっぱり中心にあるのはホラーだよ。読んでいて、揺さぶられる感情は「怖さ」なんだよね。得体のしれないものに触れてしまった時の。抜け出せない迷宮に入りこんでしまったような読書体験そのものが、怖いです。現実と虚構の境目をどこに置いたらいいのか、眩惑させられてしまう。ブルブル。怖いよー。

    読んでいて思い出したのが、
    引き合いによく出されるけど、低予算B級ホラー映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、コンラッドの「闇の奥」、ミヒャエル・エンデ「鏡の中の鏡-迷宮」・・・かな。

  • 2週間かけてどうにか読み終えた。暗い廊下や巨大な穴を進む場面が真に迫って怖く、複雑に重層化されたストーリーも込み入った注釈も新鮮で、「これは久々にヒットかも」と味わいながら読んでいたけど、唸り声や壁土のサンプルやザンパノの家にあった爪痕など、多数の謎が蒔かれるだけで何ひとつ解明されないので、最後の方はだいぶ興味が醒めた。ジョニーの母の手紙の章は胸が痛むけど、作者の執拗さも強く感じる。ともかく全てが執拗な本。著者自身が誰よりも物語にのめり込んでいるように感じる。

  • 奇書というから、読みにくいことだけがウリかと思っていたが意外に内容があって驚いた。
    訳のせいか頭に入りにくいと感じたけれど、 やたら長い注釈がページのど真中を貫き、鏡文字になったり、空白や塗潰し、音符を読み、本を左右上下斜めに回しながら読むようになればもう何も気にならない。
    鏡を持ちながら読む楽しさで☆☆☆

  • 感想・・・これは難しいなぁ。まず、読んでいるとわかるが、『家』の文字だけが青くその異常さを際立たせている。中には、文字が斜めになっているページもあれば、文字が重なっているもの、1ページにビッシリ書かれているのもあればスカスカのページもある・・・とにかく異色な本でした。ストーリーはホラーで『家』が舞台。レイアウトが面白いので、読んでいて楽しめると思います。

  • 自分の心音しか聞こえない静寂の中で、真っ暗な深淵を覗きこみ続けるような体験をさせてくれる本。うーん面白かった。ちょっとばかりハリウッド映画っぽいけど。人の死に方とかまとめ方とか。

    特に面白いのは「家」の探索の章で、その迷宮感を奇妙な組版でも表現している。コンテンツの並べ方を工夫して読み手に物語を体験させるといえばあの『石蹴り遊び』があるわけだけれど、それをもっと強化して親切にしたような、本を読むというよりアトラクションにのっかる感じだった。うさんくさい脚注とジョニーの転落ストーリーを横目に見つつなので、大部ながら飽きることもなく一気に読みとおせた。

    自分にはザンパノやジョニーの恐怖が伝染してこなかったので、ホラーとして成功なのかどうかはよくわからない。けれど、「真っ暗な深淵」は「自分の中」のようでもあり、ラビュリントスにひそむ異形の自分に出会ってしまいそうな感覚はなかなかおつなものでした。

  • 同じページで全く違う話が3つ同時で進行していったり、文字が斜めや逆さまや鏡写しに書いてあったり、1ページに数文字しか書いてなかったり、膨大な量の注釈がすべて架空の本だったり。まさに奇書と呼ぶにふさわしい。

    内容は、

    家族でが引っ越してきた家が何かおかしい。最初は小さな違和感だったが、次々と奇妙なことが増えていく。長さを測ってみれば家の外周よりも内部のほうが長い。いつの間にか謎の隙間ができているし、コンパスは一定方向を指さないし、大きな空間はどこにもないはずなのに叫び声にエコーがかかる。
    夜が明けたら廊下や階段が増えている。その階段を下りると…

    といった感じ。

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